【絵本レビュー】 『王さまと九人のきょうだい』
作者:中国の民話
絵:赤羽末吉
訳:君島久子
出版社:岩波書展
発行日:1969年11月
『王さまと九人のきょうだい』のあらすじ:
子どものいないおじいさんとおばあさんの所に、ある日9人も赤んぼうが生まれました。このきょうだいが成長したとき、王さまが大難題をふっかけてきました。中国の少数民族のお話です。
『王さまと九人のきょうだい』を読んだ感想:
九つ子。。。考えただけで気絶しそうですが、それぞれがある特殊な能力を持っていて、兄弟で協力して色々とするのであまり手がかからないと言う設定ですけれどね。
兄弟のスーパーパワーよりも面白いなと思ったのは、王様の権力への固執ぶりです。ちからもちが助けてくれたのにハナから疑ってかかり、しかも大食らいだと決めつけて食事を用意、食べられなければ嘘つきとして牢屋にぶち込め、と考え方がねじれすぎですよね。王様の酷い仕打ちはどれもこれも「権力を失うかもしれない」という恐怖から来ているのですが、「かもしれない」だけでこんなに人を残酷にする恐怖感ってものすごいネガティブパワーですよね。
私は会社に勤めて権力争いをしたことはないのですが、敵対視されていたことはあります。高校生活が始まったある日、別のクラスの同級生の一人が冷たい目つきで私をみていることに気づきました。彼女は同じ競泳部で高校から入ってきた子でした。私は中学部から上がってきたので学校のことも先生たちのこともすでに知っていて、余裕があるように見えたのが気に食わなかったのかなと、勝手に想像していました。彼女は競泳部のマネージャーといつも一緒にいて、休み時間もいつも二人で行動していました。
ある日教室にいるとその子がマネージャーとやってきて、「あなたが〇〇? 」と突然聞いてきました。急だったのでびっくりしながらそうだと返事をすると、ニヤリと笑いながら「私、負けないからね」と言って行ってしまいました。
なんだったんだ?とは思ったものの、あまり真剣には捉えていなかったと思います。そして初めての中間テストがありました。
その高校では、全学年の中間と期末テストの平均点と順位が壁に張り出されていました。張り出されるとみんなが集まって自分の結果を見に行きました。まるで入学試験の発表日のようです。私も友達と見に行きました。
発表場所に着くと、例の彼女がもう来てチェックしていました。背後から近づく形になったのですが、ふと見ると彼女が指を当てているのは私の名前。なんでだろうと思っていると、
「平均○点だよ」
振り向いた彼女の顔は苦虫を噛み潰したよう。私はほぼ真後ろにいたので、思いっきり対面してしまいました。しかも去り際に、「○位だったよ」と聞いていないのに教えてくれました。
訳が分からず私は自分で確認しに行ったのですが、あんまり彼女が敵対視するので気になったんです。私は(指は当てずに)彼女の名前を探していました。普段他の人のテストの結果なんて気にしたことがなかったので、なんだか悪いことをしているような気がしました。私は乱視が強いので、細かい列を指を使わずに追っていくのはなかなか困難なのですが、見つけました。
彼女は私より平均点が十点弱少なかったです。別にそれを知ったからといって私の気持ちに変化はありませんでした。「勝った」と言う気にもなりませんでした。元々私には他の人と比較するという観念がなかったように思います。だから余計にその子の強い敵対心が理解できなかったんですね。
ただ、私があまりにも無反応だったので、高二の半ばくらいからはふつうに話しかけてくれるようになりました。結局私は彼女に何も聞かなかったし、彼女もそれ以降勉強や点数の話をすることもありませんでした。それで学校で異様なテンションは無くなったのですが、「人より良くなりたい」という基準の考え方に疑問を持つようになりました。誰かを超えたいという目標があることはいいモチベーションになるのでしょうが、それで焦点が「自己鍛錬」ではなく「相手を突き落とすこと」になってしまうと本末転倒のような気もするし、また、体内を巡るエネルギーも変わってくるように思います。毎日の生活がいかに相手を悪く見せることに、もしくはいかに自分ができないかに集中していたら、気分も晴れないのではないかなと思います。
波に飲まれてしまった王様は助かったのでしょうか。波を見た瞬間、王様は一体何を思ったのでしょうか。