《血液が酸性になること》
《はじまり》
慢性炎症、病気の発現の元には《血液の酸性》がある、とは今や常識となりつつありますが、慢性炎症との関係性が明らかにされているものはありません。
それは《特別な条件下》で血液が酸性になるのだ、という無意識の概念があるからです。
しかしそうではありません。
《血液が酸性になる過程》
一般的には血液の酸性度は、
・ストレス(主に低酸素に細胞がさらされる。)
・酸性食品の取りすぎ。
・呼吸がうまくできないとき。
とされます。
しかし実は私たちは須らく毎日、《血液が酸性》の状態になります。
《ホメオスタシス》
私たちの身体が毎日酸性の状態であっても生きてゆけるのは、ホメオスタシスという恒常性システムのおかげです。
酸素を使うと取り入れた酸素のうち2%は活性酸素となります。
それにより酸化すると言われていますが、酸性度を瞬時瞬時に処理してくれる細胞がいます。
それが核を持たない、いわゆる《がん細胞》と《プリン体》です。
これらは血液が酸性にならないように調整する役割があります。
それでも酸性度が進み慢性炎症を起こすには理由があります。
《進化の特徴》
その前に進化のことで理解しておくポイントがあります。
地球上の生物の進化を代謝の観点から整理すると、ある一点がみえてきます。
それは《電気エネルギーを上手に使えるよう》に進化している、ということです。
電気エネルギーは大きく安定した効率のよいエネルギーです。
合成したステロールをミトコンドリアへ運ぶのは《小胞体》という器官なのですが、これまでどのように運ばれるのか酵母・動物・植物では未解明でした。
それはヒトの遺伝子にコードされている《シトクロムc》というタンパク質の一種によるものだからです。
このタンパク質は、《電子伝達系》という代謝の回路、つまり脂質を酸化させて電気エネルギーを生み出す過程で不可欠な因子です。
シトクロムc還元酵素、といい補酵素Qとも呼ばれます。サプリメントとしてはコエンザイムQ10と呼ばれます。
このヒトの遺伝子にコードされている酵素のおかげで、人間は生物上一番電気エネルギーを作り出せる身体になったのです。
《電子伝達系の停止》
では慢性炎症へ至るのはなぜか、に話しを戻します。
電子伝達系はある条件下で停止してしまいます。
それは《低酸素》です。
細胞が低酸素状態になることです。
電子伝達系は酸素を使う反応であるため、酸素がない状態では反応が停止します。
そうすると、通常は消費されるはずの水素イオン(H+)がどんどん増えます。
酸性度=水素イオンの濃度、なのでこれで体内の酸性度が上がります。
《細胞が低酸素になる》
ではなぜ細胞が低酸素になるのでしょうか。
それはたった一つ。
《炭水化物》です。
解糖系というエネルギー代謝では酸素を使わずに行われます。
解糖系の先にクエン酸回路、最終的に電子伝達系へと反応が進みます。
しかし、これら解糖系より反応が進むためには条件があります。
それは《好気的代謝ができる状態であること》です。
イコール、《電子伝達系》が《稼働していること》です。
解糖系は酸素を使わず、単純なプロセスでエネルギーが作れます。
一方電子伝達系にはたくさんの複雑なプロセスの回路です。
生物は時間のかかる電子伝達系よりも、単純な解糖系を使うことを優先します。
ヒト以外ではそれで支障はないのですが、ヒトは
・シトクロムcが遺伝子にコードされている。
・動植物では脂質の輸送について解明されていない。
・ヒトはプリン体の分解酵素を持たずに進化した。
という事から
ヒトは《電子伝達系》という代謝回路を使うことを前提として進化しているのです。
《まとめ》
血液が酸性にならないようにするには、細胞に酸素を入れる。
そのためには《電子伝達系》を稼働させることが大切です。