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ボツ案供養

【君の墓は僕と同じならいい】

小柳 美佳(こやなぎ みか)16歳
篠崎 俊作(しのざき しゅんさく)23歳
小柳 栄(こやなぎ さかえ)22歳
小柳 千晴(こやなぎ ちはる)享年48歳
三隅 陸斗(みすみ りくと)16歳

 神様はいろいろな物語を知っている。人間の脆い話も、心が強い話も。

 俊作と栄は付き合っている。栄は美佳の腹違いの姉。母子家庭で美佳の母親が死んだことから話が始まる。

 美佳は依存体質で病弱な母親からの愛情を十分に受けず、姉に育てられた。そのため栄が母代わりとして依存される。

 ある日、栄は俊作を連れ家に帰る。はじめこそ俊作に疑念などを抱いていたが、俊作は境遇に同情し姉と結婚することを告げる。「同棲する」ということで兄のように思ってくれて構わないと言う。その言葉に少しの安心感を覚え、美佳は俊作を受け入れる。
 ところがその頃から二人を独占したいと自己中心的な言い訳で二人を困らせるようになる。家に引きこもるようになり1ヶ月が経った時、美佳のクラスメートの陸斗が様子を見に来るようになる。美佳はクラスメートを突き放す。やがて被害妄想に取り憑かれるようになり、暴れる美佳を抑えようとする栄と俊作がまるで自分を監禁しているのだと思い込むようになる。
 そこへ神様がやってくる。神様は殺らないとやられる、そう、美佳に教えた。美佳はそれにしっくり来た。再びクラスメートが様子を見に来る。以前とは打って変わって大人しい美佳におかしさを覚えた陸斗は家の前でたまたま会った栄と俊作に相談する。

 美佳に私達二人に話はないのか、私達が如何に美佳を心配しているかを説くが、以前の二人ではないと拒絶する。流石におかしいと思った姉は美佳をカウンセリングに誘う。するとまた神様はやってくる。騙そうとしてるよ。愛されてないよ、と。すべてを拒絶された姉は壊れ、美佳を受け入れる。俊作はそれを良しとせず、まずは栄を治そうと美佳から一度離れることを提案する。栄はそれに乗り、少し散歩をすると言い家からでる。

 俊作はそこで美佳から真実を知る。母は病気ではなく自殺したのだ。それも自分と同じく周りから見てもらいたいがために。代理ミュンヒハウゼン症候群になりかけていて、その対象が腹違いの姉だったのだ。お姉ちゃんが水風呂に沈められ病気にさせられる。そうはさせられないと様々な手法で止めてきた。やがて自分たちが殺されるのではないかと自衛を怠らずにいると母は諦めたのか自分を傷つける手法へ戻っていった。それが祟ったのか母は薬の過剰摂取で帰らぬ人となった。
 姉は自分が狙われていたことを知らない。そのせいもあり母を好いていた。そこでまた神様は現れた。この男がそれをするぞ。その言葉が何故か頭に響いて仕方なかった。その瞬間、この男を殺さなければと思い込む。姉が散歩から帰ってくると包丁を持ち倒れた俊作を見下す美佳がいた。

 俊作は一命を取り留める。俊作の傷の具合から抵抗しなかったのだと栄は告げられる。俊作は自分で作った傷ということを医師に報告する。自分はしばらく入院するからその間に姉妹の絆を確かめてご覧と諭す俊作。美佳は精神病棟へ入院になっていた。

 久々に美佳の家を訪ねた陸斗は後悔した。彼こそが代理ミュンヒハウゼン症候群なのだ。他のクラスメートから優しい陸斗というレッテルを剥がされたくなかった。そのために不登校で様子のおかしい美佳のもとへ通っていた。しかし何時しか本当に好きになっていた。これが狂った恋だとわかっていても今の自分には彼女を待つしかない。

 病院の前で入ることを躊躇っていた陸斗は面会に来た栄にすべてを書き留めた手紙を美佳に届けてもらうようお願いする。親族以外面会謝絶のためそれを受取る。その時、美佳は陸斗と会うときだけは必ず部屋着から着替えて出迎えるのだと言われる。それだけで陸斗は少しは本当の支えになれていたのかもしれないと希望を抱く。栄は手紙の内容がもしも悪質なものだったら美佳を傷つけるだけだと中を開いてしまう。それはただのラブレターだった。純粋な思いはもしかしたら美佳に届くかもしれない。そう思い美佳に渡す。またも神様は現れ「いい事を書いておけばいいと先生にでも言われたんだ」と囁く。しかしその言葉は拒絶される。美佳は前をむき出したのだ。神様にお前は妄想だと宣言しその存在を消す。何を言っても神の言葉は届かない。

 神様は納得行かなかった。こんな泥だらけの汚い運命に一筋の光もいらない。しかしそれは上司に阻まれる。こういう事もあるの。全てが神の思い通りになんて行かない。見届けようと。

 それから美佳には神様の声が聞こえなくなった。5年後。大学1年生として陸斗のいる大学に入学した。入学式の日、俊作と栄は美佳を玄関で見送る。外へ出れば陸斗が待っている。二人はめでたく付き合うことになった。未だ将来の不安に時々苛まれる美佳。美佳は甘やかそうとする周りの人間に感謝と拒絶する。自分は自分なのだ。今まで頼ってきたぶん、未熟なぶん成長するために頑張っている。

 神は彼らを見守って一つの結論に至った。「つまらない。それが彼らには幸せなのだ」。上司はまた一人、新しい視点を持った神様を作れた。世界を管理するにはまだまだ観測者が必要だ。最悪、この物語を見届けたものの中から選ぶのもいいかもしれないと上司は思った。


っていうね、これ結構前のやつなんで色々ツッコミどころもあるけど。
多分もう台本に書き起こしたりはしないと思うしここで供養…。
せめて小説にできたらよかったんだがな。
気力がねぇや。

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