たなばたのよるに
すべてのきれいな想い、美しい記憶は
利用される。
そう思っていてもいいと思う。
それでも、手放してはいけんのじゃ。
それこそが、
すべてのきれいな想い、美しい記憶を
彼らが屠る、理由なのだから。
すべてのきれいな想い美しい記憶を
葬いながら、その源泉がそれでも朽ちないことを『寿ぐ』ために進む。
源泉は朽ちない、どれだけこちらが
希望の息をいっそとめてしまおうと願っても。
朝日は昇る、鳥も虫も鳴く。
雲が移ろい、風が樹々を揺らし、
花々がわざとらしくも鮮やかにひらく。
世界はこちらが息をとめることをゆるさない。
だからそれを寿ぐためにゆく。
すべてのきれいな想い美しい記憶が
屠られてもなお生み出し続ける、
次の、きれいな想い美しい記憶を。
たぶんそれが、命の仕事だから。
命のままにいきましょか。
だってそれくらいは、
どれだけ踏みにじられても。
だってそれくらいは、
世界中から無視されても、せめてわたし自身は。
だってそれくらいは、
同じ踏まれたまま生きて死ぬなら。
そんなことを思います。