【011】旧車をEV化 滑るような走りが魅力
OZ MOTORS代表・古川治さんインタビュー
2021年度のグッドデザイン賞(日本デザイン振興会主催)が発表され、横浜市のガレージビルダー、オズモーターズが作る「コンバートEV」が金賞を受賞した。ビンテージカーを往年のデザインのまま電気自動車(EV)にカスタムし、環境負荷を低減したエコカーとして乗り続けられるようにする。同社代表の古川治さんは「古いものと新しいものを組み合わせてできる、まったく新しい何か」とその魅力を語る。
「ビンテージカーは、デザインやシンプルさが魅力。でも扱いが難しいでしょう。EV化することで、静かに滑っていくように走るようになる。未体験の感覚が楽しめます」
取材では残念ながら現車は見られなかったが、写真だけでもその魅力はわかる。見た目は旧車。中身は最新のEV。乗ってみたい!
古川さんは1994年、内燃車をカスタムするガレージビルダーを創業。改造申請もして車検をちゃんと通るカスタムカーを送り出していたが、「たとえば改造マフラーは環境問題と逆行していますよね」。社会に認められる企業への転換を考えて、コンバートEVにたどりついた。2009年に手がけた一号車は、ホンダシティカブリオレ。「ほとんど趣味で作りましたが、あちこちから取材されて話題になりました。ただ、鉛電池で、ゴルフカートみたいなもの。ビジネス化は難しかった」。
その後、30台近くを制作することでEV化技術を磨きあげた。現在は、市販EVも搭載するリチウムイオン電池を使っていて、市販車と同じように充電設備が使える。ふらっと立ち寄った充電スタンドに旧車が止まっていたらびっくりしそう。
コンバートEVは、脱炭素化の流れの中で欧米では注目を集めるビジネスとなっている。ただ、日本では認知度は低い。課題は価格。「安全基準を満たす高精度と高品質のパーツを、すべて一台ずつ手作りするので、ビートルで500万円。車種によっては1000万円を超える。EVに乗りたいなら、最初は市販車をお勧めします」
たしかに、そこまでして乗る人は限られそう。それでも、古川さんはコンバートEVの普及に期待をかける。
「私たちは、ガソリンは作れないけれど、電気は作れます。電気を火力発電に頼る日本ではEVはCO2削減に役立たないとも言われますが、排気ガスで病気を患う人だっている。少なくとも街でクリーンな車に乗るのは悪いことではないですよね」
(夕刊フジ/2021.11.11)