プー太郎日記 その4「雑談力」

2019/10/04

2ヶ月ぶりの散髪。

もうここ2週間ほど前髪が邪魔で仕方なかった。ただ、大学時代に一人暮らしを始めてから散髪のインターバルが2ヶ月で固定になっているものだから、それを満たさないのはなんとなく気が咎めたのだ。


突然だが、僕は公共の場で公共モードの人と会話するのが好きではない。

おそらく多くの人に共感していただけることと思うが、服飾店や靴屋、楽器屋の店員などはその最たる例である。

 何かお探しのものはございますか?^ ^
  あ、大丈夫でs...(見てるだけだ。構うな)

 ご試着ご希望でしたら遠慮せずにお声掛けください^ ^
  あ、はい(分かっている。下がってろ)

 こちら試奏も出来ますんで^ ^
  え、あ、はい(せん。失せろ)

毎度々々こんな調子である。
何なら声を掛けられないように慎重にルーティングしているにも関わらず追い詰められてしまうことすらある。なんという熱意、なんという社員教育。

たしかに、そういう声掛けがキッカケになって最終的に製品を購入する人も決して少なくないのだろう。成功体験のないマニュアルが時代を問わず普及しているということは考えにくい。

それに、「店員さんに質問をしたいけれど、自分からは声をかけにくい...」という客が一定数いるであろうことも想像に難くない。

だが、今どき多少の情報リテラシーがあれば目的の商品をあらかじめネットでリサーチしてある客は珍しくないし、なんなら店頭でサイズ感や手触りをチェックした後通販でポチッなんてこともザラである。

改めて考えてみると、「店員を積極的に活用したいけれど自分から声をかける度胸は無い人」を客のスタンダードなモデルとして接客法を標準化した結果、そのモデルから外れた人々が肌に合わない接客を受けているということが仮定される。

なるほど、じゃあこうしよう。いっそのこと店内の至るところに飲食店宜しく「店員呼び出しボタン」的なものを配備するのだ。声をかけるよりもボタンで呼ぶ方が気楽だということは、それこそすでに現行の飲食店において実証済みなのだから。店員の助力を必要とする客と店員の気遣いを鬱陶しく感じている客の住み分けも完璧ではないか。ねえ。ねえ?


...とまあ愚痴々々書いてみたものの、今回の本題はそこではない。

そう、散髪に行ったのだ。

そして、僕は「理容室のマスターとあんまり会話弾みたくない勢」だということがただ言いたかったのある。

しかし、そこはマスターもプロである。僕の散髪インターバルが2ヶ月であるということも頭に入っているし、その間にお盆が挟まっていることも当然承知している。となれば、

ずっとこっちにいたの?

とこう来るわけだ。さすがの僕も、

いや、お盆には帰省しましたね

と返す外なかろう。マスターは既に僕がプー太郎であることを知っている。退職後初めての帰省、完全に会話弾んでいく流れである。
まあ、僕も子どもではない。今回はマスターのプロ根性に折れてやろう。

と徒然に話している内に、家の近くにホームセンターがほしい、という話になった。僕の発言である。僕の住まいの周辺には申し訳ばかりの小さな個人経営のホームセンターしかない。これが品揃えが悪いのだ。

マスターは当然「なぜだ」と問う。「ひょっとしてDIYをするのか」と。僕は何となく嫌な予感を感じ始めていた。僕は「エレキギターの改造をする」と答えた。

悪い予感というものは当たるものだ。

かくして、マスターはDIYerであった。
これは、所謂、“共通の話題”ってヤツだ。

僕はギター改造、マスターは棚などの木工と仕事用のハサミのセルフメンテ、扱うものは違えど道具などは共通するものも多いし、むしろちょっとした分野の違いが話者の説明意欲を掻き立てるというものだ。

話題の展開に身を任せすっかり話し込んでしまった。僕が中国製の聞いたこともないメーカーの安いドリルを買った話をしたら、「言ってくれれば貸してあげたのに」なんて言われてしまった。
挙句の果てには、マスターは自作のハサミ修理道具までわざわざ店の奥から引っ張り出してきて見せてくれた。

いや、結構楽しかったよ。それこそ他人と会話したのだって随分久しぶりだったわけで、悪いことなんか全然無いんだけどさ。
僕にとって一番の問題は、

この打ち解けた感じが持続可能ではない

ってことなんだよ。

次回、やはりまた2ヶ月後に散髪に来たとき。もう黙ってブスッとしていられないじゃない。
雑談って結構疲れるんだよなあ。まいったなあ。

しかしあれだな、今回は随分と文字数がかさんでしまった。
この感じでいくとnoteも持続可能でなくなってしまうな。
ちょっとバランスを考えていかないと。

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