秋田拠点、政治をもとにジェンダーや生活、取りこぼされがちな声を発信するメディアtrunk(トランク)紹介
トランスの権利に関するイベントに、秋田から、政治をもとにジェンダーや生活というトピックで取りこぼしてしまわれがちな声を発信しているメディア、trunk(トランク)の皆さんにもご協力いただくことになりました。今回プラカード作りを担当してくださります!都心だけでなく地方でもジェンダー平等やトランスの権利を発信することは、誰も取り残さないような活動にとって大事なことです。ということで、trunk(トランク)の皆さんから自己紹介や秋田を拠点とした活動を寄稿していただきました。
trunk(トランク)は秋田を拠点に活動する団体です。政治への疑問を出発点に、ジェンダーや生活などをテーマにしながら、取りこぼしてしまわれがちな声を発信しています。
発信方法は様々で、ラジオ、展覧会、トークイベント、冊子などを使い、他の人の意見を聞ける、自分の意見を言える安全な場所づくりを行っています。
地方には地方特有の「人間関係の濃密さ」があります。それが居心地の良さにつながる場合もありますが、一方で事なかれ主義のような同調圧力を生み出している現状があるように感じます。しかし、秋田で感じる居心地の悪さは、恐らく秋田特有の問題ではないでしょう。私達を取り巻く、居心地の悪さを少しずつ言語化しながら、活動しています。
展覧会
「例えば(天気の話をするように痛みについて話せれば)」
2022.4.29~7.3 9:00~17:30
秋田公立術大学ギャラリーBIYONG POINT
岩瀬海 櫻井莉菜 中島伽耶子
「今日はいい天気ですね」
そんな身近さで、自分の痛みや誰かの痛みについて話せれば、今よりもっとうまく会話ができるかもしれません。傘を用意するように自分の感情を大切にし、明日の天気を気にするように他者の涙を想像できれば。 2022年4月29~7月3日に秋田で行われた展覧会「例えば(天気の話をするように痛みについて話せれば)」は、そんな発想から作られました。
2020年、お茶の水女子大学は日本で初めてトランスジェンダーの女性の入学を開始しました。全ての学生が安心して学ぶためのガイドラインや相談窓口が新たに作られ、複数の大学がこの変革に続きシステムを見直し始めています。このニュースは、全ての女性が平等に教育を受けられるよう願ってきた人々の歓喜の声と共に、トランスジェンダー の人々への反感の声を表面化するきっかけにもなってしまいました。特にインターネット上では、心無い発言や不安を煽るデマが多く見られるようになります。悲しいことに、その中には女性の安全を願い活動し傷ついてきた人々による声も含まれています。トランスジェンダーの男性や、ノンバイナリーの人々ではなく、トランスジェンダー の女性に話題が過度に集中していることからも、多くの人がトランスジェンダー とは何なのかをよく知らないまま話が進んでいるのではないでしょうか。知らないまま生活ができる人々が発する何気ない言葉が、多くの人にナイフとして突き刺さっています。
自分が突き刺したかもしれないナイフについて、自分の無自覚な加害性について、私たちはどのように自覚的になれるでしょうか。日常の中でその行為に気づくことは困難で、認めがたい真実のようにも感じられます。いつの間にか一人ひとりの内に形作られる”普通”は壁のように強固で、誰かを見えなくする存在にもなりますが、思わぬところから崩れてしまうほど実は脆いものかもしれません。 異なる痛みを持つ他者との話し合いの場として、この展覧会は構成されています。
会期中は展覧会会場の机を使いお話し会やLGBTQ勉強会などのイベントを行いました。お話し会では家族や性教育、ハラスメントなどをテーマに自分の経験や痛みについて共有し、自分の加害性や他者の痛みについて話しました。痛みを共有し合うことで、トランスジェンダー の人々を取り巻く問題は、他の多くの人にも共通する問題であることがわかります。私たちは、社会から誰を排除するかではなく、様々な人にとって生きやすい社会システムとはどのような形なのかを、話し合う必要があるのです。
展覧会は終わりましたが、展覧会Webサイトでアーカイブを見ることができます。
trunkでは引き続き「トランスジェンダー のリアル」パネル展やブース作り、今年翻訳された『トランスジェンダー 問題 議論は正義のために』(ショーン・フェイ 著、高井ゆと里訳、2022年明石書店)の勉強会など、秋田を拠点に活動しています。