ディベロッパーツール企業の作り方〈2〉|何から始めるか
本シリーズでは、ディベロッパーツールを提供する会社を作り、運営していく上でのノウハウを、algolia創業者のニコラ・デセーニュ(Nicolas Dessaigne)氏の解説動画を基にご紹介しています。
第2回のテーマは、「何から始めるべきか」です。
📍 ポイント
会社を始める前のポイント
何から始めるべきか
オープンソースにするべきか
収益化・販売戦略
さて、何から始めるべきでしょうか。
まずはユーザーと話すことでアイデアが適切かどうかを見極めるか、プロトタイプを作成してユーザーからのフィードバックを得るか、どちらかから始められます。
プロトタイプの開発
最も重要なのは、「過剰に作り込まない」ことです。素早く「雑に」作るべきです。これは多くの開発者、特に完璧さやコードの安定性を追求するエンジニアには難しいかもしれません。
できるだけ早くテストし、全コードの90%を捨てる覚悟で取り組む。残りの10%が最も価値ある部分なので、それを早期に特定し、後でリファクタリングすればよいと考えましょう。
いったんプロトタイプを見せて、フィードバックを得てみるべきです。
例:algoliaの初期プロトタイプ
algoliaは、現在は非常に広範で大規模な検索エンジンですが、最初は非常にシンプルなものでした。APIや管理者用のUIはまだ導入されておらず、簡単なウェブページがあるだけでした。最初の顧客との打ち合わせの時は、コマンドラインを見せながら説明したそうです。
しかしこのシンプルな製品で、algoliaは最初の顧客から月々$2,000の契約を得ることができたのでした。
ユーザーとの対話
プロトタイプができたら、ユーザーと会話しましょう。
多くの開発者はユーザーと対話することが嫌い(苦手)です。しかし開発者がユーザーと話すことは非常に重要です。
開発者は自分がターゲットユーザーであるため、ユーザーの言語やニーズを深く理解できます。セールスが苦手でも、ユーザーの声を聞くことで製品を改善できるのは大きなアドバンテージです。製品が完成していなくても、ユーザーが支払う価値を感じるかどうかを早期に確認するべきなのです。
しかし、どうやってユーザーを見つけたらよいのでしょうか?
アウトリーチとローンチが2つの主な手段になります。
アウトリーチは、製品の初期段階で特に必要不可欠な活動です。初期の頃はまだ製品や企業の知名度が低いため、自ら行動して潜在顧客やユーザーに接触する必要があります。
最初は自分のネットワークから始め、同僚や同級生、友人など、製品に関心を持ちそうな人々にアプローチします。
この際、大量送信型のマーケティングメールのような形式的なアプローチではなく、個別化されたメッセージを心がけましょう。メッセージには具体的で誠実な内容を盛り込み、相手に興味を引くよう努めるべきです。(これもY Combinatorの解説ではよく言われていますね)
アウトリーチを通じて最初のフィードバックを収集し、製品の方向性や価値を確認することができます。
ローンチ(直訳すれば「立ち上げ」)は、アウトリーチで得た知見を活用し、広範な注目を集めるための活動です。ローンチは一度きりのものではなく、製品の進化や改善に応じて複数回行うことが推奨されます。
たとえばHacker Newsの「Show HN」セクションは、開発者コミュニティに製品を紹介し、フィードバックを得る絶好の場です。ローンチの目的は単なる宣伝ではなく、製品が解決しようとしている問題とその価値を明確に伝えることです。特に開発者向けツールの場合、製品の新しい機能や改善点を定期的に発表し、コミュニティの興味と関心を持続させることが鍵となります。
ローンチの場で売り込もうとしてはいけません。製品の価値や新規性を明確かつシンプルに説明しましょう。
コメントしてくれる人としっかり関わりましょう。なかには失礼な物言いをする人もいるかもしれません。しかし、それを周りで見ている人もいますので、ちゃんと対応することが望ましいです。
SegmentやOllamaなどは、Hacker Newsから始まった成功例です。
効率的ではない方法で積極的にフィードバックを得る
「最初はスケールしないことをやれ」
というのも、いろいろなところで言われている教訓です。
YC発のトップ企業として有名なStripeも、最初はユーザーの人のところまで出向き、横に座ってコーディングを助けながら、どんな改善が必要なのかのフィードバックを得ていたそうです。
フィードバックを聞き入れるかはあなたの判断
フィードバックには注意が必要です。特に開発者からのフィードバックを誤解しないように気をつけてください。例えば、彼らが「こういう風に製品を作るべきだ」と言うことがあるかもしれませんが、それはあまり重要ではありません。本当に知りたいのは、彼らがその製品を使うかどうか、そしてその理由です。また、「こんなの自分で1週間で作れるから必要ないよ」と言われることもあるでしょう。でも、それなら自分で1週間で作ってみればいいのです。それで十分です。そういったことにこだわらず、次へ進んで製品の改良を続けましょう。
いきなり人を雇わない
これもよく言われることですが、製品が適切な価値を提供しているか確認する(PMF)前に人を雇うのは避けるべきです。
次回もお楽しみに。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。