「タイの暮らしはどうでしたか?」と聞かれても
日本に帰ってきて、たびたび会う人に「タイの暮らしはどうでしたか?」と聞かれることがある。
僕はこの質問をされるたびに、それは「昨日一日はどうでしたか?」と聞かれることと同じで、答えようにも答えられず困った。
タイで働くってどうでしたか?とか、タイ人とコミュニケーションをとるのって難しいですか?とか、タイの生活は大変じゃなかったですか?とか。
細かいことを言えば色々あることはあるけれど、一言で言ってしまえば、「日本の暮らしと同じ」、これに尽きると僕は思っている。
実は僕も、タイに行くまえは、経験者にそういう質問をしていた。そして、タイと日本では違いがあって、日本では経験できないことを経験したり、見たり、聞いたり、言われたり、されたりするんだろうなと想像を膨らませていた。
でも実際に住んでみると、タイと日本で一体なにが違うんだろう、と今は思う。細かい違いはあれど、大枠はタイも日本も同じなのだ。
例えばタイでの人間関係。それは日本のそれと同じで、何もしないでそれを構築できるものではない。
やはり、ちょっとした気遣いの言葉や、誕生日のお祝い、立ち入らない部分の見極め、ありがとうを忘れずに言うことなど、そういう繊細な心のやりとりがあってこそ、良好な関係を築けるもので、それはタイであれ日本であれ同じだ。
逆にそういった気遣いのない毎日を過ごせば、希薄な関係のままで終わるだけ。
タイでの暮らしは、タイならではの特別なコミュニケーション方法が必要だというわけではなくて、日本で当たり前のように人に対して気遣っていたことを、タイでも同じようにするだけでいいのだと気づくまでに、僕はちょっと時間がかかったかもしれない。
例えばおいしそうな果物があったときに、会社のスタッフにこれを買っていったら喜んでくれるかもしれないと思って、買って持っていく。そういう自然な優しい心遣いの流れさえあれば、タイでの暮らしはもう大丈夫。それさえあれば、いつでも暮らせるのだと思う。
「タイの暮らしはどうでしたか?」と聞かれても、僕は「タイの暮らしは特別じゃなくて、日本のそれと同じでしたよ」と答えるだろう。
それはタイ人も日本人も根底に持っているもの、欲しているものが同じだからだと思う。
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