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バート・ウィートジェンス:ネズミが世界を救うヒーローに (究極のチェンジメーカー #2)

「究極のチェンジメーカー」シリーズについて
私たちアショカは世界最大の社会起業家ネットワークです。1980年創立以来、アショカ基準の社会起業家を発掘しており、2020年までに世界90カ国以上で約3800人を「アショカ・フェロー」として選出してきました。彼らは、社会にある問題の表面的な応急処置ではなく、それらの歪みを生み出している水面下の仕組みそのものを変えています。この連載では、社会を大きく変えている、「究極のチェンジメーカー」の名にふさわしいアショカ・フェローを一人ずつ紹介していきます!

戦争が終わった後もなお、毎年罪のない市民の命を奪い、大きな傷を負わせる地雷。エンジニアとしての経験も持つバート・ウィートジェンスは、大好きなネズミの鋭い嗅覚を使って地雷を素早く撤去していくという画期的な仕組みを開発しました。

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地雷を禁止するオタワ条約が締結されたのは1997年。しかし、今もまだ多くの地雷が埋まっています。2018年には50か国で約7000人が被害に遭い、うち3000人が死亡しました(出典:ピースボート)。

一瞬で、その人や家族の人生までも大きく狂わせるのが地雷です。撤去が急がれていますが、①専門家によるコストが高いことと、②アフリカの土壌は鉄分が多く、機械の誤検知で作業に時間がかかる、という2つの問題のためになかなか除去作業が進んでいないのが現状です。

この状況を打破したのが、バートとAPOPOです。画期的なアイデアは、野ネズミの嗅覚で地雷を素早く見つけること。9か月かけて訓練されたHeroRATS(ヒーローネズミ)は地元のスタッフ二人とチームを組み、一緒に地雷検知を行います。

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専門家や訓練犬ではなくネズミが行うため、コストが低額で検知を行うことが出来ます。また、犬は自重で地雷が作動し、犠牲になることもありますが、HeroRATSは軽いので問題ありません。スタッフも、外国の支援に頼るのではなく地域住民を雇い、彼らが自分たちの力で地雷を除去していくことを大事にしています。

そして、驚くべきはそのスピード。人間がテニスコート1面分の面積を検知するのに4日間かかりますが、HeroRATSは30分で済ませることができます。

地雷の撤去には被害を少なくするというだけでなく、耕作や居住に使う土地を取り戻すという意味もあります。2015年に地雷完全撤去宣言を出したモザンビークでは、APOPOのHeroRATSのおかげで、他国に避難していた100万人を超える国民が母国に戻ってこられたそうです。

APOPOは今までに8600万平方メートルに地域から10万個以上の地雷を除去し、地雷のために居場所を失った580万人を、元の生活に戻しました。

ハムスターなどのげっ歯類が大好きだったバート少年が、地雷のニュースをテレビで見て「何かできないか」と考えたアイデアが、一国の運命と多くの人の人生を変えています!

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APOPOの活動をまとめた動画 - Brut Japan

「彼らは人類を守るために働くヒーロー」。優れた嗅覚を持ったネズミたちが、人間に代わって対人地雷を除去。世界中では、未だ1日8人が地雷の犠牲になっている。地雷が埋められている旧紛争地では多くの子供たちが犠牲になり、大地を耕すことも、学校を建設することもできない。

Posted by Brut Japan on Monday, September 28, 2020

TED Talk


もっと詳しく知りたい方へ

APOPOのホームページ:https://www.apopo.org/en
APOPOではネズミの嗅覚で結核を検知する活動も行っています。

ANAによる記事:https://www.ana-bluewing.com/changemakers/bart_weetjens/report01.php

BBC「地雷を見つけるネズミに金メダル 救命活動に貢献のお手柄」:https://www.bbc.com/japanese/54291267

アショカの全ての活動は、共鳴してくださる方々の寄付金で実現しています。少額でもとても励みになりますので、ぜひご支援のほどよろしくお願いいたします。