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余珀日記⑥

余珀のお披露目をした3月22日、ありがたいことに予想をはるかに上回るたくさんの方にお越しいただいた。いらしたお客さまが「お花見する暇もないだろうと思って」と桜の枝をくださった。

当時つぼみの多かった桜は、その後ずいぶん花を咲かせ、部屋の中でも十分お花見をさせてもらった。今は葉桜に変わり、新緑を見せてくれている。

つぼみが花開き、咲きほこり、花びらが散り、小さな芽が出て、縮んだ葉が少しずつ、今日も一ミリ、今日も一ミリと開いて、しわくちゃな緑の手を一生懸命に広げつつある。

うちのいきものがかりがせっせと水を替えてくれているおかげなのだが、切られた枝にもこんなに力があること、生きていること、命の強さをしみじみと感じる。こもってじっとしているからこそ、観察するようになり気づけたことだ。

お店でたくさんのお客さまと出会い、それぞれの方とお話しすることでいただく気づきや刺激、優しさや温かさ、わき起こる感謝や楽しさもあるだろう。けれど、こうして静かに過ごす日々にも穏やかな平和だけでなく、はっとする発見もあるのだなぁと改めて思う。周りを見渡し、観察して、深くそこに潜って探検する、そんな喜びもあるのだ。大好きなある方が言っていた。「材料は全部足元に転がっている」と。きっとこういうことなんだろう。

昨日思い立ってその方に手紙を書いた。3月22日にいただいた素晴らしい贈り物のお礼を伝えるために。「石ころからだって学べるのよ」。あの人はそう言って笑っている気がした。

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正垣文
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