刹那の意味 - 『14歳の栞』
刹那とは仏教における時間の単位である。風が吹けば一瞬で過ぎ去ってしまう。一瞬で忘れてしまう。そんなかけがえのない時間を人は青春と呼び、それは刹那という単位になる。
35名分の刹那。それを丁寧に映したのが『14歳の栞』である。全員実名で出ているので、ソフト化や配信ができないらしい。興行としては厳しいだろうが、もう文化庁が運用しても良いだろうと思うほどに、日本にとって重要な作品だと断言できる。
35名分の、認めてほしい。愛したい。愛されたい。好き。嫌い。振り向いてほしい。放っておいてほしい。楽しい。悔しい。逃げ出したい。知らないフリ。強がり。弱さを見せたくない。それでも明日が来て、それを繰り返して、また必ず桜は咲く。そんな痛々しくも美しい、あの頃。
大人になることは、刹那を意識しなくなることなのかもしれない。もっと大きな単位ですべてを見通した気になって、誰かを出し抜いたり蹴落としたり、嘘をついたりつかれたりしながら、平気なフリをして毎朝バスに揺られるのだ。
刹那を意識していたあの頃に戻りたいとは思わない。だけど大事な思い出だったといつか振り返る日が来る。その時に出来るだけ笑っていてほしいと、スクリーンに映る彼らに祈った。そして大人も悪くないねって思ってくれたら嬉しい。
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