ご家族視点からみたICU その1
こんにちは。IN//SEKIの中尾です。
今回は、ご家族がICU入院経験のあるIさんにお話を伺いました。
壮絶な体験を伺いながら、治療環境がご家族視点からどう映っているのか、ご家族である患者さん自身の思いを代弁いただき、沢山の発見をさせていただきました。
この場をかりて感謝を伝えさせていただきます。本当にありがとうございました。
・Iさん お子様 ICU 3日間 一般病棟17日間 奥様 ICU 4日間
ご家族のICU入室までの経緯を教えてください――――――――――
子どもは2回手術していて、当時はいっぱいいっぱいでよく覚えていないのですが・・・1回目も2回目も緊急手術でした。
非常に症例が少ない病気だったので、住んでいる地域からかなり遠い病院に入院をしたんです。
子どもの胸のところにしこりがあって、近所の小児科で様子見ていたのですが、半年後にもう一度受診し、精密検査をしてMRIで腫瘍を発見したんですね。
そこから大学病院の脳神経外科に病理診断の手術を勧められたのですが、場所が視神経を巻き込むような場所にあると言われました。
説明を聞き、直感的に簡単に生検できないのでは?と思い、症例についての実績がある先生を自分で調べて見つけました。
その先生からは生検による失明のリスクを言われ、豊富なご経験から画像診断だけで済みました。その間1週間しかなく、バタバタと事が進んでいった感じですね。
その時感じたのは、患者家族側に知識がないために、ベストな治療を選択する機会を失っているのでは?ということです。
お世話になった先生が力をいれている、患者会の理事をやらせていただいていますが病気についての理解を深めたり患者さんご家族同士が繋がる中でよりよい方法が探せるような活動をしています。
ご家族からみて、ICU入院中に印象的なことはありましたか?ーーーーーー
はい。面会時にICUも一般病棟もカーテン仕切りのみだったのですが、他の患者家族の笑い声や、話し声が気になりましたね。
とくにICUは出入口のカーテンが常時開いており、自分の家族が辛そうにしているのを、通過する他の患者さんやそのご家族にチラチラ見られているような気がしてとても辛かったです。
また子ども自身も、体が動かせない状態だとベッド上で排泄処理が必要になるので、一般病棟でもICUでも、カーテンの仕切りだけでは臭いや音が他人に気付かれることが精神的に辛かったと言っていました。妻も同時期にICUに入院していて、排尿はカテーテルでしたが、排便時は我慢したそうです。
治療する空間について何か気になったことはありましたか?―――――――
会話は気になりましたが機械音やアラーム音は不快には思わなかったですね。足音も人の雰囲気なども気にならなかったです。
あとは、カーテンや空調の風向きが自由に変えられないので本人は毛布や着るもので、調節していました。
一般病棟で窓際のベッドだったときは、日中にカーテンを閉めると隣の患者から「窓からの明かりが入らない」「外の景色が見えない」などと苦情を言われたこともありました。ゆっくり休みたい時は閉めたくても、自由に閉められないのがストレスでしたね。
その2に続く
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ベッド上やベッドサイドでの排泄は病院ではよく見かけるシーンですが、私でもその様子が隣の人にわかってしまうのは、自尊心が失われてしまうような気持ちになりとても辛いです。また、辛そうにしている家族を見られるのが辛い、というご家族の心情もカーテンや視覚の工夫で軽減できるのでは?と思いました。
よりよい治療環境は、患者さんだけでなく、ご家族含めて患者さんなのだと思います。両者が、五感で「なんだかここちいい。なんだか不安がほぐれる」と感じるような環境はきっと医療者にとっても心地よいものになっていくのではないかなとも思います。
IN//SEKI 中尾
アスクレピオスは医療環境の未来について、一緒に考え、カタチにしていくラボでもあります。
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