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私たちの仕事のこれから

サントリーのザ・カクテルバー、懐かしい! 
すぐに思い浮かんだのが、永瀬正敏が、夏の終わりの空気感を漂わせてしゃがみこんで、「チチ、チチ」って線香花火をやっているCM。チチっていうお酒の宣伝だったはず。夏の恋…みたいなイメージだった。
平成がひとケタだった頃だよね。私たちは中学生だったかな。
うちは、父がお酒好きで毎日晩酌を欠かさない人なんだけど、母は下戸なのね。でも、あの頃、父は、ときどきは母と一緒に飲みたくて、ザ・カクテルバーを週に何本か買ってきてたの。それで、だいたい土日の夜なんだけど、母専用のグラスに、ピンクとかハワイアンブルーとか、きれいな色をしたザ・カクテルバーを注いで、母も下戸なのに嬉しそうに飲んでちょっと顔を赤らめたりしてて、私はなんだかその風景が好きだった。まさに、「愛だろ、愛っ。」だね(笑)。


って、ちょっと話がザ・カクテルバーに引っ張られすぎてしまったけど、私も、お洋服に対しての愛は、本当に由香の言うとおりに思ってて、セール中のお店に行くと、乱雑なセール品より、丁寧に扱われている新入荷商品がよく見えるし、ZARAとかH&Mとかファストファッションのお店だと、同じアイテムが「大量生産品です!」と言わんばかりにずらっと並んでて、欲しいという気持ちになかなかなれないんだ。
デザイナーの思いが込められて、アイロンがきれいにかかって、丁寧に扱われているのなら、素敵に見えるんだろうね。価格や素材とかだけじゃなくてね。
だから、自分が気に入って買ったものは大事に扱ってあげなくちゃ……。


それで、仕事に対してもやっぱり、「愛」を持ちたいなって思ってるの。
前回の手紙でも書いたけど、私たち、新卒でCUTiE編集部に配属された頃、本当にやりたいことがいっぱいだったし、与えられた仕事ひとつひとつでも、どうにかして自分オリジナルの面白いことができないか、すごく模索していたよね。まだまだ、ひとりで何もできなかったし、すべての工程で苦戦していたけど、やる気だけはものすごくあった。

でも、10数年編集者をやっている中で、自分の中である程度のパターンができてしまって、「こういうときは、パターンAで」とかさっと判断ができるようになって、それはそれで常に70点から80点くらいとれるから悪いことではないんだけど、でもがむしゃらに作った粗削りだけどオリジナリティあふれる企画に、面白さでは負けてしまう気がしてる。
もちろん、時間に限りがあるから、すべてに情熱を注ぐことは不可能なんだけど……。ひとつひとつの仕事をさっと流してしまわず、愛を持てるといいよね。そして、できれば、愛を持てる仕事をしていきたいなと思っています。

編集者という仕事に関して言えば、会社に所属していると企画に名前がクレジットされないことも多いし、華やかなモデルを筆頭に、カメラマン、スタイリスト、ヘアメイクなどの専門性が高くて高度な技術を持ったプロフェッショナルに囲まれて仕事をするから、「自分にはなんの技術があってなんの役に立つんだろう」と思うこともしばしばだよね。
その中で、やっぱり企画力とか、視点とか、「こういうことを考えています」みたいなものが、編集者のスキルになるのかな。

今、雑誌という媒体がどんどん衰退していて、各プロフェッショナルたちはインスタとかのSNSで直接ファンとつながっていけるから、自分の役割について、あらためて考え中……。由香はどう思う?

由香からの質問にあった、「表に立つこと」についても、考え中……。ただ、さっきの「仕事への愛」の話に戻っちゃうけど、「私はこういう仕事が得意です」「こういうことが好きです」というのを、きちんと世間にアピールしているほうが、自分に合う仕事=愛せる仕事をやれる機会が増えるとは思っているよ。

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