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ゲームマーケット2020秋での設営の話〜バンソウ編〜
時が経つのって早すぎません?ゲームマーケット終わったらなるはやで記事書こう〜とか思っていたのに、もう10日経っちゃったんですけど……。
ゲームマーケット2020秋。実に一年ぶりとなるゲームマーケットにバンソウも参加させていただきました。しかも前回よりもエリアを広くしちゃいました!
2019秋に設営に関する記事を書いていたので、今回もまた「こんなことしたよ〜」というのを皆さんにお伝えしたいと思います。どうぞお付き合いくださいませ。
去年の記事はこちら↓
今設営のテーマ
バンソウは今回、「サバンナテリトリー」という新作ゲームを提げての参加です。必然的に推すべきものは新作である「サバンナテリトリー」となります。推して推しまくって、多くの人に知ってもらい、遊んでもらいたい。そのため構想初期段階で「サバンナモチーフのブースにしよう」という方向性ができていました。
いくつか導入した雰囲気作りの仕掛けの中で、最も大きいものが「リアルなテントとキャンプグッズを設営してしまう」というものです。ゲームマーケット会場に現れるテント。めちゃくちゃユニークで目立つんじゃないかと思いましたね。
そしてこれが実際のブース風景です。
設計当初はテント内のキャンプテーブルや椅子を使って試遊をしてもらったらユニークな体験になるのではと考えていたんですが、新型コロナへの対策を考慮して最終的には試遊そのものをやめようという結論になり、このテントはディスプレイとして利用されることになりました。
緑に統一されたブースは、エリアの中でもそれなりに目立っていたんじゃないかなとは思います。
ところがです。結論を言ってしまうと、今回の設営は大失敗でした……!
シミュレーションが足りてなかった。足りてなさすぎた。そのため、ここから怒涛の勢いでレイアウト修正を重ねていくことになります。
当初の設営意図
今回のゲームマーケットでは来場者の滞在可能時間が限られているということもあり、「購入に対する判断が先伸ばしにされる」のではないかという仮説を立てていました。
今までなら、一通り試遊したり話を聞いたりした後で、もう一度戻ってきて購入してくださるパターンが結構あったんです。しかし滞在時間に制限がある今回は、もう一度ブースに戻ってきてくれる見込みはないのではないか、ということです。
そのため重要視したのは「とにかく目立つこと」「時間がない中でもサクッと商品のことを理解できること」です。これが達成できれば、例えゲームマーケットで購入に至らずとも、その後の小売店などでの販売時に効果が出るはずと考えました。これは長期的な視点でもありますので、成果が出るとしてもまだまだ先のことでしょう。
「サバンナテリトリー」を知ってもらうという目的の他に、バンソウでは「我々のことをもっと知ってもらう」という目標も掲げていました。なにぶん小さい組織なので、こういう機会に皆さんにもっと知ってもらいたいのです。
その手段として、2面ある壁をそれぞれ「新商品であるサバンナテリトリーの紹介」「バンソウのこれまでの実績」と役割を分けて設計してみました。
サバンナテリトリー面は世界観を強く出して。
実績紹介面はサバンナとは明確に様子を変えて、違いを明らかにさせています。
飾っているパネルは共通仕様となっており、実際の箱やコンポーネントを貼り付けています。これにより立体感が出てリッチになるのと、素材やサイズなどをストレートに伝えることができます。
サバンナテリトリーという新商品で皆様をブースにお誘いし、その流れで実績を見ていただけたらいいなあと思っていたんですね。これが非常に甘い見通しだったわけですが……。
初期レイアウト:開場直後
開場直後の様子です。もういきなり失敗してます。
左下の黄色い枠に注目いただきたいのですが、ここ「立ち止まるの禁止」エリアでした……。立ち止まっちゃいけない方に向けてディスプレイされているのはいろいろ危険です。
また人の流れを見ていると、写真左側の通路よりも右側の通路の方が通行量が多く感じたため、開場早々にテントの向きを変えました。
レイアウト2:テントの向きを変更
↓
ディスプレイが右側を向くように変えました。サバンナ面の壁に背を向けることになり導線が分断されてしまったことが気になりますが、立ち止まってくれる人を増やすという点においては正解です。
ついでに壁にかけてあったゲーム紹介漫画のパネルを外し、テント内に配置してあります。ディスプレイ周りにアイキャッチを増やすことで、興味喚起に繋げています。
これらにより、実際に立ち止まってもらうという効果は多少改善されました。けれど、ブースの中に入ってくれる人がほとんどいません。これは完全に設計のミスでした。
これは設計着手初期の俯瞰図です。見ての通り、スタッフが入り口を塞いでしまっています。
この原因はテントにありました。テントを置くことでエリアが小さく分けられてしまい、本来広く使えるはずのブースに対して入り口が生まれてしまったのです。
スタッフはお客さんを呼び込むべく、通路側にでます。けれど立てる場所は限られているので、どうしても図のような立ち方になってしまう=必然的に入り口を塞いでしまう、という悪い流れです。
俯瞰図の時点でわかっていたはずの問題ですが、これを問題と気づいていなかったところがシミュレーション不足というやつです。
入り口が塞がれていなかったとしても、ブースの中に入るってけっこう気合がいるというか、「冷やかしになっちゃうくらいなら入るのをやめておこう」「話しかけられるのめんどくさいから遠目から見るだけでいいや」ってなりがちですよね。アートギャラリーのように壁面のパネルを見てもらおうってことがそもそも見当違いだったと気づきました。
そこで、こう解決しました。
レイアウト3:自ら寄っていくスタイル
↓
おわかりでしょうか。売り場を前に出して、同様に実績紹介の壁(写真右手)につけていたテーブルを通路側に向かせました。
中に入ってもらえないなら、ギリギリまでこちらが外に出ればいいんです。これの効果が大きく出たのは実績紹介面の方ですね。まったく見向きもされていなかったパネルたちでしたが、レイアウト変更前と比べて多くの人が見てくれるようになりました。
次の解決すべき問題は、サバンナテリトリーのディスプレイを見てくれる人をもっと増やしたいというもの。テントの向きを変えただけではまだまだ望む結果には至っておらず、大きな決断をします。
レイアウト4:テント、いらなくね?
↓
お昼の入れ替え時間を利用して、テントを奥へと押しやりました。(テントの役割はディスプレイからスタッフのベースキャンプへと変わりました。世界観を崩すことなくレイアウトを変える、というのはどうにか守りたいポイントです)
もう単純にテントの邪魔さに耐えきれなかったんですよね……。ブース内の視認性も悪くさせてるし、閉じられた空間があることでの閉塞感みたいなものもありました。
テントがなくなったことで視野がひらけてスッキリと明るい印象になり、立ち寄りやすい雰囲気が出ました。「ブースの中に入る」という意識は薄れたと思います。
初日はこれで最後までいきました。売り場や展示のテーブルをさらに少しずつ前に出すなど微調整はしましたが、大きな変更は無しです。
1日目の終了後、スタッフからの意見を聞いてさらに変化を加えます。
レイアウト5:ディスプレイを高くしよう
↓
ゲーム紹介のテーブルが低く、お客さんに説明するとき大変という問題を解決させたものです。
高さは正義ってわかっていたはずなんですけど(去年記事参照)、テント内に設置するという条件があったことからあまり高くできなかったんですよね。テント内で高いテーブルを使うと入り口が邪魔して写真が取りづらくなるから、むしろ低い方が良かったんです。
ですが、テントをなくした今となっては、低さはデメリットでしかありません。そこで台を作ってテーブルを底上げし、さらに立ち止まってくれた人にゲームを知ってもらうためのパネルを背景に立てました。これは説明そのものよりも、高さを出すことでアイキャッチを作りたいという意図の方が強いです。
このパネルも元々は壁にかけてあったやつですね。当初の設計には拘らず、どんどんアレンジしていきます。
レイアウト6:やっぱり立体感しか勝たん
去年の設営で使った切り抜きパネル(コトバグラムの「100万円貸して」と、トポロメモリーの「やりすぎると脳が死ぬ」)を念のため持ってきてたんですけど、これらをそれぞれのパネルに貼り付けて立体感を出しました。
写真だと伝わらないかもしれませんが、これ本当に劇的に印象が変わります。前回の成功でわかっていたはずなのに、なぜ今回それをやらなかったんだ自分。
というわけでこれが今回のゲームマーケット2020秋におけるバンソウブースの最終形態となりました。(この後も説明するまでもないような細かい調整はしました)
D-07バンソウです!#ゲームマーケット2020秋 #ゲームマーケット #ゲムマ #ボードゲーム pic.twitter.com/MfxYS5leCX
— 宮本アシタ@バンソウ-デザインストラテジスト (@miyamoto_asita) November 15, 2020
お伝えしたいこと
改めて感じたのは、「当日にならなきゃわからんことがたくさんある」ってことに尽きます。もちろん初めてのエリア出展ということで事前のシミュレーション(想像力)が足りていなかったのも明らかなんですが、それにしても想定外のことは必ず起きるものです。
大事なのは、その時に瞬時に、大胆に対応できるかどうかではないでしょうか。そしてその発想や判断は他の出展者の様子から得ることができます。
よその様子を観察する。そして自分たちを俯瞰して見る。諦めずにやれることは全部やる。そういうのって、ちょっとボードゲームっぽいとか思っちゃいます。
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次回は「みんなの設営編」と題して、宮本が会場を回って一方的に「すばら〜」と思ったブースを紹介していきます。今回の記事は反省を共有することで何かしら参考にしてもらえることがあれば、という思いでしたが、参考になるって意味では次回のまとめの方が有益かもしれないです。お楽しみに。