【031】日光いろは坂でヒヤリ 判断ミスで電欠カウントダウン
急勾配と急カーブで知られる日光いろは坂を走り始めてから「あっ!」。失敗に気づいた。道路が一方通行になっている、ということは……も、戻れない。
先日訪れた栃木県日光市。日光東照宮のそばで一件取材を終えて、さらに標高の高い中禅寺湖方面へ向かうつもりだった。「ホンダe」は充電量20%台で、そろそろ充電タイム。検索してみると約20キロ先の華厳の滝の駐車場に急速充電器があるようだ。逆方向の東武日光駅方面が最寄りの充電器だったが、同じ道を戻るのは気が進まない。あと、どうせなら華厳の滝とか見てみたい。
平地なら楽々走れる電池残量。電費が悪化する上り坂ルートなのは気になったが、なに、届かなそうならUターンすればいい。下り坂なら充電されるのがEVの良さだし。と、川沿いの道を上り始める。
いま思い返せば、明らかな判断ミス。目的地への焦り、次善策があるという思い込み、経験による過信。都合の悪い情報を無視してしまう「正常性バイアス」に陥っていた。
いろは坂は、上りと下りが別の道。Uターンなんて無理な相談だと気づいたとき、充電量は15%で「充電残量低下」の警告灯が点灯。登り切るしかないが、まだ先は長い。止まってしまえばレスキューを呼ぶしかない。
充電器までの残り距離と、車があとどれぐらい走れるかを示す航続可能距離が表示される。残り10キロで航続25キロだったのが、8キロで18キロ、6キロで12キロ…。航続可能距離の減りが早すぎる。電欠への無情なカウントダウン。
景色を楽しむ余裕もない。できるだけスピードを落としてドライブ。そのうちに「出力が制限されます」という、一度も見たことのない表示が。車自身が電欠の危機を察知したらしい。制限でもなんでもしていいから、お願い頑張って。パワーダウンした実感がなかったのは、ノロノロ走っていたからだろう。
なんとか華厳の滝の駐車場に滑り込んだときには、残量3%。もし、ここの充電器が故障などで使えなかったら、窮地に陥っていたはず。充電は早めに、が鉄則ですね。
(夕刊フジ/2022.4.7)