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【38】『ちゃん』の世界

相変わらず、かわいい『ちゃん』は
地球を思う存分楽しんでいた。

コープの注文書を見るのはプロになっていたし。
興味のあるものを頼んでは、それを大喜びで

「これ、作った人天才だね」

と、生産者の方に伝えたいくらい、大絶賛して食べていた。

ある日。

いつものように、アカルンと笑い転げて遊んでいるのを見て

(いいねぇ。『ちゃん』は遊んでばかりで。
ケイは学校行ったり、あっちの世界でも、秘密のお仕事してるっていうのに)
と思って、何気なく聞いてみた

「ね。そういえば、『ちゃん』。
いつも、自分の星では何してるの?」

『ちゃん』は、私のところに来て、ハグしながら答えた。

「え~?いろいろだよ?
毎日、【やりたいこと】をしてる。
やりたいことって1つじゃないでしょ?
だから、いろいろしてる。」

「そっか。じゃぁ。ごはんとかは、あっちのママが作ってくれるの?」

と聞くと

「だから…そういうのも【やりたい人】がするんだ。」
と、椅子に座ってゆっくり話し始めた。

「みんなね。【やりたいこと】をするの。
例えば…『ちゃん』でいうと。
今朝は、みんなに朝ごはんを届けるために、走って回ったんだ。」

「こっちでいうパンみたいなやつ?を
みんなの家の前にあるカゴに、ちゃーんと入るように。
道を走りながら、ぽんぽん投げていくんだ。
『ちゃん』は上手だからね、一回も落としたことないし、きっと1番速いよ♪ 」
と、得意げに言った。

「そのパンは、作りたい人が作ってたパンなんだ。」

「あとはねぇ…たまに鉱物の発掘に行く。
すごく綺麗なのを見つけるのが楽しいし、力仕事も好きだからね。」と。

「え。その鉱物どうするの?」と私。

「え。どーもしないよ?
みんな、見つけたかったり、
掘り出して見てみたいからするんだ。」

「あ。でも、そうやって、掘り出したら…
その石で、アクセサリー作りたいって人が作ったり。
飾りたいって人にあげたり」

とても素敵な世界に見えたけど、
ほんとに、【やりたいこと】をしてるだけでうまくまわるの?と思って

「じゃ。ママなら寝てばかりいるかも。
そういう人もパンもらえる?」

と意地悪な質問をしてみた。

すると、『ちゃん』は、くすくす笑って

「もちろん、もらえるよぉ。ママってかわいいね。
だってパンが作りたくて作った人は、
誰かに食べてもらわなきゃ困るんだから」

「あのね。こっちのお野菜みたいなのを作ってる人もいるんだけど。
【作りたい】んだよ。
どうやったら、どんなのが作れるんだろって。
でも、それを食べてくれる人がいなきゃ、困るでしょ。
だから、ママが食べたらきっと(ありがとう)って言われるよ?」

「ただ、寝てるだけの人なのに?」
と、まだしつこい私に

「(寝ててくれた人)だよ。
みんなやりたいこといーっぱいあるんだから。」

「人の【やりたいこと】を取らずに、寝ててくれて、美味しく食べてくれた人。になる。」

それ…いいなぁと『ちゃん』の星の生活をぼんやりイメージしてたら

「ママ♪ 地球でもね【やりたいこと】をすればいいんだよ。
もう、こんなに素敵なものいっぱいあるんだから。」

と、窓に視線をずらし、外を眺めながら私に言った。


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