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#5 70年芦屋町を見守ってきたお店で、祖父・父の思いを受け継いでいく大将

芦屋港レジャー港化に向けた町の賑わい創出として、町内事業者一人ひとりに話を聞き、その魅力を発信する「あ!48(あしや)stories」です。まずは、レジャー港化に伴う機運醸成事業に関わった事業者から取材をしていきます。

芦屋町の商店街を歩くと、紺と黄色の暖簾が目に入ります。
暖簾をくぐると、魚がずらりと並んだカウンター越しに大将が迎えてくれます。“味処 大丸” の3代目店主である宮崎大樹(ひろき)さんは、芦屋町で生まれ育った生粋の芦屋っ子です。そんな宮崎さんに、お店の成り立ちや人気のメニューなどをお聞きしました!


味処 大丸
〒807-0122 福岡県遠賀郡芦屋町高浜町4−7
TEL:093-223-0217
営業日:水~月 11:30~14:00、17:00~22:00
    (第2第4水曜日は休み)

Q お魚を扱う飲食店だとお聞きしましたが、どんなメニューを出していますか?

人気商品はイカ月見丼ですね。芦屋町ではイカがとれるので、そのイメージが強く、町外からイカを目当てに来られるお客さんもいます。実は、イカ月見丼の特盛もできますよ。

イカ月見丼 単品¥1,100 (特盛¥1,630)

漁師さんからイカが入った時は、イカの活き造りも提供しています。15時くらいまで漁師さんの戻りを待っているので、夜に出せるかどうか本当にその日勝負という感じです。
イカ月見丼は単品だけでなくセット(¥1,820)でも出しており、サラダ・ゲソ天・茶碗蒸しなどが付きます。5種類の刺身が楽しめる刺身定食も、人気です。

刺身定食 ¥1,980

昼は丼ものがよく出ますが、夜は旬の野菜を使った天ぷらなどの一品料理がよく出ます。 

(2024年7月16日時点のメニュー:季節によって変わります)

Q 宮崎さんが始めたお店ですか?

いえ、私の祖父が戦争から帰ってきて開業しました。祖父は富山県出身なので、芦屋町は縁もゆかりもない土地でしたが、その頃の芦屋町の賑わいを聞きつけて、開業を決めたそうです。
しかし祖父はある日突然、脳梗塞で倒れて半身不随になってしまいました。そこから父が夫婦で継ぎ、私と姉を育てながら店を切り盛りしていました。
  小学生くらいまでは「お寿司屋さんになりたい」と文集に書いていたのですが、高校生になり進路を現実的に考えていく中で、その選択肢は薄れていきました。写真を学びたいと大学入学を機に福岡市に引っ越し、卒業後は絵を売る会社に勤めたのですが、店の50周年のタイミングで父に聞かれました。

「もう一回聞くけど、店を継ぐ気はあるか」

その一言を受けて、企業勤めを続けるか、芦屋町で祖父の代から続く店を継ぐか真剣に考え「継ぐ」という決断をしました。大学まで行かせてくれた両親に恩を返したい、という気持ちもありました。

そこからは他店で修業を積み、1日に魚を20匹捌くこともありました。当時の料理の世界は厳しかったですが、修業をやり遂げたおかげで、多様な魚を捌けるようになりました。そして店へ戻り、父の指導を受けながら店を継ぎました。今は私が魚を扱い、母と妻が野菜などの調理をしています。

Q どんなお客さんが来ますか?

町内の常連さんもいますし、福岡県内で開催された魚フェア「どんぱく 福岡どんぶり博覧会」でイカ月見丼が掲載されたので、県外からも来てくださいます。こちらから広告を打つことはほとんどありませんが、口コミや検索でお客さんが来てくださってありがたいです。
お客さんと何気ない話で盛り上がるときが一番嬉しいです。店をやっていてよかったなと思う瞬間ですね!芦屋町のプールや海、砂像展を訪れた後に偶然うちを見つけて立ち寄ってくれるお客さんもいますね。

Q 芦屋港のレジャー港化について、知っていますか?

はい、私は商工会や観光協会にも顔を出すので、芦屋港の話を耳にすることがあります。普段芦屋港に足を運ぶことはありませんが、今後有効活用してほしいという期待があります。ただ、今のところ知りたい情報が十分に届いていないと感じているので、もっと計画の進捗などを知る機会があると嬉しいです。芦屋町の大きな事業なので、町外でも興味をもっている人はちらほらいますしね。

Q 今後の芦屋港のイメージを教えてください!

宗像市にある道の駅では、近隣で獲れた新鮮な魚が午前中で売り切れるほどの人気と聞いたことがあります。芦屋港の直売施設にもそんなふうに人が集まってくるといいな、と思います。
私みたいに芦屋町に長く住んでいる人と違い、海から遠い地域の方々は魚にとても魅力を感じるそうです。そういう方をターゲットとして、海を見ながら魚を堪能できる場所ができるといいですね。

Q 日々、大切にしていることはありますか?

「来る者拒まず、去る者追わず」ですかね(笑)
広告をたくさん打ったり価格を下げて無理やり集客するのではなく、来てくれたお客さんを心から歓迎して、食事を楽しんでもらう。イカの活き造り目当てのお客さんは、イカがなければ今日はやめておきます、というような方もいます。そういった方でも、来たいと思うタイミングで来ていただければ嬉しい限りです。

Q 店内の雰囲気が素敵ですが、こだわりはありますか?

店の内装は町内の建設会社さんに頼んで改装してもらいました。70年続く店ですが、お客さんに居心地がいいと思ってもらいたいです。1F奥の宴会場の壁には、手前から三日月、半月、満月を入れています。実は店先の暖簾も、 イカ月見丼にちなんで月のデザインです。

また店内には夫婦で気に入った絵を飾っています。休日は美術館めぐりをすることもあり、芸術品に触れることが好きです。美術館は、建物自体が有名な建築家によってデザインされているものもあり、見応えがあります。ゆっくりと絵を眺める時間などが、気分転換になっています。

Q これから挑戦したいことはありますか?

基本的に家族で営業しているので、父や母が高齢になって店に出られなくなったら人手が足りなくなります。今の料理の質を保つのが最優先なので、お客さんを増やしていきたいというよりは、顔の見える範囲で、夫婦でお店を続けることができたら本望です。

お話しする中で、宮崎さんのまっすぐな性格が伝わってきました。一度町を離れて自分のやりたいことを追ったけれど、店を継ぐ決意をして町へ戻った宮崎さんの気持ちの強さを感じました。料理の質を保ち続けること、来てくれるお客さんを大事にすることなど、ゆるぎない思いが、きっと店のファンを増やしているのですね!

おまけ

寿司 中にぎり¥1,650

寿司のセットは、特上・上・中・並や単品があり、その時の気分で注文できるのが嬉しいです。丼ものも種類が豊富で、昼も夜も何度でも食べに行きたくなるお店です!

                          (文ー上田裕菜)

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