【024】早々にオール電動化 豊洲市場のターレー
内燃車から電気自動車(EV)へのシフトが進む…と言われても、EVはまだ新車販売台数の1%というから、うまく想像できない。でも、世の中に先駆けてエンジンが廃止された場所がある。東京都中央卸売市場の豊洲市場(江東区)だ。2018年10月、築地からの移転と同時に、屋内の市場で使うターレットトラック(通称ターレー)やフォークリフトなどの運搬車両はすべて電動化された。
2000台以上が活躍するターレーは、くるくる回転する円筒形の動力部に運転席と荷台をつけた乗り物。小回りがきいてたっぷり積める。トロ箱を積んで行ったり来たり、市場内の流通に欠かせない存在だ。同市場でターレーの整備と車両リースを担う会社のひとつ、酒井輪業社の社長、村口邦義さん(72)が話を聞かせてくれた。
「電動ターレーは、平地で空荷だと航続距離が60キロぐらい。ここは3階や4階まで登るし、荷物をどっさり積むのでそこまでは無理。でも1日の仕事に差し支えることはないよ」
コンセントにつないでおけば約8時間で満充電。1日中走らせることができる。ブレーキ修理やタイヤ交換といったメインテナンスが村口さんたちの日常業務。築地時代の方が故障は多かったという。「地面がガタガタだったからね。振動で配線が切れたりしていた」
ターレーは、戦後間もなくから市場で使われている。電動車のデビューは意外に早く、昭和40年代ごろだという。生鮮市場で排気ガスを撒き散らすのは良くない、という意識が高まって、東京都も電動化を推奨。当初はパワー不足と言われたが次第に改善し、移転時にはガソリン車は数えるほどになっていたとか。
豊洲のターレーはリース契約が多い。1台約150万円するが、働く車は傷みも早く、3〜4年で車両交換するという。酒井輪業社にはリースを終えたターレーも置かれていたが、こんなになるの?と驚くほど錆びて凹んでボロボロ。
塩水を使う水産市場は特に過酷な環境。整備や修理もサービスに入ったリースの方が安心なのだ。スムーズに電動化が進んだ理由には、耐用年数の短さもあるかもしれない。
「ガソリンだと月に1万円はかかってたと思うけど、電気代は3000円ぐらいかな。もうみんな慣れて、電動で当たり前になってますよ」(村口さん)
近距離の集荷や配達という限定された条件で、メインテナンスも万全なら、静かでクリーンでリーズナブルなEVにケチをつける人は少ないだろう。
荷台の下に積まれたバッテリーは鉛蓄電池。補水の必要がない新型モノブロックバッテリー搭載車もあった。
(夕刊フジ/2022.2.17)