余珀日記19
余珀お披露目の日から丸2年経った3月22日、冷たい雨が降るなかお墓参りをした。母方の大叔父夫妻と母の従姉妹が近くのお寺に眠っているのだ。
登戸に余珀の物件を見つけた当初、この街には縁もゆかりもないと思っていた。母が大変お世話になったという叔父さん達が昔近くに住んでいたなんて、美容師さんと物件のオーナーさんとの繋がりをはじめ、やはりこの場所には何らかの導きがあったと感じざるを得ない。どうにか2年お店を回せたのも、知らないところで知らない何かが守ってくれていたのかもしれない。
ご挨拶が遅れたお詫びとご縁への感謝を込めて二つの墓石にそれぞれ手を合わせた。お彼岸とはいえ真冬のような寒さで体はずいぶん冷えたが、お参りをようやく果たせて心は晴れやかだった。
冬あたりから精神的に何だか苦しい状態が続いていた。「余珀とはこうあらねばならない」「余珀であるならばこうするべきだ」と、勝手に自分で自分を縛り付け、自ら大変な状況へ追い込んでいた。人生の紆余曲折を経て2人でたどり着いた帰結が余珀のはずだった。好きで始めた余珀なのになぜこんなに大変なのか。2人で悩んで話して考えた。
たぶん4月頃から少しずつ風向きが変わってきた。遊ぶことを忘れていた。楽しむこと、ゆるむことを忘れていた。やりたかった「哲学とお茶の時間」を久々にリアルで開催した。思いついて「写経とお茶の時間」も始めた。予約なしの気軽なカレーの日もやってみた。
仕込み前の心身をととのえるルーティーンに読経が加わった。先日はある方に正坐について教えていただき、きちんと作った正坐の心地良さと「上虚下実」という状態を体感した。体が変わると心が変わり、心が変わると体が変わる。そのうちに面白いお誘いやお話もいくつかいただき、流れも勢いも変わってきた。大丈夫、陰は極まれば陽に転ずるのだ。
この場所に出会えたこと、守ってくださる全ての人やもの、お客さまに、そしてお茶に改めて感謝。3年目は「余珀で遊ぶ」。好きに楽しく軽やかに遊ぼう。