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ファンタジーTRPG世界、グローランサの紹介

“双犬”ヴァザタンは、丈の高い草叢に潜み、足を組んで座る祈祷師の脇まで進んで静かに跪いた。見えるのは微笑む祈祷師の白濁した両眼のみであり、彼は無意識のうちに、首にぶら下がる革紐の骨の護符を握りしめた。猟犬は、どちらも茶毛の大きな猛犬で戦えるように仕込まれているが、ヴァザタンの違和感を敏感に感じ取った。まだ若い方の一頭は控えめに鼻を鳴らしたが、ヴァザタンの鋭い身振りに静かになった。
「角の曲がった鹿に不安げに乗った七人に、もう一人、卑しい赤の腐った妖術師野郎だ。皆、嵐の真っただ中だな」
彼の脳内に精霊が囁いた。
「七人はぼんやりしていて、心ここにあらず。緋色の影が他の者を包み込んでいる。奴らと一緒に走っているのは、エルコイ部族の斥候だ。奴の犬は鼻が利かない。そうしておいた」
 バラザール人は、魔精が精霊の領域にいる祈祷師自身と言葉を交わしていることに気付き苛立った。

「隊商はどれくらい後ろにいる?」
「定命の目では見えぬほど遠く」
魔精は答えた。
「我らが7つの魂を襲うちょうどそのとき、お前が鹿を速やかに殺す」
 狩人はうなずき、仲間の方を向いた。老練な襲撃者が二人に、リグタイナの女狩人が一人。全員が継ぎのあたった皮鎧を着込み、弓と石の刃を持つ斧を装備している。
「斥候は逃げ出すだろう。奴はたった一人で逃げ帰る勇気はない。ルナー人共は、奴がこの待ち伏せを手引きしたと思うだろう―そのまま、行かせてやれ。月の奴らの魔術が、騎獣と犬を、それから斥候を殺す」
 ヴァザタンは、顔を妹の方に向けた。
「ヴェナ、二枚羽根を付けている頭分はお前の獲物で、奴と呪い使いが倒れたら、他は慌てふためくはずだ。ここで、ルナー野郎の頭皮を何人分か剥いでやろう。」

 ルナー兵が持つ青銅の刃については言わずにおいた。彼らの持ち物を漁る暇は無いだろうが、剣、短剣、そして交易軍票が入った小袋は簡単に奪える。
 他の者たちは、自分達の呪物と武器を構え、草原を幽霊のように、音もなく散っていった。熟練の狩人は、人間を狩り立てる追手に変わったのである。
 ヴァザタンは、一度祈祷師の方を振り返ると、自らも静かに襲撃に有利な場所を求めて移動した。憑坐、狩人は四人、二頭の軍犬。対するは、不慣れな土地にいる騎乗したルナー兵、八人。青銅の装備で武装しているが、勝ち目は十分にある。

(『The Armies and Enemies of Dragon Pass』、Martin Helsdon、p.72より)

 重厚かつ多様な古代風ファンタジー世界、グローランサ。世界的に人気が高く、グレッグ・スタッフォードが1975年に『White Bear & Red Moon』というボードゲームで初めて世に出し、1978年に「RuneQuest」というTRPGの背景世界として発表して以来、様々な媒体を経ながら40年以上(2022年現在)、ずっと発展し続けています。日本でも、ホビージャパン社が1988年~1994年までルールブックやサプリメントの日本語版を出版し、2001年にアトリエサード社がRuneQuestの後継システム「HeroWars」を出版しましたが、それ以降、日本ではグローランサを日本語で紹介しているのは少数の有志による活動のみです。
 海外では、RuneQuest、HeroWars、HeroQuestとゲームシステムを移りつつ、様々な人の手でグローランサの設定は創作され続けました。そして、2018年にRuneQuestの最新版になるRuneQuest: Roleplaying in Glorantha(RQG)が発売されました。アメリカでは、既にルールブックの他、シナリオ、データ集など8冊のサプリメント(2022年6月現在)が出版されています。
 先に述べたように、日本では2001年以降、商業ベースでグローランサはほとんどサポートされておらず、それ以前に出版された各種出版物の入手も非常に困難な状況です。ただ、このまま日本でグローランサがよく知られないままなのも大変もったいないので、この魅力的な世界観をできる限り簡潔に紹介したいと思います。

グローランサ世界の全体像

〇グローランサの構造

 グローランサの名称は、その名を関する世界の母、女神グローランサの名に由来する。
 人が住む世界は混沌の無限に広がる海に浮かぶ巨大な菱形の大地である。太陽は毎朝、東から昇り、空の天蓋を横切って西に沈む。西に沈んだ太陽は地下(地界)を通って、再び東に至る。地界は死後の世界でもあり、夜の住人たちの故郷でもある。人が目に見、手で触れることできる物理的な世界(地上界)とは別に、神秘的な領域として「精霊界」、そして「神界」と呼ばれる世界がある。

1.グローランサ全体図

 地上には大きく北にジェナーテラ、南にパマールテラと呼ばれる二つの大陸がある。この2つの大陸は帰郷洋と呼ばれる大海により隔てられている。 空を見上げると中空に深紅の月が見える。この赤い月は地球の月と違い大地に沈むことはなく、昼夜を問わず天空の一点に留まり続け、満ち欠けを7日の周期で繰り返す。

〇グローランサの理

 グローランサは神話的古代世界をモチーフとしており、世界の森羅万象の多くに神や神話、伝説が関わっている。草原を渡る風、川を流れる水、雲の彼方の山脈、揺らめく炎、太陽も月も、生も死も、精霊も魔術も、神話時代の出来事や神々の振舞い、英雄の偉業が関係している。定命の者は、時の外側にある神界に接触することで、グローランサの理に介入する機会を得ることができる。何かの目的のために神話的行為や偉業の再現等を通じてグローランサの理に介入しようとする行為をヒーロークエストと呼ぶ。歴史的に著名なヒーロークエストとして、「光持ち帰りし者たちの探索行」「赤の女神の再誕」などがある。

〇グローランサのカルト

 グローランサではカルトという単語が頻出するが、これは特定の神、精霊、悪魔等、超常の存在を信仰するあり方を広く示す言葉であり、一般には信仰者が形成する集団、宗派、教団といった形を取るが、信じる者がただ一人であってもカルトとして成立する場合もある。また、何か具体的な信仰対象を持たない哲学や死生観のような形態(啓発、竜の道等)をとることもある。多神教におけるカルトは特定神を信仰する場合、その神格群の他の神格への信仰も併せ持つのが普通である。カルトにおける信仰者の地位は、平信者、入信者、侍者、司祭・ルーンロードと高くなっていく。ルーンロードとは、そのカルトにおける傑出した武人、あるいは軍事的指導者である。精霊信仰の場合、侍者、司祭の代わりに憑坐、祈祷師が上位の構成員になる。

〇グローランサにおける時間

 グローランサの時間は殺された太陽が復活し、東の空から天空に駆け上ったときから始まる。このときから起算された暦が太陽暦と呼ばれ、世界中で広く使われている。1日は太陽が東から西へ天空を渡る間が昼、地界に沈んだ太陽がグローランサの地下を西から東に横切っている間が夜であり、1週間は7日、季節は8週間で構成される。一年は、海(春)、火(夏)、地(秋)、闇(冬)、嵐の5つの季からなり、嵐の季と海の季の間に、グローランサにおいて最も重要な期間となる14日間の聖祝期がある。このため、グローランサの一年は294日で構成される。
 一部地域では別の数え方で時間を測る暦を持っていることもある。有名なものとして、ルナー帝国が使用する54年周期で進む「ウェイン」がある。

〇グローランサの知的種族

 グローランサには、人間以外にも知性を有する種族がいくつかいる。特に、世界の始まりから存在する種族については古の種族と呼ばれる。グローランサに広く見られる古の種族としてエルフ(アルドリアミ)、ドワーフ(モスタリ)、トロウル(ウズ)、ドラゴニュート、獣人等がいる。
エルフ: 森に住む華奢な体格の人型種族であり、樹木の性質を強く受け継いでいる。ジェナーテラ大陸では、主に針葉樹林に住むグリーンエルフと落葉樹林に住むブラウンエルフをよく見かけることができる。その眼には瞳も白目の部分もない。髪は緑がかった色をしており、植物の葉になっている場合もある。
ドワーフ: 地底に穴を掘って住むずんぐりとした人型種族であり、自らを「世界機械」、モスタルの一部と称する。彼らは定まった役割に従い部品のように生きる限り、寿命で死ぬことはない。長い年月を生きてきたドワーフは途方もない工芸の技を持つ。部外者と接触するドワーフは、一般に「壊れている」ことが多い。
トロウル: かつては地界に住んでいた闇の種族であり、人間よりも優れた体格と腕力を備え、下顎からは巨大な牙が突き出している。ある呪いにより小柄な劣等種、トロウルキンが生まれてくる。野蛮で暴力的だが、利害が一致すれば協力は可能である。
ドラゴニュート: 二足歩行するドラゴンに似た生物。彼らはある決まりに従って輪廻転生を繰り返し、いつかはドラゴンになるという。成長の段階に応じて斥候、戦士、貴族、支配者と形態を変えていく。彼らの考え方は人間には理解不能なことが多い。
獣人: 獣の民とも呼ばれる。セントールやミノタウロス、マンティコアなどだが、比較的一般に遭遇しやすいのはダックとよばれるアヒルの獣人である。非力で臆病だが、機転が利き気位が高い。

ジェナーテラの地理

2.ジェナーテラ大陸全図

 ジェナーテラ大陸は北側を氷河、東西と南側は海に面している。大陸内は険しい山脈や広大な荒野地帯によって幾つかの地域に区分けられている。
フロネラ: 「見えざる神(神とは姿を持たぬただ一つの存在とする一神教のカルト)」を信奉する大国、ロスカルム王国が恐るべき「戦争王国」と戦い続けている。50年ほど前まで約100年続いた「シンディック大封鎖」によって地域が分断・隔絶されていた。
ラリオス: 「見えざる神」の大聖人、マルキオンとこの地に暗黒帝国を築いたアーカットに関するカルトが信仰され都市国家が乱立する。北から東にかけての山地にはオーランスを信仰する蛮族の諸氏族が盤踞している。
セシュネラ: 指導者層は主に「見えざる神」のロカール派と呼ばれる宗派を信仰しており、社会は極めて保守的かつ封建的である。その戒律と習慣に厳密に従えば寿命で死ぬことはないとされ、実際、アラロニートに居住するプリソス人は寿命で死なず、中には曙の時代から生きている者もいる。
ルナー帝国: ペローリアを中心にカルマニア、ダラ・ハッパ、赤の平原、バラザールといった地域にまたがる大帝国である。本国となる中核地方とは別に、アガー、イムサー、ターシュなどの各王国を属領地として支配している。帝国は、グローランサに新しく誕生した赤の女神を崇拝し、女神の御座たる赤の月は中空に常にあって下界を睥睨している。中空に浮かぶ赤の月の力を最大化するため、征服した地域には「昇月の寺院」と呼ばれる建築物を建てる。昇月の寺院を中心に形成されるグローラインの内部では赤の女神の力は常に満月の状態で発揮される。
マリニア: セシュネラの東からクラロレラに至るジェナーテラ大陸の南海岸部を構成する地域。ほとんどは蛮族による部族単位の支配地域が点在するが、エスロリアを中心とした地域は豊穣な穀倉地帯であり、ジェナーテラでも屈指の人口集中地域(マリニアの総人口の半分はエスロリア)である。エスロリアは大地母神アーナールダの一大信仰拠点でもある。ドラゴン・パスも地域としては、このマリニアに含まれる。
ドラゴン・パス: ジェナーテラ大陸のほぼ中央にあり、北のルナー帝国と南のヒョルトランド、エスロリアをつなぐ交通の要衝となる。曙の時代から様々な文明、帝国の発祥地であったが、第二期の終わりにドラゴンキル戦争が起きて人類がこの地から抹殺されてから長く無人の地だった。
 現在は北にルナー帝国の影響を強く受けたターシュ王国、南に嵐の蛮族が建てたサーター王国、西には騎馬の民が治めるグレイズランド、東にはバイソンやインパラを乗りこなす遊牧民が闊歩するプラックスといった地理的にも文化的にも異なる様々な地域や国々で構成されている。
 この地はドラゴンに深い関係がある謎めいた種族、ドラゴニュートの一大居住地があることでも有名である。
ペント: 大草原が広がる騎馬民族の地である。ペントの騎馬民族はイェルムを信仰しており、西ではペローリア、南ではプラックスと歴史的に敵対関係にある。
テシュノス: 大荒野を西に越えた先にあるジェナーテラの西南海岸部である。密林に覆われた多くの島嶼部がある。
クラロレラ: ジェナーテラの極東になり、竜帝が治める「クラロレラ竜帝国」が大陸を支配している。人々は完璧な階級社会の中で、竜帝ゴドゥーニアを国家政策として崇拝する。クラロレラの東の海上には謎めいたヴォルメインの地と東方諸島がある。

RuneQuest Gloranthaにおける冒険の舞台

 ここまで散々にグローランサの紹介をしてきて「なぜ、『冒険の舞台』というタイトルが? グローランサが冒険の舞台ではないの?」という当然の疑問が出てくると思います。グローランサは地球全体の古代神話世界を丸ごと取り込もうとする非常に魅力的な架空世界です。その一方、それは「広くて深すぎる」のです。まず、ジェナーテラとパマールテラという二つの大陸がありますが、パマールテラ大陸は、地形以外の設定情報はほとんどありません。本当に設定が無いのか、ケイオシアムのデザイナー達の頭の中にはあるのか(おそろしいことにあるのではないかと思わせる状況証拠はいくつかあります)、それは分かりませんが、ちょっと遊びにくいですね。無論、地形図だけから一から想像して遊んでも構わないのですがかなり大変です。
 ジェナーテラ大陸に限っても、フロネラ、ラリオス、ルナー帝国、クラロレラなど、どの地域もまるで別のゲームかというぐらいに雰囲気が異なります。グローランサではドラゴン・パスという特に冒険の舞台として様々な設定が公開されている地域があります。この地は古代の幾つかの文明や帝国の発祥に関わっており、謎めいたドラゴニュートの一大居住地でもあります。現代においては、彗星のごとく現れジェナーテラのあらゆる地域に侵略の手を伸ばすルナー帝国の南の最前線であり、嵐と月が中空の玉座を争う神話的闘争の舞台です。英雄戦争はグローランサ全土で起こる一大戦役ですが、このドラゴン・パスで起こる戦いは、ルナー帝国とドラゴン・パスを故郷とする知的種族の行く末を決めるもので様々な切り口(弱者の抵抗、隠された力の探索、混沌の打倒、合戦等)で楽しむことができます。また、英雄戦争に関わらなくても、ファンタジーによくある迷宮探検、モンスター退治、揉め事解決等、ドラゴン・パスを舞台に大抵の遊び方ができます。

 彼らは己が劣勢に気付いており、容赦なく照りつける太陽の前の薄氷の如く盾の壁がみるみる溶け崩れるにつれ、その隊列に動揺が走った。部隊の後列は浮足立ち、前列の優れた武器と鎧を装備した者達は盾をその場に固定して、少しでも時間を稼ごうとした。彼らの武装の多くは赤銅色に輝き、中には灰黒色の鉄の装備、さらにはドワーフが鍛えた鋼の輝きを帯びた武器を持つ者さえいた。彼らの剣と槍の穂先は鋭く、盾には誇らしげな模様が鮮やかに描かれていた。
 彼女は、彼らの勇敢な、しかし無謀な抵抗に賞賛の頷きを返し、刃を交える友として彼らを手招いた。彼女の双刀は風車のように回転し、四方八方で敵を捕捉し、攻撃が始まった。
 舞の如き優雅さと血生臭い殺戮、目にも止まらぬ速さで繰り出される一撃とフェイントにより、彼女の冷たく光る鋼の刃は最初の敵の必死の防御と打撃をすり抜け、鎧の小札と詰物を貫き、その胸部を深々と切り裂いた。男は自分が負った致命傷が信じられないように目を見開き前のめりに倒れたが、その時には、既に彼女の剣は自由になっており、次の犠牲者を求めていた。彼女の細身の得物は死の円を描き、繰り出される剣も槍も難なく避け、背後から振り降ろされた斧を後ろ手に頭上で受けた。彼女の返す一閃に戦士は斧を手から弾き飛ばされ、さらに次の一閃で顔貌を薙ぎ払われ鮮血に塗れた。次の敵は、盾で彼女の打撃を防ぎつつ、その盾を低く構えて彼女に叩きつけた。彼女は、その様に唇に優しい笑みを浮かべたが、自らは敵の一撃を横に躱し、彼女の刃は相手の重い青銅の喉当ての上を滑って頸部を薙いだ。
 彼女は、自らの抜き身の刃の如く、磨かれた乳白色の月光石でできた半月形の首飾りとガードルの他は何も身に着けず、赤褐色の髪には銀の月光石があしらわれた髪飾りで留められ、側頭部の髪はしっかりと編み込まれている。後ろ髪は紅玉とガーネットで飾られた金の鎖で束ねられていて、ぼんやりとしたオーラを発していた。オーラが放つ霞がかった薄紅い光の中を、彼女はしなやかな身のこなしで男達の必死の猛攻を躱し続けた。突き出される槍衾の中で身体を捻ると、深紅に染まった彼女の肌から血が飛散して、あたかも大理石のような模様を描いた。彼女が振るう双刀は敵の喉を貫き、腱を断ち切って動脈を抉り、切り裂いた。戦士の隊列は、彼女の猛攻の前に千々に四散し、絶望に駆られた戦士達はそれでも個々に円陣を組んで戦った。しかし、いつしか、彼女と相対して戦う戦士だけになり、やがて戦場に静寂が戻った。彼女は、もはや自分と今、相手をしている敵以外に立っている者がだれもいないことに気が付いた。
 敵の一人が彼女の連撃を辛くも凌ぎ、彼女の振るった剣先は彼の傷だらけの盾の鉄の縁に当たって火花を散らした。相手の反撃を鮮やかに避けながらも、彼女はやや心外そうに紅玉のような唇を尖らせ、その隙間からは白い光沢のある鎌のような歯が見えた。あたかも舞姫のような繊細さと早さで、敵には目も止まらぬテンポで攻撃と後退を繰り返すことで、彼女は蛇のように素早く敵の防御の致命的な隙を見出して、立ち向かってきた敵を速やかに鏖殺した。
 もはや、彼女に剣を向けれられる者は誰もいなかった。砕けた盾、裂かれた手甲や兜が散乱し、断ち割られた頭部からは骨とヘナで赤く染められた髪が露出している。その女戦士はもはや瀕死であり、そのことは自分でも悟っていた。もはや、虫の息になりつつも、それでも自らを死に追いやった女に悪罵を投げつけた。
「シェペルカート……血濡れの売女が! いずれ、神々が……お前を……地獄に叩き込むだろう……」
「あら、それはもう経験済みなの」

3.帝国の公式英雄、”剃刀”ジャ・イール

“剃刀”ジャ・イールは、跪き、その血塗れでザクロのように割れた額にキスをして答えた。
「じゃあ、貴女も良い旅を」
彼女はそう言うと、月刀から粘った深紅の雫を垂らしながら立ち上がった。

(『The Armies and Enemies of Dragon Pass』、p.26より)

〇ドラゴン・パスの地理

 ドラゴン・パスは大きく北からターシュ、グレイズランド、サーター、エスロリア、ヒョルトランド、プラックスという地域に大別することができる。東岩の森山脈、嵐の山脈、摩天峰といった雄大な山脈に諸所区切られており、山脈と山脈の間は丘陵や森林がかなりの部分を占める。

4.ドラゴン・パス全図

ターシュ: ドラゴン・パスの北方、肥沃な平野部と丘陵を擁する地域である。かつて、大地母神とその眷属を崇める王朝が、ルナー帝国の南進に対して頑強に抵抗していたが、1490年、ルナーの女英雄、“技芸の女”ホン・イールが王国を乗っ取り、それ以来、帝国の最も豊かな属領地として急速に文明化した。このルナー化したターシュ王国のことをルナー・ターシュと呼び、大地母神を崇め未だルナー帝国に抵抗を続ける勢力を古ターシュと呼ぶ。

5.ダンストップからバグノットへと抜ける交易路

グレイズランド: 太陽を崇め馬を信仰する遊牧の民が住まう土地。彼らの支配者は「羽馬の女王」と呼ばれ、彼女との婚姻はドラゴン・パスにおいては重大な政治的意義がある。この地には他に獣人が住み着く獣の谷、恐るべき悪魔の馬を駆る黒騎兵団が治める黒馬領といった特異な地域がある。

6.黒馬領にて

サーター: 英雄サーターにより建国された嵐の神々を信仰する人々の王国。国土の大半は山岳と丘陵地帯であり、農耕と牧畜が生活の中心。交通の要点であり、この地域を押さえることはドラゴン・パスの十字路に立つに等しい。1602年、王国は一度、ルナー帝国に滅ぼされ傀儡の王が擁立されたが蛮族の抵抗はやまず、1625年、誰も見たことがない真のドラゴンが現れルナー帝国属領地の高官、軍、そして親ルナー派の人々を貪り食い(「真竜の目覚め」事件)、帝国の南方支配は瓦解した。嵐の蛮族は再び立ち上がり王国を取り戻したのである。

7.王の道より雷鳴の丘を望む

〇サーターの主な部族

コリマー部族: 「クィヴィンの心臓」、サーターでも最も歴史があり名の知れた部族。サーター王国滅亡後、ルナーに対する叛乱に加担したため、大きく力を失った。その後に族長に立ったブラックマーはルナーに与したが、後にベティ・レイカに放逐される。
シンシナ部族: 勇猛な部族として知られ、特にテルモリ(人狼)族との戦いに多くの勝利を収めたため「狼殺し」とも呼ばれる。
マラニ部族: フマクトを主に信仰する「剣の一党」。だが、周辺の氏族は彼らのことを「悪たれ」と呼ぶことの方が多い。向こう見ずで喧嘩っ早いと思われているが、実際には彼らが最初に選ぶ手段が喧嘩だというだけのことである。
クルブレア部族: 「先陣切る者達」、彼らの戦場における働きには定評がある。ルナーへの叛乱に加担したことで、土地や勢力が半減した。それでも、彼らは誇り高く好戦的である。族長ラヌフルは一時、ルナーに膝を屈したが、陰では反ルナーの活動に与していた。
ケルドン部族: 「クィヴィンの貴衆」、サーター王国滅亡後におきた叛乱の中心となった部族。乱破れて族長のカリル・スターブロウは亡命したが部族民は今も心中、彼女を長と仰いでいる。鹿角を兜にあしらった精鋭の戦士達が名高い。

エスロリア: ジェナーテラでも屈指の豊かさを誇り、首都ノチェットはグローランサでも最大級の都市の一つである。大地母神アーナールダの一大信仰拠点であり、社会はかなり女権が強く、支配者として女王が立てられている。サーターと比べると気質として、闘争より交渉や謀略を好む。また開放的で遠国との交易も盛んである。かつては、エスロリアを含む広大な地域は聖王国と呼ばれる国家に支配されており、その王であるベリンターは神王と呼ばれ、転生を繰り返して王国を支配し続けていたが1616年の転生の儀に何者かの襲撃を受けてその魂魄は消滅した。そして、1624年には聖王国の首都「驚異の都」は”狂戦士”ハレックが率いる悪名高き大海賊団「海の狼」の襲撃と掠奪を受け灰燼と化した。

ヒョルトランド: 嵐の山脈の西に広がる山地と丘陵部が広がる地域。サーター王国と祖を同じくする嵐の蛮族の諸部族が割拠する。彼らの王、ブライアン城塞都市ホワイトウォールに籠り、サーター王国の残党を引き入れてルナー帝国と戦い続けた。1621年にホワイトウォールは陥落するが、それはブライアン王の計略であり、ブライアン王はドラゴン・パス全域でルナー帝国に対するゲリラ戦を繰り広げる。

プラックス: 大荒野の西につながるサバンナ地帯である。南北に流れるゾーラ・フェル川沿いに農耕民が入植しているが、平地部の多くを闊歩するのはバイソン、インパラ、セーブル・アンテロープ等に騎乗する遊牧民である。ゾーラ・フェル川の中流に位置するプラックス唯一の都市パヴィスには、巨人のゆりかごに関わる伝説があり、1621年、実際に流れてきた巨人のゆりかごを巡ってルナー帝国と反帝国の勢力で戦いが起こった。

8.ゾーラ・フェル川中流域にて

ドラゴン・パスの著名人

〇ターシュ

モイラデス: 1579年~1610年までターシュの王位にあった。羽馬の女王「涙知らずの君」ヴィルカラ・トールと結婚したので、ターシュ王であると同時に3人目のドラゴン・パス王でもある。1610年にルナーの半神“剃刀”ジャ・イールがターシュを訪れた際、「憂き世の業から解放」され王位を退いた。
ファランドロス: 1610年に28歳でターシュの玉座を父モイラデスから継ぎ、ターシュ王となる。ルナー帝国の中心部で教育を受け、ルナー風の生き方を身に着けている。即位以来、帝国の文化・慣習を精力的にターシュ国内に持ち込んでいる。
赤の皇帝: ルナー帝国を支配する不死の皇帝。たとえ倒れても、帝国のどこかに転生し復活する。復活した皇帝は「仮面」と呼ばれ、その時の帝国が置かれた状況に合わせて、姿形を変える。現在の「仮面」は“白銀帝”アージェンテウス
“剃刀”ジャ・イール: ルナー帝国の公式英雄、「月の息子の第4の霊感」。帝国の名門イール・アリアッシュ家において慎重に計算された数世代にわたる交配の結果生み落とされた生れながらの英雄。幾多の戦役で人間離れした戦功を挙げており、すでに不老不死でもある。
“博識”ファザール: 属領地ターシュの豪族出身でありながら帝国属領地司令官まで上り詰めた名将。ジェナーテラ大陸でも屈指の軍才の持ち主であり、サーター王国攻略、そして王国滅亡後の諸部族の反乱鎮圧において比類なき軍功をあげた。1621年、部下である“聡明なる”タティウスとの政争に破れ属領地司令官の座を退く。しかし、ターシュ王ファランドロスは王国に隠棲した彼を召喚し、王国軍の指揮権を委ねた。

9.“博識”ファザール

・1620年頃のルナー帝国属領地軍の幕僚達

ゴーディウス・シルヴェルス: 属領地軍参謀、ターシュの小都市の出身だが、諸部族との交渉を一手に引き受ける。「ファザールの取り外し可能な右腕」と呼ばれる。
ホラティオ・ホスティリウス: 親衛隊長、ファザールの甥であり、彼の身を護る熱狂的な兵士達を指揮する。
ジョームズ・ウルフ: 野戦指揮官、テルモリ(人狼族)の叛乱を打ち破り功績を挙げた。
“頬髯”ジョラード: 野戦指揮官、ファザール麾下のうちに最も軍事的才能に秀でる。
“聡明なる”タティウス: 属領地軍参謀、ルナー中核州より派遣された帝国の大貴族。ルナー野戦魔術院の校長であり、私的に強力な魔術師の部隊を運用している。1621年にホワイトウォールを陥落させると同時に政治的策動によりファザールを失脚に追い込み、属領地軍司令官の座に着く。サーターの地を帝国の完全な支配下に置くべく、赤の女神の力を導く「昇月の寺院」の建設を強引に推し進めるが、1625年、その落成式典においてカリル・スターブロウが目覚めさせた巨大な真のドラゴンに貪り食われて死亡する。

〇グレイズランド

羽馬の女王: グレイズランドの騎馬民を統べる女王。彼女との婚姻がドラゴン・パスの王たる条件の一つである。1610年から1625年の女王は次の通り。ミリナ(1610-1623)、ヴィステラ(1623-1625)、インカーネ(1625-)、
鉄の蹄: 「獣の谷」の王とされるセントール。現身は既に地上界を去って久しい半神だが、谷の危機において「獣の寺院」で召喚されることがある。
エシルリスト卿: 500年程前に「白騎兵団」と呼ばれる傭兵部隊を率いていたが、故あって部下達と共に地界へと進攻した。彼が次に歴史の表舞台に立つのは1506年、ルナー帝国軍が壊滅の危機に瀕した「恐怖の夜」である。帝国軍に与した彼とその部下は皆、鈎爪と牙を持つ漆黒の悪魔の馬にまたがっており、「黒騎兵団」と呼ばれた。以後、幾度か軍功を挙げたエシルリストは、赤の皇帝からこのグレイズランドに自らの所領を授けられた。
“死人使い”ディレクティ: ワームの友邦帝国の魔術師。ドラゴンキル戦争を生と死の境目に逃れることで生き延び、アップランドを湿原に変えて、自らの領域とした。今では湿原はアンデッドの巣窟となっている。

〇サーター

カリル・スターブロウ: サーター王家の血を引くケルドン部族の女族長。サーター王国滅亡後も帝国の支配に抵抗し、1613年にサーター全土を巻き込んだ大反乱の指導者となった。ルナー貴族に指揮されたサーター駐屯軍を壊滅させたが、属領地軍の新司令官となった“博識”ファザールは、速やかに軍を再編し反乱軍を追い詰めた。彼女は亡命を余儀なくされたが、引き続きサーター領内の反ルナーの抵抗活動を指導し続けた。
 1625年、ファザールを失脚させ司令官の座に着いたタティウスが、サーター領内に完成させた昇月の寺院の式典に属領地軍、帝国高官、親ルナー派サーター人の主だった者を集めた機会を狙い、真のドラゴンを召喚して彼らをその餌食とした((真竜の目覚め)。カリルは、ドラゴン・パスにおける帝国の支配が崩壊した好機を逃さず、かつての王都ボルドホームを奪還し、サーター王国復興を成し遂げた。

10.カリル女王、「女王達の戦い」に先立つ軍議にて

超王: ドラゴニュート達の支配者。ドラゴンズ・アイを根拠とし、ドラゴン・パスのドラゴニュートは彼に絶対的に服従している。その感情や動機はほとんど理解不能であり、交渉は非常に大きな危険を伴う。
大ドワーフ: ドワーフ鉱山の主。ドワーフ(モスタリ)にしては極めて珍しく、他種族との取引・交渉が可能である。
“焔の魔女”クラブスパイダー: 非常に強力な力を持つトロウルの魔女。火と闇の力を自在に操り、黒竜を従わせるという。

〇エスロリア

サマスティナ: エスロリアの高貴な出自の少女。1622年に親ルナー派の当時の女王を打倒して、自らエスロリアの女王となる。その後の度重なるルナーやその同盟者の進攻に対してエスロリアを守り抜き、1624年、狂戦士ハレックやアーグラスと同盟し、ペンネル浅瀬の戦いで帝国軍を撃破する。

〇プラックス

“ちびの”ソル・イール: ルナー帝国より派遣されたプラックス最大の都市、新パヴィスを治める総督。蛮族に対しても比較的宥和的な姿勢だったが1621年にゾーラ・フェル川を下ってきた巨人のゆりかごを叛徒に奪われたことで更迭された。後任の総督、ハルシオン・ヴァル・エンコースは抑圧と搾取を専らにした。
アーグラス: “白き牡牛”の二つ名で呼ばれることもあり、また“鋭き剣の”ガーラスは彼の偽名とも言われる。サーター王家の血筋を引いており、1621年に巨人のゆりかごをルナーの手から守り抜き狂戦士ハレックの知己を得た。彼は、1625年、再びパヴィスに帰還し市をルナーの支配から解放する。

グローランサの神話と歴史

〇創世

 世界の創世は多くのカルトの原典において、同じように語られる。混沌の虚空に漂う世界の卵に力が満ちて、第一存在が孵った。これが両性具有にして永遠なるドラゴンの誕生である。そして、さらに第一存在から宇宙全体と第二存在と呼ばれる「造物主」と「守護者」が生まれた。そして、彼らから「第三存在」、すなわち“大女神”グローランサが誕生した。これが世界の始まりである。

〇天宮の神々

 女神グローランサから、世界の礎となる力と要素が生まれた。彼らは「天宮の神々」と呼ばれる。グローランサ世界の太陽イェルムや嵐の神々の父祖となる嵐神ウーマスは「天宮の神々」の一柱である。これらの神々は、自らの力を集めて世界の中心に「無欠の宮」を築いた。この宮殿は外からは巨大な山にも見えることから「スパイク(くさび)」とも呼ばれる。このスパイクにおいて、多くの種族・動物が生みだされた。人間の最初の一人もこの頃に造られ、「定命の祖父」あるいは「老いたる人」と呼ばれる。このころは、神も人も同じ世界に生きていた。
 嵐神ウーマスは、広い大空と豊かな大地の間に生まれた子供だが父と母の間を引き裂き己の居場所を作り、諍いを繰り返した。彼は、多くの子供をなし、嵐の神々となった。
 天宮の神々は火の神々の筆頭、宇宙の皇帝たる太陽神イェルムに率いられていた。しかし、火の神々の支配に従わぬ嵐の神々とは事毎に衝突した。

〇嵐の神々の神話による「死」の始まり

 昔、世界には死も暴力もなかった。神も生きものも際限なく増え、世界に十分な空きが無くなってしまうと、皆がお互いに争い出した。そのようなころ、ユールマルという取るに足らない神が、偶々「死」を拾いあげ、そしてこれも偶々通りがかった「定命の祖父」―このときはまだ「生命の祖父」だった―に使ったところ、「定命の祖父」は最初に「死んだ」人間となり、以後、人は死すべき定めとなった。
 ユールマルが拾った「死」は、嵐の神々の一人であるフマクトの手に渡り、更に大勢のものの手によって振るわれることになった。
 今は、「死」を佩く誉れのある神はフマクトである。

〇嵐の神々達

 嵐神ウーマスには、ウロックス(ストーム・ブル)、フマクト、オーランス、その他大勢の息子たちがいる。ウーマスは、神や神よりも恐ろしいものと際限なく戦いを繰り広げ、傷つき疲れ切ってしまった。彼は、これ以上、頭目を続けることはできないと思ったので、まだ年若だったが思慮深く思いやりのあるオーランスを次の頭目とした。

〇イェルムとオーランスの腕くらべ

 太陽神イェルムが天空に君臨することに納得がいかなかったオーランスは、あるとき、自分にも世を治める力があることを証すために、イェルムに腕くらべを挑んだ。踊り、魔法、音楽の腕くらべの軍配はイェルムの方に上がった。最後の武器の腕くらべ、イェルムは大弓を引き絞り、放った矢は世界の果てまで飛んでいった。オーランスは、自分の方が上であることを示すため、フマクトから贈られた「死」を抜いてイェルムに振るった。イェルムは泣き叫びながら地の底(地界)へと堕ちて行った。イェルムに腕くらべで勝ったオーランスは、この後、世界を治めることになった。
 太陽が地界に堕ちてきたので、地界で暮らしていた闇の神々とその眷族はその熱と光に耐え切れず地上に追いやられた。

〇小暗黒、または嵐の時代

 太陽を失った世界を嵐の王オーランスが治めた時代を小暗黒、または嵐の時代と呼ぶ。オーランスは慈愛溢れる大地母神アーナールダを娶り、神々の王として逆らうものを全て打ち倒して地上を治めた。しかし、太陽を失い、地界から溢れたトロウルやさらに凶悪な闇の怪物が暴れ狂う地上では人も獣も徐々に痩せ衰え始めた。
 そして、遂に現世の裂け目から混沌が世界へと侵入してきた。オーランスの兄神、ラグナグラーが、セッドとマリアという二柱の女神と企み混沌をグローランサに呼び込んだのだ。この神々は不浄の三神と呼ばれるようになった。

〇大暗黒

 不浄の三神は、この世に混沌を招き入れ、混沌の王ワクボスを生み出した。ワクボスに率いられた混沌と破壊の神々は世界を滅ぼそうと押し寄せた。オーランスが率いる嵐の軍勢が混沌にぶつかったが、混沌の軍勢は嵐の神々を呑み込んでしまい、オーランスでさえ命からがら逃げ出した。闇の大母神、カイガー・リートールは彼女の子供であるトロウル達と戦ったが、混沌を打ち倒すことは叶わなかった。混沌の軍勢は、神々の住まう天宮、スパイクさえ粉々に破壊し、多くの神々が虚無に呑まれ滅んだ。グローランサのあらゆるものが滅びに瀕していた。

〇光持ち帰りし者の探索行

 オーランスは、混沌により滅びに瀕する世界を見て、この間違いを正すことを誓って旅立った。彼は旅を続けるうち、知恵の神ランカー・マイ、交易の神イサリーズ、癒しの女神チャラーナ・アローイ、道化ユールマル、肉体を持つ男、謎めいたギーナ・ジャーを仲間にし、冥界へと降りていった。冥界の広間においてオーランスは自らが殺したイェルムと対面し、己の非を詫びた。オーランスとイェルムが言葉を交わしたことで、その場に新たなる女神が生まれた。彼女は、アラクニー・ソラーラといい、全ての神々に「宇宙の盟約」を結ばせた。この盟約によって神々は地上から去り、それぞれが行ってきたことに応じて世界を分け保つことになった。アラクニー・ソラーラは盟約の力で魔法の網を編み、その網を振るってワクボスを絡めとり、押さえ込んで吸い尽した。首魁を失った混沌の軍勢は神々と定命の者達の反撃の前に四散した。
 イェルムは甦り、天空へと昇った。アラクニー・ソラーラが生み出した「時」が世界に解き放たれた。グローランサの最初の夜明けとともに新しい時代が始まった。

〇第一期(曙の時代)

 大暗黒が終わり、イェルムが空に昇ったことで曙の時代が始まる。定命の者達は、このときからほぼ全世界的に暦を刻み始めた。ジェナーテラ大陸では、その中央に位置するドラゴン・パスにおいてゼイヤラン文明が発祥し、その勢力を広げていった。人間と古の種族―エルフ、ドワーフ、トロウル、ドラゴニュート、黄金輪の踊り手(今では絶滅している)―が協力し、その中枢を世界評議会と称した。彼らは、北方の騎馬民族と戦いを始め、名を第二評議会と改め、ドラゴン・パスのはるか東、ドラストールに中心を移した。この地で神代の力を秘めた遺物が次々と発見されたからである。
 そのような遺物の一つ、偽宇宙卵を手中に収めたことで、第二評議会は神を創造する試みに着手する。374年、彼らは遂に完全なるもの、オセンタルカ、後に“白き光”ナイサロールと呼ばれる人工の神を創り上げた。ナイサロールが統治した国は「黄金帝国」と呼ばれ、彼が説く信仰、「啓発」は人々に素晴らしき叡智を授けるかに思えた。
 しかし、ナイサロールが放つ光輝の陰で腐敗はゆっくりと進行し、啓発の教えを伝導する宣教師(その布教方法から「謎かけ師」と呼ばれた)は、その教えに従わない者達に恐るべき呪いを振りまいた。また、その信者の中には善悪の垣根を見失いその力を乱用する者も現れ始めた。トロウル達は、ナイサロールの創造の途中からその企てに叛旗を翻し、女神カイガー・リートールはナイサロールに立ち向かったが打ち負かされ、呪われたアダマンタイトの爪によって深い傷を負った。以後、力強きトロウルから虚弱で取るに足らない個体、トロウルキンが生まれることになった。
 410年頃、西方の騎士、アーカットはナイサロールとその教えの欺瞞に気付き、彼の神を闇の偽りの仮面、「グバージ(裏切り者の意)」と呼び敢然と戦いを挑んだ。戦火はジェナーテラ大陸全土に広がりいつ果てるともしれなかったが、アーカットは自ら人間であることを捨てトロウルとなり、猛り狂うトロウルの軍を率いてナイサロールの黄金帝国の中心、ドラストールに攻め込んだ。450年、黄金帝国の首都ドカットにそびえ立つ「正義の塔」の頂上でアーカットとナイサロールは一騎打ちに至り、崩れ去った塔の廃墟から姿を現したのはアーカットのみであったとされている。ドラストールはアーカットとその軍によって徹底的に破壊されたが、後に恐るべき混沌の怪物の巣窟と化す。

11.人を捨てし英雄と昏き光の神の邂逅、「正義の塔」の頂上にて

 アーカットは西方にトロウルの教えを奉じる暗黒帝国を建国するが、長くは続かなかった。アーカットとその事績の多くは消え去ったが、神と世界の秘密に触れ恐るべき力を手にすることができるヒーロークエストの秘密を見出したのがアーカットであり、それ以来、ヒーロークエストはグローランサの運命の鍵を握る重大な要素であり続けている。

〇第二期(帝国の時代)

 グバージ戦争の後、古の種族がその数を減じる一方で、人間の勢力はますます増大し、グローランサの至る所に人間の帝国が興った。ジェナーテラ大陸の内陸部にはドラゴンの秘密を手にした者達によるワームの友邦帝国が勢力を広げた。彼らは「竜族の友」と名乗り周辺の国々と激しく争った。海においてはジェナーテラ大陸からみて東南にあるジルステラの島々に「神知者」と呼ばれる学者達の帝国があった。彼らはヒーロークエストの秘密を解き明かし、不可能を可能にする魔術を使用することができた。彼らは人魚の王国の叛乱に際して、水を燃やして叛徒共を討ち滅ぼした。また、ドワーフが崇めるモスタルを模した機械仕掛けの神、ジストルを創り上げ、その勢力を世界中に広めようとした。
 どちらの帝国も、あり得ざる力を握った人間の傲慢がまさに極まったが、その反動もまた激烈だった。
 ワームの友邦帝国においては、ドラゴンとドラゴニュート達が突如、人間を裏切り、帝国の指導者たちを一夜にして抹殺してしまった。人間達はドラゴニュートへの復讐に燃え、何万もの軍勢(この軍勢は「無敵の黄金の群」と呼ばれた)がドラゴン共を討ち滅ぼそうとドラゴン・パスに集結した。1120年、ここで起きた戦いを「ドラゴンキル戦争」と呼ぶ。このキルは、ドラゴンがされたことではなく、したことである。ドラゴン・パスに世界中からドラゴンやワームが大勢やって来て、集まった軍勢を悉く貪り食った。さらにドラゴン達は、ドラゴン・パスの周辺の国々に飛来し、破壊と虐殺の限りを尽くした。ドラゴンは、この後、再び眠りについたが、この地は数世紀の後に人が入植するまで、長い期間、無人のままだった。
 ジルステラ帝国は、神知者達が押さえつけ好き勝手に弄りまわした自然と魔法の諸力が、彼らの枷を外して荒れ狂った。機械の神ジストルは、「宇宙の盟約」を破り世界を危機に陥れる存在とされ、古き神々は神知者に刃向かう者達に力を貸した。凄まじい戦いの果てにジストルと彼が支配する機械都市は滅ぼされた。途方もない高波が帝国の各地を襲い、広大な地域が海底に没した。怯えた神知者達が世界のどこに逃れようとも見つけ出され、彼ら自身と彼らに加担した者全てが根絶やしにされた。
 第二期は、ジルステラの大陸が破壊され、ドラゴンキル戦争が勃発する1100年頃に終わったと一般に考えられている。この頃、時期を同じくしてパマールテラ全土を支配したエルフによる統一帝国も衰退、滅亡している。

〇第三期(近代~今へ)

 大帝国が滅びた後、数世紀の間、魔術の探求は忘却されるか敬遠され、邪悪な行為と見なされることも度々あった。人も古の種族も自分達の小さい共同体に立て籠もり、保守的な風潮が広がっていった。
 第二期の終わり、920年に海洋が突如、不可視の壁で閉ざされ海を行く船という船が一掃された。これを「大閉鎖」の呪いといい、ジルステラを海洋に沈めた大津波の原因でもある。大閉鎖は第二期が終わった後も続き、1580年に“水夫”ドーマルが呪いを打ち破る儀式を発見するまで、海上交通は閉ざされたままだった。
 大陸でも同様の天変地異が発生した。1499年、ジェナーテラ大陸の北西、フロネラの地では、一人の英雄が祖国の破滅を救わんとこの地の交流を司る神「銀足の神」を殺し、忌まわしい儀式を執り行った(彼が何故このような行為に及んだかは謎だ)。彼が、地上界に戻ってみると、フロネラの各地は灰色の霧を思わす謎の帳により寸断されていた。この現象は、シンディック大封鎖と呼ばれ、フロネラはそれ以外の地域と隔絶されるとともにフロネラの各地も寸断された。この「大封鎖」は1580年頃まで続く。

〇ルナー帝国

 ドラゴン・パスの北に広がるペローリア地方は、ジェナーテラの中原とも言うべき肥沃な広野地帯でありダラ・ハッパ文明と多くの都市国家が栄えた。しかし、第二期の破滅(ドラゴンキル戦争に最大の軍勢を派遣したのはペローリアの諸都市だ)を経て、多くの都市が停滞の中にあった。ペローリアの西方は強大な軍事帝国、カルマニアが都市国家を隷属の鎖につなぎ、東にあるペントの大草原からは精強な遊牧民族が侵入と掠奪を繰り返していた。
 1220年、ペローリアの小都市トーランで、赤の女神の再誕として知られるある魔術的儀式が執り行われた。この儀式に関わった7人の者達は、後に「七母神」として知られる。
“つなぎとめるもの”女王ディゾーラ。
“糸紡ぐ老魔女”魔女ジャーカリール。トロウルの魔道士。
“若き生命”ティーロ・ノーリ。この少女は、儀式のために、トーランの路地を行きかう大勢の中から無作為に選ばれた
“褐色の男”イリピー・オントール。知識の神のカルトから追放された賢者
“雄羊にして戦士”ヤーナファル・ターニルズ。
“探究者の橋渡し”ダンファイブ・ザーロン。南から来て、儀式において最も危険な役割を担うことを願い出た残忍な無法者。
“待つ女”。いずこより来たのか知られてない、神秘的で無名の人物。
 彼らの目的は女神の創造だったが、その動機は不明である。だが、その動機が何であれ、その結果は永続的なものであり、素晴らしいものだった。
 赤の女神は大暗黒の時に喪われた神の一柱であり、この儀式によって人間の少女として転生したのだ。彼女は年を経るにつれ力を増し、信奉者は増えていった。トーランは女神の支持を内外に宣言し、近郊の諸都市も後に続いた。女神が最初に獲得した地は「原聖地(最初に祝福された地)」と名付けられ、自らの支配に服さなかった近隣の公国群への侵略を開始した。1228年、女神の王国、女王国は大規模な遊牧民、少なくとも4つの部族から派遣された大軍勢による侵略に直面した。この戦いは七馬頭の戦いと呼ばれ、戦に参加した3つの遊牧部族が滅ぼされ、生き残ったシャー・ウン族は女神に忠誠を誓って自ら隷属した。これにより東の国境は安定し、女神は人の身を捨て神となるため、地上界から姿を消した。
 女神が姿を消して2年後、カルマニアはダラ・ハッパの諸都市を再び己の支配下に戻すため本格的な攻勢を開始した。七母神の一人、ヤーナファル・ターニルズは、姿を消した女神を探すため異界へと旅立った。しかし、戦士である彼を抜きにした残りの七母神では原聖地を守り切ることは不可能だった。1232年、カルマニアの重装騎士を中心とした凄まじい攻撃の前にルナーの野戦軍は危機に瀕し、七母神のうちの2人までもが殺害された。
 ルナー軍がもはや全滅を避けられぬと思われたそのとき、赤の女神が戦場に現れた。彼女は小山ほどもある巨大な緋色のコウモリ―クリムゾン・バットに騎乗し戦場を駆け巡った。このような混沌の怪物を定命の者が支配して、戦に使ったことなど一度も無く、クリムゾン・バットが振り撒く死と恐怖の前に、この混沌の影響から心身を守れなかった多くの者は敵味方を問わず狂気の淵に落ちていった。
 かろうじて戦場から逃走したカルマニア人は、邪悪なるルナーについての報せを持ち帰り、カルマニア帝国は、自らも戦備を整えるとともに、忌まわしく邪悪なる力の誇示に対して、それに抗する同盟者を求めた。この戦争に対しこれまで中立を保っていた国々は、ルナー女王国と戦うカルマニア人たちの側に立って参戦した。後に、この戦いは混沌会戦(後に第一次混沌会戦)と呼ばれ、圧倒的なルナーの勝利は戦いによる損失を再建する一時的な平和と赤の女神の力による栄光への確信をもたらした。
 1241年、カルマニア帝国は、首都に攻め寄せるルナー軍に対して闇の戦神フマクトを顕現させ決戦を挑んだ。ルナーは四本の光の矢を放って暗黒の神々の力を打ち破り、カルマニアの帝都ドールベリーは劫火に沈んだ。
 古の神々は地上界に介入できない「宇宙の盟約」を結んでいるが、混沌に対しては別である。古の神々は、半神達が住まう「青の城」を赤の女神との決戦の場に選んだ。2年に及ぶ超自然的な戦いの果てに古の神々は赤の女神に膝を屈し、女神がこの世界に存在することを認めざるを得なくなった。

12.月の誕生と赤の女神の昇天

 この戦いの後、1247年、赤の女神は原聖地において、周囲の地面と共に空に昇り、赤の月となった。彼女の遺した国家は、彼女の不死の息子「赤の皇帝」が統治するルナー帝国となった。この赤の女神の教えに基づく中央集権的な神政国家は、今までのグローランサには無かった革新的な社会を構築し、市民に華美と贅沢、自由を与えた。赤の女神は、かつてナイサロールが広めた啓発の教えの正しく理解し、混沌はただの力でありそれ自体は悪でも敵でもないことを知った。だから、帝国は正しく管理され制御された混沌を利用すること厭うことはない。古の神々や精霊の制約に縛られることもない。また、魔術師や司祭を集めて訓練し、戦争において組織的に軍を支援できるようにしたことは絶大な効果をもたらした。いまだ、他の国は剣も魔法も少数の力ある個人の力に頼っており、魔法による支援も限られたものだったからである。
 帝国は、一時的な混乱の時期もあったが、周辺の地域を属領地として勢力圏に加えながら南方に拡大していった。多くの人々は帝国が与える知識や富、自由に惹かれてその支配を受け入れたが、混沌の匂いを漂わす帝国に膝を屈さぬ者達もいた。その中でも、特に帝国に頑強に抵抗したのはドラゴンキル戦争の後、ドラゴン・パスの丘陵部に再び入植した蛮族達、嵐の王オーランスを崇拝する者達である。ルナー帝国が南に兵を進めた時、ドラゴン・パスの蛮族たちは英雄サーターによって建国されたサーター王国に結集し20年余りの間、頑強に抵抗した。
 ルナー帝国は、1602年、遂にサーター王国の首都ボルドホームを陥落させ、ドラゴン・パスを支配下に置くかに見えた。しかし、かつて太陽を屠り混沌を薙ぎ払ったオーランスの風は決して止みはしなかった。
 神々すら見通せぬ大いなる力の激突、英雄戦争が間近に迫っていたのだ……。

グローランサの神々(一部)

〇火と天空の神々

イェルム: 太陽神にして皇帝。「中天の火」の神であり、一日に誕生と死を繰り返す。
ロウドリル: イェルムの兄弟。「百姓と火山の父」にして光なき熱の神。
チャラーナ・アローイ: 癒し手。「光持ち帰りし者達」の一柱にして、癒しの女神。
ロカーノウス: 馬車と交易の神。「輪」の神でもあり、金輪貨(ホイール)を創造した。
イェルマリオ: 開拓と傭兵の神、熱なき光。イェルムの息子とされるが大暗黒の際、仇敵オーランスを助けた。
ハイアロール: 騎馬の神。かつては人の英雄だったが、初めて「馬」と同盟を結んだ。
ユーレリア: あらゆる愛(エロス、アガペー、肉欲、プラトニックなど)の女神

〇嵐の神々

オーランス: 嵐の主にして神々の王。「光持ち帰りし者達」の指導者であり、混沌に与する赤の女神の敵対者である。冒険者、雷鳴の轟き、支配者等、様々な相を持つ。
ランカー・マイ: 知識の神。「法の守護者」「神々の書記官」であり、「光持ち帰りし者達」の一柱である。
イサリーズ: 交易と伝達の神。「光持ち帰りし者達」の一柱であり、このカルトの言語である「交易語」は世界中で話されている。
フマクト: 死と戦の神。無慈悲な存在とされる一方、真実と誓約を司る神でもある。
ユールマル: トリックスター。だが「光持ち帰りし者達」の一柱である。
ストーム・ブル: 狂戦士の神。混沌を倒す者であり、大暗黒において悪魔を食い止めアダマントの石塊の下に封じ込めた。

〇大地の神々

アーナールダ: 大地の母。大地母神であり、多くの神々の妻である。
マーラン・ゴア: 大地を揺るがすもの。アーナールダの姉妹だが、神々の戦いにおいて恐れと畏怖の証であるゴアの称号を得た。
バービスタ―・ゴア: 無慈悲にして残酷な復讐の女神。大地を穢し、女性に仇なす者を殺戮する。
ヴォーリア: 春の乙女。彼女の訪れは新年の開始を告げる。

〇地界の夜の神々

カイガー・リートール: トロウルの母。この世界のあらゆるトロウル族の始祖であり、彼らのほとんどから崇拝されている。その信仰は単純で原始的、野蛮で残酷だが、トロウル達の気性にはよく適っている。
ゾラーク・ゾラーン: トロウルの軍神、憎悪の王。暗黒の時代、イェルマリオを打ち倒して火の力を奪った。
アーガン・アガー: 地上の闇の神、使者にして通訳。トロウルの商人や他種族との交渉にあたる者の神でもあり、また、トロウルキンによく信仰される。

〇ルナーの神々

赤の女神: 太古に一度失われた神だが、7人の背教者によって人の子として復活した。幾多の戦いを経て再び神となる。中空にある赤の月が彼女の御座であり、外部からは7日間の周期で死と復活(満ち欠け)を繰り返す。女神の信者は彼女をセデーニアと呼び、彼女に抗する嵐の蛮族はシェペルカート(毒の血)と呼ぶ。
七母神: 赤の女神を復活に導いた7人の英雄。帝国の社会システムの一部を成すと共に、他の神々を信仰しているものを改宗させる窓口としても機能する。
エティリーズ: かつては人間の娘だったが赤の女神の言葉を理解し、その教えを悟り、働きを認められて、商人と伝令の女神となった。
ナイサロール: 造られし光の神。赤の女神に世界の秘密、啓発を教えた。彼の神を混沌の裏切り者、「グバージ」と呼ぶ者も多い。

〇混沌の神々

ワクボス: この世界に侵入した混沌の「魔」。この世界を滅ぼす絶対的悪。
ラグナグラー: オーランスの兄であるが、マリア、セッドと企み混沌をグローランサに招き入れた。そのため、この三神を「不浄の三神」と呼ぶ。大暗黒の最中、ストーム・ブルに討たれた。
マリア: 病の母、「不浄の三神」の一柱。様々な混沌の怪物が彼女を崇拝することで、病への耐性を得る。また、業病に苦しむ人間には彼女を信仰して苦しみから逃れようとする者もいる。
セッド: 強姦の女神、「不浄の三神」の一柱。かつて、ラグナグラーに穢されたがそのまま彼の神の妻となり、混沌の侵入を企てた。彼女とラグナグラーは多くの子を為したがそれが世界の災厄たる混沌の獣人、ブルーである。
サナター: 混沌の知識神。彼の信徒は知識を学ぶのではなく盗む。知恵ある者の頭部を切り取り、書物から文字を奪う。
ヴィーヴァモート: 吸血鬼の神。空虚な永遠のために魂を捧げた不死者達に崇拝される。
クラーシト: 飢えと策謀の混沌神。彼女の仔は大地を穿ち、その信者は社会や組織に腐敗と裏切りの穴を開ける。
ポーチャンゴ: 変異の混沌神。全ての善きものを悪しきものに変える力を持つ宇宙の癌。
悪鬼: ワクボスの残滓であり、オーガの混沌神。


コンテンツ内の著作権について(以下、敬称略)
本文: 葦ノ葉
 『The Armies and Enemies of Dragon Pass』の引用: Martin Helsdon
The Armies and Enemies of Dragon Passはグローランサの様々な戦士、軍事組織、戦いに関する文化・技術等を取り扱った一級資料です。

冒頭及び5,6,7,8,9,10のイラスト: 加賀ヒロツグ。BOOTHにも出品されています。

11のイラスト: Y`ha(@furafura89)
主にクトゥルフ神話TRPGのイラストを手掛けておられます。

1,2,4の地図: Argan Argar Atlas(図内地名表記は葦ノ葉)より。
© 2017 Chaosium Inc.

3,12のイラスト: それぞれAntonia Doncheva,Jakob Rebelka
Chaosium IncのFan Material Policyに基づく使用。

Special Thanks: まりおん(@yelmalio),Rms(@acurms)


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