無人の美術室でポーズする
朋美は、一人で誰もいない放課後の美術室に入る。
美術室は校舎の端にあり、美術部の活動がない日の放課後は、ここに来る者はいないはずだ。無人の美術室で油絵の具の匂いを感じながら、朋美は出入り口の扉をそっと閉め、美術準備室に向かう。
手提げから美術部で使う白衣を取り出す。絵の具のシミが点在する膝丈の白衣だ。白衣を棚に置いた後、朋美は制服のブレザーを脱ぎ、リボンを外し、ブラウスとスカートも脱いだ。下着とソックスも取って裸になる。裸のうえから白衣を羽織る。
準備室を出て、美術室の反対側、黒板のある側に歩み寄る。そして、黒板に一番近い机の上に立つ。
壁の時計に目をやり、秒針が十二時を指した瞬間、白衣を脱ぎ去る。そのまま片手を腰に当てたポーズを取り、十分間、そのまま立ち続ける。
十分が経過する。朋美は白衣を身につけ、机から降りて準備室に戻る。白衣を脱ぎ、制服に着替える。
準備室を出て扉を閉め、美術室を後にする。上履きから外履きに履き替え、校舎を出る。一度だけ振り返り、美術室のある階を見上げる。