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【絵本レビュー】 『こころのやさしいかいじゅうくん』

作者:マックス・ベルジュイス
訳:楠田枝里子
出版社:ほるぷ出版
発行日:1978年5月

『こころのやさしいかいじゅうくん』のあらすじ:

せかいのはての ちいさなくにに、ひとびとが なんのしんぱいもなく、へいわにくらしていました。ゆるりゆるりと ときはながれていきます。しずかなしずかな まいにちでした。本文より。そんな平和な国に、とつぜん火をはくかいじゅうが現れて大騒ぎになりますが・・・


『こころのやさしいかいじゅうくん』を読んだ感想:

「やさしいかいじゅうなのになんで人間は捕まえようとしたんだろうね」

そんな質問を子供からされました。ちょうど私も同じことを考えていたのでした。

「こころのやさしい」と表紙に書いてあるから私たちはかいじゅうはやさしいと知っているけれど、いきなり森から火を吹きながら出てきたかいじゅうを見て「やさしい」生き物と考える人はほぼいないでしょうね。

同時に考えさせられるのは、小さな子犬が道で急に知らない人に会って怯えて吠えても「あ〜ら、可愛らしい。怖がらせちゃったわね。」なんて言ってもらえるけれど、大きなかいじゅうが人を初めて見てびっくりして吠えたり火を吹いたりしたら、「助けてくれ〜」となりますね。そしてこの絵本のように軍隊や消防隊を送り込んでかいじゅうを捕まえようとするわけです。

第一印象ってとても重要です。この週末私たちは、友人一家を訪ねて南ドイツに行ってきました。泊りがけで行ったので、ゆっくりと話をする時間がありました。そこでそれぞれの夫婦の馴れ初め話をしていたのですが、話題になったのがお互いの第一印象でした。友人の旦那さんはいつも柔らかい笑みを浮かべているやさしい印象の人です。友人は彼のそんなところに最初に目が行き、惚れたのだと話してくれました。逆に私の旦那は私がいかにいつも不機嫌な顔をしていたかと話し出したのです。それに便乗して友人も、
「風の子さんが初めて私に笑いかけれくれたのは去年のクリスマス。知り合ってから三年してやっと笑ってくれた〜って感動したの。」

「えっ?」
私ってそんなに笑わないんでしょうか。ちょっとショックでした。

日本にいるときも「姐さん」とか「厳しい」と言われたことはあるけれど、「あまり笑わない」という印象を与えているとは思いませんでした。ただ私は人見知りが激しくて、知り合った相手の人を分析する時間が長いことは認識していました。でも三年なんてちょっと長すぎですよね。苦笑いしながら、こころの中で「ごめんなさい」と謝っていました。

「意地悪な人という印象は受けなかったけどね。」
と友人がフォローするように言ってくれたのが救いでしたけどね。

私たちは第一印象で相手を判断することが多いです。ちなみに私の旦那の第一印象は、いつも角に座ってふてくされている男の子、でした。「何がうまくいかないんだろう」と私は遠目で見ながら思ったものです。

大きくて火を吹いているかいじゅうを危険と認識したように、私たちも初めて会った相手を勝手な認識で決めているのかもしれません。かいじゅうを襲う前に一言声をかけていたら、かいじゅうが優しい生き物であることがわかったかもしれませんが、どうやら私たちは自分の本能を思っているより頼りにしているようです。でもその思い込みから一歩踏み出すことができたから私は週末に会った友人と友達になることができたし、旦那とも家族になることができたんですよね。

「これは危険なかいじゅう!」と決めつける前に、どんな人なのか表現できるチャンスを相手に与える余裕を持ちたいものです。



『こころのやさしいかいじゅうくん』の作者紹介:

マックス・ベルジュイス(Max Velthuijs)
1923年、オランダのハーグに生まれる。作品の多くは、世界各国で翻訳出版されている。また、オランダ金の石筆賞、アメリカン・グラフィック賞など数多くの賞に輝く。2004年、子どもの本のノーベル賞といわれる国際アンデルセン賞を受賞。「かえるくん」のシリーズ(清水奈緒子訳、セーラー出版)は、オランダで国民的人気を得ている。2005年死去。


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風の子
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