#11 継いでみたら試練がたくさん! 芦屋町の赤しそを使った、唯一無二のお酒とは!?
存在感のある看板に導かれる、“地酒とギフトの店「てのや」”をきりもりするのは、明治創業のお店を継いだ5代目の吉田英治(えいじ)さんです。芦屋町ブランド認定品の「芦屋赤しそ純米梅酒」をはじめとしたオリジナル商品や、酒蔵に何十年も通い続けて仕入れた銘柄など、品揃えが豊富です。休みの日も試飲会に行くほどお酒好きの吉田さんに、酒造業界や自分らしい店作り、芦屋港の活用についてお聞きしました!
Q どんなお酒を取り扱っていますか?
酒どころ新潟をはじめとして全国各地から仕入れた、日本酒・ワイン・焼酎やノンアルコール飲料を取り扱っています。てのやオリジナルの「芦屋赤しそ純米梅酒」と、リキュール第二弾の「BEPPIN(べっぴん)サワー」が人気商品です。赤しそ梅酒は、芦屋町の特産品「あたかの赤しそ」エキスと八女の酒蔵「繁枡」で漬け込んだ梅酒をブレンドしたリキュールです。
BEPPINサワーは、ソーダで割って楽しむサワーの素で、イチゴのような甘い香りと赤しそのすっきりさで仕上げています。赤しそ梅酒には、航空自衛隊 芦屋基地のパイロット訓練生にデザインしてもらったレッドドルフィン(自衛隊の航空機T-4)柄のパッケージもあり、唯一無二の商品なのでギフトにもおすすめです!
また、カップヌードルのデザインも手掛けた漫画家 窪之内英策さん作のラベルもあります。芦屋釜の里をイメージした世界観溢れるラベルを、ぜひお店に見に来てください。
Q 看板から歴史を感じますね!
1894(明治27)年創業なので、今年で130年を迎え、私が5代目です。最初は隣町の「手野」というところで始まり、先代が字を変えて店名を「天野屋」としました。
福岡市で広告系の営業をしていた時に、父から「お前が継がないなら、もう店をたたもうかと思っている」という相談を受け、芦屋町に帰ってきました。こどもの頃から、自分が継ぐだろうと思っていたので、自然な決断でした。前職を活かして上手く経営できるだろうと軽く考えていましたが、引継ぎらしいことはあまりなかったので苦労しました。自分ならではの店作りを始めて30年ほど経ち、お店の商品がほぼ全て、私のセレクトになりました。仕入れの時は、農産加工場や酒蔵など生産者に近いところに足を運んでいます。気になる銘柄があれば、新潟県や関東まで行って、直接依頼をすることもあります。
Q 実際に酒屋を継いでみて、どうでしたか?
受け継いだ時は、酒造業界の変わり目ということもあり、仕入れに苦労しました。人気だからと特定の銘柄飛びつき、仕入れ依頼したら「もっとお酒のこと、業界のことを勉強しなさい」と蔵元から諭されたこともありました。酒蔵と酒屋は信頼関係で成り立っているので、この期間でこれくらい売り切る、という数字を示す必要があるということを、当時は理解できていませんでした。
今はこの業界の厳しさを理解しているつもりです。酒蔵は米農家と契約して日本酒を作るので、売り切らないとなかなか次の銘柄の製造に着手できません。ワインは、原料であるブドウの農家が何年も品種改良を重ね、ワイナリーがその加工を研究した上でやっと生まれる味です。それぞれの商品ができるまでの過程もしっかりと理解して、価値を伝えるのも酒屋の役目だと思っています。
Q 商売の難しさを感じることはありますか?
芦屋町は小さな町なので、この商圏でやっていくには、販売力が必要だと感じてます。当店では、「差別化した商品」をコンセプトに掲げています。意思をもって仕入れたものや珍しい銘柄を並べることで、店全体の魅力度を上げようという戦略です。
Q 酒屋になってよかった思うことは何ですか?
「ここで買った、このお酒がおいしかったんよね」という声をいただくと嬉しいです。また、マリンテラスあしやに宿泊し、夕食で当店のお酒を飲んで気に入り、買いに来る方もいます。わざわざ足を運んでくださり、酒屋冥利に尽きます。
私は毎日飲むくらい好きなので、お酒に関わる仕事ができていることも幸せです。1日がお酒を嗜む時間のためにあるといっても過言ではありません(笑)元気がない日でもお酒を飲むと元気が出てきたり、食欲が回復したりします!また、息子2人を含め家族みんなでお酒を飲む時間は格別です。
Q どんなお客さんが来ますか?
お酒を頻繁に飲む方もいれば、お中元・お歳暮のギフトを買いに来る方もいます。最近は、流行りにのるというより、地酒ファンなどのリピーターを増やそうと頑張っています。今はスーパーやコンビニのお酒の品揃えもいいので、酒屋の存在意義を考えます。お客さんとの会話の中で、どんな時にどんなお酒を求めているのかを汲み取ったり、ギフトの相談に乗ったりできるのが、当店の強みだと思っています。また、ゆっくりとお話ができるので、高齢の方でも安心して選んでいただけます。
Q 吉田さんのモットーは何ですか?
「無事これ名馬なり」ですね。気持ちや調子にできるだけ波を作らず、物事を継続することが、商売には欠かせないと思います。
私は人と直接話して、学ぶことを継続してきました。酒造業界では、自分から変化を知る姿勢がないと出遅れてしまいます。実際に他の酒屋を見に行ってみたところ、日本酒に特化して3銘柄しか扱っていない所もありました。そういった特徴的な店もありますが、そのまま自店に反映させてもうまくいきません。現地で学んだうえで、取り入れる要素と自店ならではの特色を考えながら店作りをしています。商品ラインナップを変えても、それが売れるまでに時間がかかるので、長い目で見た仕入れも重要です。
Q てのやのこれからを、どう考えていますか?
お酒を囲む文化は5年もしないうちに変わっていくので、その変化の波にのっていきたいですね。例えば最近は、飲み会で全員がノンアルコールを頼むこともあるそうです。そういった需要に合わせて、お酒だけでなく山ぶどうや桃・不知火(みかん)の本格ジュースを仕入れています。
変化というと、10年前と比べてSNSの影響力も感じています。発信力のある人がインスタに出した銘柄が、その後すごく売れたりしたんです。当店もインスタグラムで商品を紹介しています。
これからもオリジナリティのある店づくりの中で、取り扱うお酒一つひとつに込められた、作り手と売り手のストーリーを大事にしていきたいです。
Q 芦屋港がこうなったらいいなというイメージはありますか?
温泉出ませんかね~冗談です(笑)でもほんと、温浴施設があったら、寒い冬でも足を運ぶ理由になると思います。夏場も海水浴の後に、熱いお湯に浸かることができるので、家族連れも利用したくなるのではないでしょうか。広大な土地の使い方として1泊2万円くらいの旅館で、質のいいサービスを提供するのもいいですよね!
商工会の役員として、芦屋町の観光やお店がもっと盛り上がるといいな、と思っているので、芦屋港にも期待が高まります。
(文ー上田裕菜)
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