
【019】電気の生まれる場所 応援中の飯舘電力へドライブ
電気はどこから来るのか…。BEVに乗るようになって、そんなことが気になりはじめた。せっかくなら再生可能エネルギーで充電したい、と思うけれど、自宅は集合住宅で、太陽光パネルどころか充電器すらない。せめて気持ちだけでも、と自宅の電気を再エネにできる「みんな電力」に変えた。
別に電線を引き直したわけじゃない。自分が使った分だけ、FIT電気や非化石証書などを買うことで、再エネ100%と同等にしてくれる仕組み。面白いのは「顔の見える電力」という企画だ。「〇〇さん家のジャガイモ」を買うみたいに、特定の発電所を応援することができる。そのリストに載っていたのが「飯舘電力」だった。
2011年の原発事故で全村避難した福島県飯舘村に、14年に設立された電力会社。耕作できなくなった農地などに太陽光発電所を作り、売電収益の一部で村の復興貢献を目指しているソーシャルカンパニーだ。設立時に取材して、その後もご縁が続いていたものの、この数年は訪ねることもなかった。早速「応援する発電所」に指定。せっかくなので訪ねることにした。
往復約600キロのロングドライブ。まずは福島市の事務所に立ち寄り、副社長の米澤一造さんに近況を聞かせてもらった。利益を出すことも大切だが、小さな電力会社なので、発電事業でどんどん儲けを増やすというよりは、再エネの意義を発信することを重視しているそうだ。

「私たちの存在を広く知ってもらいたい。被災した体験を発信する義務があると考えています」
被災から10年が過ぎたが、以前と同じようには戻らない。厳しい現実の中で、温室効果ガスの削減という課題がクローズアップされ、再エネが注目されるようになった。そこで打ち出したのが「スイッチング・プロジェクト」。使う電気を選ぶことが、未来を選ぶことにつながる、というアピールだ。
「関心のない人たちも、再エネについて考えてくれるきっかけをつくりたい。価値観がスライドしてくれるといい」(米澤さん)
ですよね、とインタビュー中に何度も頷いていた。気ままな放浪が、ちゃんとしたテーマを持った旅のように思えてくる(偶然だけど)。
インタビュー後、飯舘村へ。飯舘電力の太陽光発電所は、それほど大きなものではない。でも、自分が応援している発電所だと思うと、なんだか立派に見えてくる。頑張って発電してね。帰りは国道6号で福島第一原発をかすめて帰宅。EVで発電所をめぐる旅、シリーズ化したくなった。

(夕刊フジ/2022.1.13)