佐々木さんへ
「最近の若いもんは」
最終電車に揺られながら
理不尽な言葉を聞き流している
仕事でクタクタなのに
電車の中でもクタクタになる
なんとなく座った窓際
横には二人のサラリーマン
20代後半くらいの方と50代くらいの方
黒いスーツのふたり組
会話からして上司と部下
どうやら新入社員の話をしている
「佐々木みてると時々キレそうになるもんな」
上司らしき人はいう
「最近の若いものはなんでああなんだろうな」
部下らしき人は苦笑い
私も苦笑いだ
・
佐々木さんのことは知らないけれど
私も佐々木さんと同じ新入社員
あぁ、ハズレの席に座ってしまった
聞きたくなくても聞こえてしまう
まるで私に言われているみたいだ
「俺はね」
俺はね、から始まる昔との比較
最近の若者は、昔はこうだった
って使う人ほんとうにいるんだ
メディアが作り上げた幻かと思っていた
窓を流れる景色を受け流す
薄暗く映る私の顔が
幽霊みたいに消えそうだ
・
佐々木さんのことを
私は全く知らないけれど
佐々木さんがどんな職場で働いているのか
想像するだけで胃が痛む
昔はこうだった?
上司らしき人に言いたい
自分の苦労を誰かの苦労と比べないでほしい
苦労は比べるものではないのでは?
あなたにしか分からない苦労は沢山あるでしょう
それと同じように佐々木さんにしか分からない苦労も
沢山あるのでは?
・
こうして電車に揺られながら
悔しくても痛くても
私はクタクタになりながら出勤と退勤を繰り返す
佐々木さんもこうなのだろうか?
がんばろうね、佐々木さん
さとり世代と言われても
若者と括られても
積極性とかいう言葉で個人を消されても
・
時々は休んでくださいね、佐々木さん
あなたの事は知らないけれど
私はあなたを応援しています
・
追記
新しいことを始めるというのは
どうしても苦悩がある
(もちろん楽しさもある)
苦悩はあるけれど
やるしかないと覚悟を持って
毎日歩いている
働くということがどういうことなのか?
私には分からないけれど
数年後には苦悩も励みになっているはずだ
いつもそうだったのだから