【絵本レビュー】 『はなのすきなうし』
作者:マンロー・リーフ
絵:ロバート・ローソン
訳:光吉夏弥
出版社:岩波書店
発行日:1954年12月
『はなのすきなうし』のあらすじ:
むかしスペインの国に、花のすきなフェルジナンドという子牛がいました。ある日、見知らぬ男がやってきて、闘牛場へ連れていきました。
『はなのすきなうし』を読んだ感想:
私はスペインに5年ほど住んでいましたが、結局闘牛を見ずじまいでした。行く前は見てみたいと思いましたが、行ってみて現地で話を聞いてみると、なんだか牛が可哀想に思えて、見る気が無くなってしまいました。
身体が大きい雄牛だから喧嘩好きとは限りませんよね。静かに木陰で考え事をしたり、花の匂いを嗅いだりしている方がいい牛だっているはずです。
作者のリーフは「フェルジナンドが花の匂いをかいで闘わないのは、よい趣味を持ち、またすぐれた個性に恵まれていたからだ」(本書解説より)と言ったそうです。
うちの旦那は背丈が2m近くで100kg超の大熊です。そんな彼がある時言ったんです、
「でかくてヒゲもじゃってだけで、僕が部屋に入るとみんな萎縮するのが感じられるんだ。小さくで華奢な人がブチ切れて怒鳴ってもみんな「あ〜、そんなに怒らないで」なんて言ってなだめるのに、僕が機嫌が悪いとみんな本気で怯えるんだ。身体がでかいと機嫌が悪くなることすら許されないのかな」
旦那は大のスイーツ好き、しかも繊細に仕上げられたケーキが大好きなんです。しかも常に部屋に花を飾っておきたいくらいの花好きです。一方私が好きな花はサボテン。彼にはなんでそんなものが好きなのかさっぱり理解できません。「美しくない」んだそうです。
体格や容姿は選べるものではないです。大きいから強いとか華奢だから繊細とは、勝手に私たちが決めていることですよね。彼は子供の時から大きくて、お父さんに空手、ラグビー、サッカーやテニスなどをさせられたのですが、どれも好きではなかったんだそうです。他の人と競り合っているよりも、ギターや絵を習ったりしたかったらしいのですが、「そんなものは男のするものじゃない」と相手にしてもらえなかったんだとか。
なんだか旦那がますます「はなのすきなうし」、フェルジナンドに見えてきてしまいました。先日の母の日に何が欲しいと聞かれたので、「花」と答えたらちょっとびっくりしていましたが(多分初めてです)、いつもはとても腰が重いのに、スクッと立ち上がっていそいそと出かけて行きました。帰ってきたらそれはまあいい感じの組み合わせの花束を持って来て、「店にあった一番ヘンテコな花を選んで来た!」と鼻の穴を牛のように膨らませながら得意そうに言いました。はい、悔しいことに私は変な趣味の花が大好きです。でも、とっても嬉しそうだったので、次の機会にもお花をお願いしようかと思っています。
『はなのすきなうし』の作者紹介:
マンロー・リーフ (Munro Leaf)
1905‐1976。アメリカに生まれる。ワシントン郊外で少年時代を過ごす。ハーヴァード大学で英文学を学び、教員生活を経て、出版社の編集者になる。編集者として子どもの本の挿絵画家に注文をつけていたところ、その絵がおもしろいと言われたことから、自らの挿絵で本を書き始める。1934年『文法おたのしみ』を手始めに、楽しい挿絵で「おたのしみ」シリーズを次々に発表。1936年に発表した『はなのすきなうし』で好評を博し、同書はアメリカの絵本の古典のひとつとなった。