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Withコロナ時代のアジアビジネス入門㉗「<トランプ騒乱>平等化が生んだSNSモンスター」@毎日アジアビジネス研究所

ツイッター社がアカウントを永久停止
 米ツイッター社はトランプ大統領のアカウントを永久に停止することを決めました。トランプ支持者が米連邦議会議事堂を一時占拠した<トランプ騒乱>を巡って、大統領の投稿に暴力行為を煽る規定違反があったと判断したからです。ツイッターなどSNSを最大限に活用して独自の世論を形成してきたトランプ氏は「言論の自由の阻害にあたる」とツイッター社を批判しています。私は<トランプ騒乱>を招く要因の一つになったSNS世論もまたトクヴィルが看破した「平等化」が生み出したモンスターだと思っています。
 社会的な諸制度の平等化こそ、アメリカのデモクラシーの本質であると見抜いたのは、フランスの政治学者で歴史学者のトクヴィル(1805~1859年)でした。アメリカ独立宣言から半世紀後に9カ月にわたってアメリカを見聞したトクヴィルは著書「アメリカにおけるデモクラシー」をまとめ、<諸条件が平等化するにつれ、大多数の人々は自足する程度の知力と財産を手に入れるようになるが、誰に対しても何一つ義務を負っていないし、誰をもあてにしない>ゆえ、個人と個人の結びつきが弱まり、自分の利益を求める個人主義が横行すると主張しました。
多数の声に従順になるトクヴィル的状況はインターネットの世論
 トクヴィル的状況と世論の関係について宇野重規・東大教授は著書「トクヴィル―平等と不平等の理論家」で次のように説明しています。
(1)「知の権威」が存在した近代西欧で育ったトクヴィルはあらゆる知的権威を疑ってかかる知の個人主義を評価している。
(2)しかし、トクヴィルは次のように問う。はたして平等化社会に生きる個人は「知の権威」の不在状況に耐えられるのか。自分で確かめることに限界がある以上、例えば「多数の暴政」に頼るのではないか。
(3)特定の個人の権威を認めないにもかかわらず、多数の声にひどく従順になることこそ、「トクヴィル的状況」とでも呼ぶべき状況であった。
  宇野氏は特定の個人ではなく、多数者の声こそ個人にとっての権威となり、このことを現在において如実に示すのがインターネットの世界であると言及します。そして、ツイッター、フェイスブックなどのSNSが普及する中、インターネットで世論を形成した象徴がトランプ大統領であると指摘します。
トランプ現象が露呈した<権威の相対化が必然となるSNSの時代>
 アメリカ大統領選で獲得した総得票はバイデン次期大統領の約8000万票に対し、トランプ大統領が約7380万票と拮抗しています。大統領選の結果は、平等と不平等が渦巻くアメリカ社会の縮図>と言えなくもありません。
 200年近く前、トクヴィルは数多くある結社(慈善団体など)や新聞がアメリカ社会の個人主義を結びつけていると高く評価しました。しかし、いまや結社は党派性を強め、ニューヨーク・タイムズ紙などの新聞は既得権を持つ旧来型権威として批判される対象となっています。<トランプ騒乱>は権威が相対化されるのが必然となったSNSの時代において、「平等な隷属」ではなく「平等な自由」こそ最大の信念としたトクヴィルの今日的な意味を考える大切さを逆説的に教えてくれています。


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