【035】ニチコン「パワー・ムーバー」EVに積んで災害への備えに
電気自動車(EV)の走行用バッテリーには、電気がたっぷり詰まっている。一世帯が一日に消費する電力は約12kWh(環境省調べ、全国平均)だそうで、満充電が35.5kWhのホンダeでも、ほぼ3日分にあたる。かなりの量だ。
せっかくのエネルギー、車が止まっている間は取り出して使えばいい、というのが「V2L(ビークル・トゥ・ロード)」の考え方。先日の「EVオートキャンプ実証トライアル」で、電気BBQグリルや炊飯器の電源となったニチコンのV2L機器「パワー・ムーバー」を、東京・茅場町のニチコン東京支店でマイEVにつないでもらい、しっかり復習してきた。
レクチャーしてくれたのは蓄電システム営業二部のリーダー、大田幸博さん。「バッテリーに蓄えられた直流(DC)を、家電に使う交流(AC)に変換して使えるようにする機械です」。なるほど、パソコンなどで使う「ACアダプター」の逆バージョンというわけ。
使用法は難しくない。コードをホンダeの充電口に接続して、シガーライターから起動用の電気を送るだけ。すると充電口が給電口に早変わり。パワー・ムーバーの家庭用コンセントが使えるようになる。試しに扇風機をつないでスイッチオン。当たり前に動く。涼しいので取材中つけっ放しにしておいた。
2017年に発売されたものの、EVの普及が進まない中では知る人ぞ知る商品だったが、19年の台風15号による千葉などでの長期停電で、認知度が上がったそうだ。被災地の電源供給に約100台のパワー・ムーバーが活用され、EVやPHEVを非常用電源車として利用してもらえて、困った時に頼りになることが証明された。
「3年ぐらい前までは『要らないものを売りにくるな』と門前払いされることもありましたが、最近は空気が変わりました」(大田さん)
全国的に公用車をEV化する動きも盛んになって、問い合わせも急増中だとか。EVに積んでおくだけで災害への備えになる。買わない手はない。ただし一台40万円以上するので個人が購入するにはハードルが高い。キャンプ用品としても魅力的なので、もう少しお求めやすくなってほしいなぁ。
(夕刊フジ/2022.5.12)