締め切りに遅れそうなあなたへ 〜ひとりで悩まないで〜
この記事を読んでいるあなたは、ライターや作家、研究者など、書くお仕事をされている方でしょうか。それとも読者で、そういう世界に関心がある方でしょうか。デザイナーやイラストレーターなど、締め切りに関連する職業の方もいらっしゃるかもしれません。締め切りを守れなかった経験がある方もいるかもしれませんし、いま実際に締め切りに追われている方もいるかもしれませんし、あるいは、現に締め切りに遅れてしまって、気配を消している最中かもしれませんね(だとしたらこの記事を読んでいる場合ではないですが)。
そんなあなたが、締め切りに遅れそう、と気付いてしまったら、まずやってほしいことがあります。それはとてもシンプルで、簡単で、誰にでもできることです。
それは、担当編集者に相談すること。それが一番大事です。なぜかというと、
豊崎さんの言うとおり、締め切りの日、編集者は今か今かと原稿を待っています。飲み会のみならず、打ち合わせとか家族や友達との予定があるのに原稿がくるのを待っているかもしれません。出版社・メディアや編プロ(編集プロダクション)によっては残業代が出ないところもあるので(これは内緒)、いくら待っても一銭にもなりません。待ちぼうけを食らわせるなら、事前に相談していただければ時間が無駄にならないということを、豊崎さんは言っているのだと思います。
しかしながら、問題はそれだけではありません。締め切りに遅れそうなら相談してほしい理由はいくつかあります。
紙媒体なら、関わってくる人は担当編集者だけではなく、校正者、組版者、デザイナー、印刷所、製本所、などなど多岐にわたり、寝ないで原稿を待っている人は背後にたくさんいるのです。遅れればその分、編集者はそれぞれにスケジュールの調整を依頼しなければならないかもしれません。特に厳しいスケジュールで動いている雑誌の場合は、少しの遅れでもその影響は大きなものになります。一箇所が遅れただけでも、何人もの人が徹夜する羽目になるかもしれません。。事前に遅れそうなことが分かっていれば、スケジュールの前後を入れ替えたり、台割りを調整したりして、なんとか各所に掛ける迷惑を最小限にすることができるでしょう。
もしアイデアが枯渇して書けないのであれば、ひとりで悩まないで相談してもらえば、こういう切り口はどうですかと提案することもできるし、読者からの声を伝えて参考になる意見を伝えることもできます。それでも書けないのであれば(つまりそれは原稿を落とすことになりますが)、ページを真っ白にしてしまわないために代替の原稿や広告を手配することになりますが、それだって時間が必要ですから、早く相談してくれるとなおさら助かるのです。
紙媒体はシビアなスケジュールで動いていますが、webなら柔軟だから遅れてもいい……という訳ではありません。それぞれの媒体の特性によりますが、連載なら決まった曜日に出さないといけないとか、週ごとや月ごとに決まった数を出さないといけないとか、あるいは遅れてもいいけど締め日をまたぐといけないとか、月をまたぐといけないとか、会社ごとに決まりがありますし、部署間での調整がいる場合もあるので、やはり早い段階で相談してもらえると助かるのです。調整がいるほどの深刻な事態でなかったとしても、今日はこの原稿を読もう、明日はこのゲラを……という仕事の段取りもあるので、いつ頃原稿ができそうかだけでも、教えてもらえると本当に本当に助かるのです。
わたしは書籍の編集者ですが、紙の本は雑誌ほどシビアではないにせよ、やはり各所とスケジュールを調整しながら仕事しています。毎月の刊行予定をもとに会社は動いているので、原稿が一ヶ月遅れればやはりなんらかの調整が必要になります。著者校のゲラを戻すのが遅れるときも同様ですから、やはり早めに相談してください。編集者の作業だけでなく、校正者やデザイナーなどとの調整が必要になる場合もあります。校了が遅れれば印刷所・製本所だけでなく、書店への案内や配本日の確保など、取引先との調整が必要になります。一ヶ月の遅れが予算に影響するかもしれないし、年度をまたぐと大きな問題になるかもしれないのです。
だからもう一度言います。締め切りに遅れそうであれば、なるべく早く担当編集者に相談してください。お力になれるかもしれないし、なれなくても各所に書ける迷惑を最小にすることはできるかもしれません。ひとりで悩まないでください。気配を消したりしないでください。正直に言ってくれれば、怒ったりしません(少なくともわたしは怒らないし、そんなことで怒るような奴とは一緒に仕事をすべきかどうか、考え直した方がいいと思います)。むしろ相談してくれれば助かるし、書き手に頼られるのは編集者冥利に尽きるというものです。編集者というのは基本的にみんな、言葉を愛する人間ですから、いい言葉を読者に届けるために努力を厭わないのです。だから全力で、あなたの執筆をサポートします。早めにご相談をいただければ。
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