【絵本レビュー】 『ゆきのひのたんじょうび』
作者/絵:岩崎ちひろ
出版社:至光社
発行日:1973年6月
『ゆきのひのたんじょうび』のあらすじ:
雪の日生まれのちいちゃんが、お誕生日にほしかったのは…。しあわせって、ささやかな願いが叶うことなのね。
『ゆきのひのたんじょうび』を読んだ感想:
五歳になった途端、息子の感情表現が急に豊かになってきました。五つになるちいちゃんの目線で描かれたこの絵本と息子が重なって見えてくるのです。今まではお友達の誕生日に親が同伴していたのに、今年はコロナ禍ということもあり、参加は子供達だけ。プレゼントを掲げてお友達に近づいていく息子の背中を見ながら、私は主催者である親御さんたちにお礼を言ってその場を去ります。いやあ、頼もしくなったものです。
誕生日の失敗といえば、私がちいちゃんくらいの歳の頃でした。私は母と祖母の家に遊びに行っていたのですが、ちょうどその日いとこの誕生日がありました。おそらくそのために訪ねて行っていたのでしょう。どこからか母がプレゼントを出してきて、いとこに渡すように言いました。
さて私はそれを持って隣の部屋へ行くと、プレゼントの包みを破りました。その頃見た外国の何かの番組で、プレゼントの包みを開けてあげている風景がなぜか頭に残っていたのです。それがなんとなくかっこよかった印象があり、私も真似することに決めたのでした。
「はい、どうぞ」
包みから出したおもちゃを渡すと、一つ下のいとこは嬉しそうに受け取りましたが、
「なんで開けちゃうの!」
私は父と母から同時になじられてしまいました。
かっこいいことをしたと思った父と母二人に非難された私はびっくりするやら恥ずかしいやらで、急いでみんなのいる部屋から出て一人玄関で泣き始めました。少しすると母が来て隣に座りました。
「プレゼントってさ、開けるのが楽しみなんだよ。」
(でも、前に見た外国の番組では開けてあげてたのに。全然わかってない。)
泣きながらそう思っていると父が来ました。
「おい、〇〇に謝ってこい。」
私は外国の番組を見せてくれた父なら理解してくれていると思っていたので、さらにがっかりしました。父ならきっとよくやったと言ってくれると思っていたのです。
「テレビではそうやってたもん。」
そう言っても父は謝ってこいの一点張り。私は父にも理解されなかったことの方がショックでさらに泣きました。そして母に付き添われていとこに謝りに行ったのです。
まだ小さかったいとこは全然気にしていなかったし、伯父や伯母も大丈夫だからと言ってくれましたが、私にとってはもう何も楽しいことはないパーティーとなってしまい、そのあとのことは何も覚えていません。
去年、息子が友達の誕生日会に呼ばれた時、危うく息子もプレゼントを開けてしまいそうになりました。彼は「ぼくがあけてあげるの」と宣言したので未然に防げましたが、私は五歳の私自身を見ているような気がしていました。少なくとも頭ごなしに怒鳴らなかったことはまると自分を褒めつつ、誕生日の失敗ってみんなあるんだなと一人ニヤニヤしていたのでした。
『ゆきのひのたんじょうび』の作者紹介:
岩崎ちひろ
1918年12月15日生まれ。福井県出身。岡田三郎助、中谷泰、丸木俊に師事。 代表作に絵本「あめのひのおるすばん」(至光社)、「戦火のなかの子どもたち」(岩崎書店)、「おふろでちゃぷちゃぷ」(松谷みよ子 文 童心社)、「ことりのくるひ」(至光社) 挿絵の作品で「窓ぎわのトットちゃん」(黒柳徹子 著 講談社)などがある。 1950年 紙芝居「お母さんの話」(稲庭桂子 文 教育紙芝居研究所)で 文部大臣賞、1959年 紙芝居「お月さまいくつ」(稲庭桂子 文 童心社)で 厚生大臣賞、 1973年「ことりのくるひ」(至光社)でボローニャ国際児童図書展グラフィック賞を受賞。 1956年 小学館児童文化賞受賞。1974年逝去。
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