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【絵本レビュー】 『おなかのかわ』

再話:瀬田貞二
絵:村山知義
出版社:福音館書店
発行日:1977年4月

『おなかのかわ』のあらすじ:


ネコはオウムの用意したごちそうだけでは足らず、オウムを丸飲みにします。それからおばあさん、ロバ、王様一行を次々に丸飲みにして、最後にカニを飲み込んだところ……。

『おなかのかわ』を読んだ感想:

妨害するものは何もかも食べてしまうねこ。ぞうまで食べたのに、食べたもの全てが胃の中でどうしたらいいかわからずめげてるって、物理的にありえないですよね、と思うのは大人の荒んだ心のせいでしょうか。

私は猫が好きなので、猫が悪者にされている絵本を見るとちょっと悲しくなります。実家の近所でも猫好きな人と嫌いな人がしっかり分かれていて、嫌いな人がいるのは理解できるけど、それでも少し残念だなと思うのです。

まだ大学生で実家にいた頃、今でこそ駐車場になってしまったけれど、うちには庭がありました。日当たりも良く、植木がいっぱいあって程よい日陰もあったので、いつしかある黒猫がやって来るようになりました。私たちは餌もあげなかったのに、その猫はほぼ毎日やってきて窓越しに私を見るんです。でも父はいつかれたり、ご飯をねだられると困ると思ったのか、その猫を見ると追い払いました。それでも来るので、父がいないときは少し撫でてあげると、しばらくいてから去っていくのが常でした。

ある日部屋にいると、外から帰って来た母親が呼ぶんです。
「クロが来てるよ。早く来て!」
降りていくと母親が心配そうに言いました。
「怪我してるみたい。おでこが濡れてる。でも座ったままで動かないの」

庭に出るといつもの黒猫がきちんと座っていました。私を見ると「にゃあ」と静かに鳴き、私をじっと見つめているんです。よく見ると額が濡れていて、どうやら血が出ているようです。私は家の中から割り箸にコットンを巻いたものと、消毒液と赤チンを持って猫に近づきました。

「引っ掻かれるかも」と思いながらも、「しみるかもしれないよ」ととりあえず猫に説明してみました。猫は動きません。消毒液を含ませたコットンで傷口を拭きました。猫はされるがままです。血を拭き取ってから今度は赤チンをつけました。他の猫と喧嘩したのかなとか、誰かに石を投げられたのかなと考えながらできる手当てをしました。黒猫は最後までじっとしていて、終わると立ち上がって何処かへ行ってしまいました。あの猫は一体どうして私のところに来たんだろう、と今でも思い出すことがあります。


『おなかのかわ』の作者紹介:

瀬田貞二
1916年、東京・本郷に生まれる。東京帝国大学で国文学を専攻。戦後、「児童百科辞典」(平凡社)の企画編集者をふりだしに、児童文学の評論、創作、翻訳などにいくつもの大きな仕事をのこした。絵本の代表作に『きょうはなんのひ?』(福音館書店)があげられる。ライフワークのひとつに「落穂ひろい 日本の子どもの文化をめぐる人びと」(福音館書店)がある。1979年逝去。


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