映写ワークショップで移動映写機"新響"を扱ってみよう(1)
小会代表の石井義人が、昨年の映写ワークショップの様子を思い出しながらお伝えします。「日韓映写技師ミーティング in 福岡」期間中に、私たちは2つの映写ワークショップを行いました。 ひとつは、初めてフィルムに触れる方を対象にした初心者向けのワークショップ、もうひとつは35ミリ映写機の基本的な取扱い方法をもう一度再確認することと、映写技師として現在活動していらっしゃる方との交流を目的としたものです。では、後者のワークショップの説明から始めましょう。
"新響"を紹介します
日本におけるポータブル35ミリ映写機の代名詞とも言える、かつて新響電機が製造・販売していた映写機を、私たちは親しみを込めて「新響」と呼びます。
「新響」の特徴は、非常にコンパクトに作られていることです。
移動映写の仕事は、映写機材一式を車に積み込み、会場へ搬入し、組立・調整を行い、映画を上映し片づける(そして倉庫に仕舞う)、その繰り返しです。エレベーターを利用できる会場は楽ですが、階段を上り下りする場所では機材の大きさや重量がポイントになります。
移動映写の現場では、基本的に映写機を2台、用意します。映画フィルムは、1時間30分の作 品であれば4〜5巻のように、複数の巻(リール)に分けた状態で、倉庫から発送されます。
興行館の映写室では、複数の巻を編集する(巻と巻をつなぐ作業)方法が一般的ですが、移動映写では映写機を切り替えながら上映を行います。作品の1巻目を映写機1号機で上映し、続く2巻目を2号機で上映する、さらに3巻目は1号機、4巻目は2号機・・・という方法です。
このように、映写機材が2台必要です。車に積み込む時も、会場に運び入れる時も、片づけて倉庫に戻す時も、いつも2台分を扱う労力が必要です。実際の映写では、2台の映写機を切り替えた時に映像と音声に差が生じないよう、調整が必要になります。これは、なかなか大変な作業です。経験が増えると楽なるのかというと、スキルが上がれば細部への拘りが強くなるので(細部へ拘ることから技術が向上する)、 なかなか楽にはなりません。
「新響」への親しみは、楽ではない作業を共にした人間と機械の関係から生まれます。映写機としては決して優れているわけではありませんが、普段の手入れを怠らないことと、上映中は常に映写機の側にいて、スクリーンとサウンドに注意することにより、悪くない映写効果を引き出すことが出来ます。映写技師が映写機に介在して良い結果を生む、これが昔から続いている 映写技師と新響との関係です。良い結果とは、自己評価だけではなく、観客や映画の製作者たちから寄せられる賛辞です。