おでんくんのラップがWACK

　フリースタイルダンジョンが終了してから、にわかな僕はバトルを見ることがめっきりなくなった。それでも最近、なぜかYouTubeの関連で過去の凱旋MCバトルが上がってきた。久しぶりにフリースタイルを見て、即興での対話、押韻、やはり激アツだなと思った。そんなバトル動画を見ながら、ふと思い出したことがある。そういえば、おでんくんにもラップ回あったな、と。

　天才ビットくん内で放送されたアニメ、おでんくん。おでん村に暮らすおでん達の日々を描いたものだ。
　問題の回を見返してみる。当時僕は中学生で、その時にもこれは酷いなと思ったのだが、見返してみても案の定酷かった。大してラップの知識なんかなかった当時でもそう思ったのだから、にわかではあるがいろいろと知った今の僕にはもっと酷く思われた。
　この話はまずみんなが集まる野原で糸こんくんがラップを披露する場面から始まる。以下文字起こし。

夜の夜中にお腹が空けばなかなかいいじゃんおでんじゃん　寒い夜にはおでんだね　真夏の海でもおでんだね　でんでんでーんでんでんでんででーんでん　丸いお鍋は僕らの宇宙　可愛いあの子は僕に夢中　みんな一緒におでんだね　おでんのおなべはひとつだね　イッツザ・ワールド　でーんでんでんでけでけでんででん

　周りのおでん達はさすが糸こんくん、ラップが上手いね、とかふざけたことを言っている。じゃん、とか、だね、とか語尾が同じなだけだ。フロウもない。宇宙と夢中で踏んではいるが、そんなの小学生でもできる。これを特別秀でているように取り沙汰すこいつらの耳は腐れているのか。おでんの汁に漬かり過ぎた弊害なのか。たまごちゃんが糸こんくんに「さすがジャマイカ帰りね」などと言うが、ジャマイカとラップ関係なくね？　レゲエじゃね？　この世界ではラップといえば糸こんくんとなっていて、そのレベルがこれ。きつい。
　それからたまごちゃんがおでん村主催のラップバトルが行われることを示唆し、糸こんくんはリズム感が良さそうという訳の分からない理由でおでんくんと一緒に出場することを決める。

　場面は一気にラップバトルの会場へ。最初の試合はたまごちゃん、スージーVSガングロたまごちゃん。以下たまごちゃん、スージー文字起こし。

私キュートなたまごちゃん　私セクシースージー　うっふーんあっはーん　うっふーんあっはーん……

　これは酷い。酷過ぎる。尼さんと牛が自己紹介して欲情するだけのクソみたいな時間。これで沸き上がる群衆。やはりこの世界の客の耳は腐っている。以下ガングロたまごちゃん文字起こし。

わたしガングロたまごちゃん　ガンガンきてるわギャンたまちゃん　ガンガンいくわよギャンたまちゃん　わたし最高　凄いの才能　認めなさいよー　ギャングロ最高　ガンガンガガンガングロヨー　ガンガンガガンガングロヨー

　この世界で唯一ラップをしているのがガングロたまごちゃんだ。最高と才能とさいよーで怒涛に韻を踏む中盤。ギャルめいたフロウも必見。彼女だけは紛れもないラッパーであった。なのにブーイングを起こす耳の腐った客ども。これで沸かなかったらあと沸くとこないぞ馬鹿ども。
　かわいいからという理由で判定はたまごちゃんとスージー。意味わからん。ふざけている。てかガングロたまごちゃんの方が絶対かわいい。髪の毛ないもんゆでたまご。もう1人は牛だし。あとガングロたまごちゃんだけソロなの謎。

　次は糸こんくん、おでんくんVSジャガー、ぎんなんぼうずなのだが、試合前にジャガーの握りっぺにより糸こんくんは気絶。おでんくん1人でのバトルを余儀なくされる。急に1人で出場することになったおでんくんは

でんでんでん　よっ　でんでんでん　はっ

としか言うことができない。これは酷い。もうちょっと頑張れよ。続くジャガーのラップ。

俺様ジャガーじゃジャガジャジャン　悪い奴じゃがいい男　今日もみせるぜいい仕事　はどう(?)ジャガーじゃこの野郎　俺のオナラをかいでみろ　俺様ジャガーじゃジャガジャジャン　ミックジャガーもびっくりじゃーん　ジャガジャガジャガジャガ……

　ジャガジャガうるさいし聞き取りづらいし最悪。なぜか沸いてる客。

　ここでなぜか観客席の大根先生と心が通じ合うおでんくん。大根先生の励ましによって覚醒するような雰囲気。そして繰り広げられたラップがこれだ。

でんでんでーんででんでーん　でんでんでーんででんでーん　でんでん僕はおでんくん　だけどみんなもおでんだよ　勉強大好き昆布くん　お掃除大好きこんにゃくん　ジャマイカ大好き糸こんくん　僕らはみんなおでんだよ　おでんのおなべはひとつだよ　でんでんでーんででんでーん　でんでんでーんででんでーん

　クソかと。

　でんでんうるせえだけで、韻なんか踏んでない。内容もない。駄目だ。こいつ駄目だ。知らねえモブキャラの紹介始めてんじゃねえぞカスが。まずなんでお前の名前おでんくんなんだよ。もちきんちゃくんだろ。ファック。こんなクソみたいなラップで客はこれ以上ないほどあがる。耳が腐っていたのは知っていたが、まさかこれ程までとは。結局こいつらはプロップスだけでしかラッパーを見ていないのだ。リリックなんか聞いていやしないのだ。ガングロたまごちゃんがかわいそうすぎる。
　その後糸こんくんが復活してみんなでラップしていい感じで終わる。おでん村のヒップホップに未来はない。