【絵本レビュー】 『ぼくのたからものどこですか』
作者:角野栄子
絵:垂石眞子
出版社:福音館書店
発行日:2010年12月
『ぼくのたからものどこですか』のあらすじ:
ノブくんは幼稚園から帰ってくると、留守番を頼まれました。ノブくんがふくれていると、お母さんはいいものを隠しておくから、宝さがしして待っていてといいます。しっぽがついているという、その宝物を探して、押し入れの布団の間、本棚の本の間、タンスの引き出しなどから、はみだしているものを引っ張ると、ネズミやペンギン、ウサギ、ブタなどが次々と現れますが……。
『ぼくのたからものどこですか』を読んだ感想:
私は小学生の頃からよく一人で留守番をしていました。母は外で仕事をしていたし、父は家にいたけれど仕事やら用事やらでちょこちょこ出かけ、学校が休みの時期には一、二時間一人でいることは日常的にありました。
私が子供の頃はまだ呑気なもので、東京とは言っても家の鍵がかけてなかったりする事も割と普通でした。最初の頃こそ父に、
「外へ行くんじゃないぞ」
と何度も念押しされ私は家に一人でいたのですが、近所の様子にも慣れてくると家の横手の路地か道を挟んだ目の前の路地へなら行ってもいいということになりました。もちろんその間玄関は開けっ放しです。途中で家に戻りたくなるかもしれないからです。
そんなふうにたいてい外で遊んでいたので、留守番の間に宝探しをすることはありませんでした。その上私の父は昭和前期生まれで古いタイプの人だったので、宝探しをしようなどという考えは微塵もなかったと思います。
その代わり、小学校も中学年になると、算数や国語のドリルを渡されました。
「パパが帰ってくるまでに各十ページずつやっておけ。」
小さな私は父が怖かったので、真面目にやりました。途中こっそり部屋に入れた猫と遊んだり、昼寝をしたりしながらではありましたけれど。でも私は昼間の留守番が好きでした。一人でのんびりできたし、想像の世界に入り浸れば、私はどこへでも行くことができました。家は洞窟にもヨーロッパのレンガ作りのアパートにもなりました。猫を抱いて廊下の反対側の暗いトンネルを覗き見ることだってしました。日当たりのいい玄関の上り口で、猫と一緒に絨毯の上で寝そべる事もありました。私の想像の中で、私は何にだってなれるのがとても楽しかったのです。
どうやらその空想癖はうちの五歳児にもしっかり遺伝しているようで、独り宇宙の旅やアフリカの旅を楽しんでいるようです。時々返事をすると、
「ママとはなしてるんじゃないよ!」
と怒られてしまうのですが、なんだか取り残されてしまったような気がして寂しくもあります。私も連れて行ってほしいなあ。
まだ一人で留守番をする年齢ではありませんが、いずれお願いするようになったら、宝探しを使ってみようと思います。
『ぼくのたからものどこですか』の作者紹介:
角野栄子
1932年、東京生まれ。武井武雄氏に師事。1970年、「いやだいやだの絵本」でサンケイ児童文学賞受賞。児童出版美術家連盟会員。「あーん あんの絵本<全4冊>」(福音館書店)、「おおきくなりたい<全4冊>」(偕成社)、「ばけものつかい」(童心社)、「おばけのてんぷら」(ポプラ社)などの作品がある。ほかに紙芝居、装丁、さしえなど幅広い分野で活躍中。