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映画に触ってみよう!映写ワークショップ基礎編の振り返り(2)

小会メンバーの村岡由佳子による、昨年度開催した映写ワークショップ基礎編のレポートです。


ワークショップの内容

基礎編ワークショップは、

① フィルムを触る前に知っておきたい豆知識やキーワードの説明と、フィルムの持ち方の練習
② 映写技師の仕事を3つのセクションで体験
③ 福岡市総合図書館の映写室とフィルムの収蔵庫の見学

と、大きく分けて3つの行程で行いました。
朝から夕方までガッツリあったので、参加者の方は大変だったと思います。

②の実技では、フィルムの巻き返し、フィルムの補修、フィルムの装填を行いました。それぞれのセクションで、皆んなが「できた!」と達成感を味わえる部分と、映写技師の妙技を見てもらえる部分が両立する内容を目指しました。

フィルムの巻き返し

フィルムの巻き返しは、言葉通りフィルムを一方から一方へ巻き取る作業です。私が担当でした。普段の映写は自動の巻き取り機(リワインダー)を使いますが、ワークショップでは手動のものを使いました。上手く巻ける人、巻けない人、慣れてる人…色んな人がいましたが、皆んなが教え合ったり、休憩時間も返上して練習していたり、皆さん熱心に取り組んでいました。

フィルムの補修

このセクションは、ネットワークのメンバーの中でも、かねてより補修技術が素晴らしいと思っていた神田麻美さんに担当をお願いしました。

フィルムとフィルムを繋げる時は、フィルムを繋げる機械(スプライサー)を使って、専用の薄くて透明なテープで貼り合わせます。スプライサーはフィルムの編集(フィルムは90分程の作品だと6巻程度に分かれていますが、その各巻を繋げて大きな巻にする作業)など、補修以外の目的でもよく使う機材なのですが、参加者の皆さんに、神田さんの繊細な補修技術も見てもらいたくて、「フィルムの移植」という高度な補修を受講内容に入れてもらいました。

その他、このセクションでは経年劣化したフィルム(ビネガーシンドロームと言って、古いフィルムは状態が悪くなると劣化して酢酸臭を発します)の臭いを嗅ぐ体験もありました。だいぶ強烈な臭いのするフィルムだったので、参加者の記憶に刻まれたことと思います。

フィルムの装填

これは一番難しいセクションだったと思います。映写機に実際にフィルムをかける体験をしてもらいました。

石井さんのほか、移動映写のスペシャリスト、岩本知明さんに担当をお願いしました。特に岩本さんの速くて正確な装填も見てもらえたらと思ったのですが、時間が足りなかったかも知れません。

もともと少ない時間で「装填ができた!」と思うことはできないとは想定していたので、このセクションでは装填の他に、フィルムの袋詰めを行ってもらいました。

フィルムは、コンテナと呼ばれる筒状の袋で輸送されます。このコンテナは日本独特のものらしく、韓国からの参加者が一番盛り上がっていたようです。

ワークショップを終えて

ワークショップの後、映写技師になりたいと言ってくれた人、映写を1人でしながらずっと孤独だったけど、今回色んな映写技師に会えて良かったという人、日韓両方の参加者の方から色んな声を頂きました。経験者、未経験者問わず、映写を体験することで何かを感じ、言葉にしてもらえたことが嬉しかったです。

でも私が一番ワークショップをやって良かったと思うのは、①の講義でフィルムを初めて目にした時の参加者の皆さんの嬉しそうなキラキラした顔を見れたことです。映画が面白いとかフィルムに触れて楽しいとか、そんな純粋な感情は、見ているこっちまで幸せな気持ちになりました。

映写技師は絶滅危惧種の職業です。後継者を育てなくてはならない。でもその前に大事なのは、フィルムで映画を観たいと思ってくれるお客さんを増やすことです。基礎編ワークショップでは、そんなフィルム好きのお客さんが増えていくような試みを続けていきたいと思います。