映画「ラストマイル」レビュー
⭐︎多少ネタバレかな。
物流業界に身を置いてきた私がこの映画に関心を持ったのは、周囲の人々から「浅沼さんが言っていることって、この映画みたいですよね?」と最近立て続けに言われたことがきっかけだった。
かつてメーカー系物流子会社の経営者だったこともあり、私の考えを映画と関連づけて話してきたのだと思う。そこで、実際に映画館に足を運び、話題作を自分の目で確かめることにした。
『ラストマイル』は、現代社会における人間の機械化と、システムに囚われることの危険性を鋭く描き出している。特に印象的だったのは、物流や製造業の現場で日常的に見られるベルトコンベアや作業と稼働率という言葉。人間性を奪いかねないかという点である。いや人間のロボット化である。
Customer centric(全てはお客様のために)
洗脳される
危険な呪文、魔法の言葉。
それが「マジックワード」
「お客様」という言葉の持つ力も、非常に興味深く描かれていた。物流業界でも「顧客満足」を掲げることが多いが、この言葉が持つ魔力によって、時として本質的な問題が見過ごされてしまう現実がある。効率化やコスト削減の名の下に、人間らしさが失われていく過程を、この映画は見事に表現していると感じた。
映画だけではない、マジックワードは社会を確実に前進させたが、過剰は必ず不足を生む。(お客様ファースト)(お客様のために)に邁進した「裏側」へ寄り添う気持ちを忘れてしまっているのが現代ではないか。
普段なかなか目に見えない人たちの苦労や奮闘が描き出されていたことは、特筆すべき点だと思う。物流2024問題にも関係する。現代社会では、ポチっとするだけですぐに荷物が届くのが当たり前になっている。しかし、一つの荷物に対しても、多くの人々が様々な思いを持って計画し、作業し、運んでいるのだ。この映画は、そうした裏側の場面を描き出していた。
『ラストマイル』は現代社会における「人間とは何か」という根本的な問いを投げかける作品である。
たくさんの人に、ぜひこの映画を見てもらいたい。物流2024問題は2024年だけの話ではない。これからももっと深刻化する。この課題は誰もが当事者なのだ、という認識から始まる。自身の生活や仕事を見つめ直す良い機会になることを望みたい。(自省も含めて)
しかし、満島ひかり という女優の演技は素晴らしいな。驚いた。