映画に触ってみよう!映写ワークショップ基礎編の振り返り(1)
フィルムに興味のある若年層を対象にした、映写ワークショップ基礎編。アジア映写技師ネットワークメンバーの村岡由佳子が、自身の経験も踏まえて昨年度の様子を振り返ります。
きっかけは口から出まかせでした
初めて映写技師を意識したのは大学生の時。
もともと映画館という空間が好きで、もぎりのアルバイトはしていましたが、だからと言って自分が観ている映画がフィルムかどうかなんて考えたこともありません。「映写室」という聖域に入れる人たちに憧れていたのは確かですが、どこか他人事でした。
ある日、アルバイト先に移動映写会社の女の人が来ました。今まで映写室に出入りしてきたのは男の人ばかりだったのに珍しい。この人だったら映写室に入れてくれるかも!そう考えて、何とかその女の人の気を引く台詞を言わなければと思い、口をついて出たのが「すみません、映写技師になりたいんですけど」…。それから本当に映写の仕事をするようになって、もうすぐ10年になります。
映写窓越しの映画体験
色んな映画を映写窓越しに観ていると、実に様々な出会いがありました。自分では絶対巡り会えないような作品を観る喜び。そんな中で、はっとするくらい美しいと思うことが、フィルムの映像で多いことに気付きました。観たことのある映画でも、フィルムで観ることで印象がガラリと変わる体験もしました。状態の良い、新しいフィルムで上映すると、本当に動く絵画のようですし、古くて色が抜けたような状態でも、何故か新しいフィルムよりもピントがしっくりと調節できることもあります。「フィルムの美しさ」なんて曖昧なものは、言葉で言われてもピンと来ないのだけれど、一度知ってしまうと、何だかもう美しいとしか言いようがないのです。
咄嗟の出まかせから飛び込んだ映写の世界ですが、孤独な仕事ではあるけれど、自分の世界が広がる気がして、どんどんのめり込んでいきました。
フィルムを身近に
石井さんから映写ワークショップの話を聞いたとき、私が誰かに伝えたいことがあるとすれば、フィルムを自分の身近に感じてもらうことだと思いました。フィルムの良さを伝えるには、観てもらうのが一番。でもフィルムの映画を観たいと思ってもらうには、フィルムを他人事ではなく自分事に引き寄せてもらわなければなりません。かつての自分がそうだったように、映写を体験することは、フィルムを身近に感じる入り口としてちょうど良いと思いました。という訳で、基礎編のワークショップを担当することになりました。