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【絵本レビュー】 『きょうはみんなでクマがりだ』

再話:マイケル・ローゼン
絵:ヘレン・オクセンバリー
訳:山口文生
出版社:評論社
発行日:1991年1月

『きょうはみんなでクマがりだ』のあらすじ:

今日は、朝から上天気。みんなでクマ狩りに出かけます。「ちっともこわくない」って言いながら、草原を抜けたり、川を渡ったり、沼地を通ったり…。さて、どうなるのかな?

『きょうはみんなでクマがりだ』を読んだ感想:

「クマがり」って、マタギですか?それにしては随分カジュアルな感じですけれど?

そんなことを思いながら読み始めた絵本ですが、日曜の午後の家族で散歩的な様子とは裏腹に、結構ハードな道のりを行く両親と子供たちなのです。

魚釣り以外にはクマだけでなく狩りというものをしたことはありませんが、幼稚園の時両親に連れられてイノシシ料理で有名な場所に行ったことがあります。私はどこかで足をくじいていて、片方の足首には湿布と包帯が巻かれていました。でももちろん移動は父の車でしたから問題はありませんでしたけどね。

その旅館は山の上にあり、私たちの車は高速道路を出るとどんどん人気のない山の方へと向かって行きました。とても方向音痴な父が運転しているので、なかなか目的地に着きません。今のようにカーナビはないので、地元の人に聞きながら探すという感じになりますが、なんせ人里離れたところで、あまり道ゆく人もいないのです。後ろで寝ていた母も起き上がってきました。「あっ、着いたのかな」と思うと、イライラしてトイレがさらに近くなった父が小用で止まっただけなのでした。母のイライラ度も増して、車内はだんだん緊張した雰囲気に。。。

突然車はUターンするようにして、山の中に入っていく道を登り始めました。そんなことも先ほどから何度もあったので、どうせまた山を一回りして戻ってくるんでしょうと、私はあまり期待していませんでした。ところが今度は車は山道をグングン進み、戻る様子はありません。急に視界が開けて、私たちは山のてっぺんの駐車場にいました。右手には日本風の建物、そして真ん中には小さな檻がありました。その檻をぐるりと回るようにして、父は車を木の下に止めようとしました。母は車を降りて後ろを確かめに行きました。父は車をバックさせて行きます。

突然、グッと後ろの木々が近づいたように見え、続いてズッと車の後部が下がった気がしました。車の外を見ると、母が叫んでいます。さっきまで後ろを見ていた父が今は前を向いてハンドルを握っています。

な、なんだ?と思っている間に、車はまたまっすぐになりました。どうやら私たちは危うく登ってきた山を一気に下り降りるところだったようです。車から降りると母がブツブツと父に文句を言っているのが聞こえました。

そんな両親をそよに、私が気になっていたのは駐車場の真ん中にある檻でした。近づいて見ると、中にはイノシシがいたのです。初めて見たイノシシに私は魅了されていました。絵本で見たブタにいっぱい毛が生えたみたいです。でもこんなに何にもない駐車場の真ん中にいるのは、ちょっとかわいそうだなとも思いました。

ここはイノシシで有名な旅館。ということは、私たちが夜に食べたのはイノシシ料理だったのです。味は全く覚えていないけれど、食べたのがイノシシだったと知った帰り道、私はあの檻を覗くことができませんでした。

私の期せぬイノシシ狩り。後にも先にもこの時が最後となりました。


『きょうはみんなでクマがりだ』の作者紹介:


マイケル・ローゼン(Michael Rosen)
1946年、イギリスのハーロウに生まれる。オックスフォード大学卒業後、ラジオやテレビの仕事に携わり、フリーライター、教師、ジャーナリスト、パフォーマーとしても活躍。ドイツ児童図書賞や、イギリスで児童図書に多大な貢献をした人物などに贈られる、エリナー・ファージョン賞など多くの賞を受賞。日本で紹介されている本に『きょうはみんなでクマがりだ』(以上評論社)、『モリーのすてきなひ』(フレーベル館)、『悲しい本』(あかね書房)、『ペットのきんぎょが おならをしたら……?』(徳間書店)などがある。


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風の子
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