深夜、家の外で全裸を晒す
親や妹が寝静まった深夜、キッチンの扉からそっと外に出る。秋の夜は肌寒いが、麻衣子は上下とも中学のジャージに裸足、サンダル履きだ。
隣の家との境にあるブロック塀に沿って、狭い通路を家の裏の方に進むと、少しだけ広い空間がある。エアコンの室外機などが置いてあるところで、外の道からもお隣からも見えにくい。しかもこの時間だ。
もってきたビニール袋から、ロープとガムテープを出して室外機の上に並べる。周囲をよく見て、少し考えて、ジャージの上下を脱ぐ。下着はつけていないから全裸だ。
ガムテープを千切って口元に貼り付け、綿ロープで揃えた両足の膝を縛る。あらかじめ輪にしてあるロープに上半身を潜らせて両腕を締め付け、後ろに回した手首をロープと背中の隙間に押し込む。そのまま家の壁に体重を預けるようにして立つ。
捕らえられて裸にされ、縛られている自分を、麻衣子は演じ始める。わたしを誘拐した男たちはどこかに行ってしまった。誰か助けて!声を出せない麻衣子は身を捩る。意識的に呼吸を荒くして、夜の空気に肌を晒す。
遠くにオートバイの音がして、こちらに近づいてくる。どんどん音が大きくなる。誰かが近づいてくる。心臓の鼓動が大きくなる。耳に意識を集中する。麻衣子の家の前の道を来るようだ。この場にしゃがんでしまいたくなるのを耐えて、ロープを纏ったまま立ち続ける。麻衣子にとって想定外の興奮する状況だ。
オートバイが通過して、徐々に静寂が戻って来る。麻衣子は息を整え、周囲を確認する。月が出ていて空は意外に明るい。目を閉じる。深夜の空気の微妙な動きを肌で感じる。
男たちが戻ってくるところを想像する。いやらしい目で麻衣子の裸身を見る。汚い手で麻衣子に触る。髪を引っ張る。悲鳴はガムテープで封じられる。
膝の力が抜けて、麻衣子はしゃがみ込む。終わりにしよう。縄から抜けて、口のガムテープを剥がす。膝を縛ったロープも解く。ジャージを着て、ロープとガムテープを入れた袋を持ち、家に戻る。わたし、何をしているんだろう。このままいやらしい変な大人になってしまうのか。それとも大人になれば何か答えが出るのか。もやもやを抱えたまま、麻衣子はキッチンのドアを開いて中に戻る。
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