ドラストールの住人達(前編) エルフ、ブルー
人間に加えて、ドラストールには4つの知的種族がいる。アルドリアミ、ブルー、蜘蛛の民、テルモリである。毒茨のアルドリアミと修羅の森のアルドリアミは全く異なる文化を持っている。ハーピーやスコーピオンマンのような他のあまり重要ではない知的種族もドラストールにいるし、分類不能な無数の独特な個体や種族、文化も存在するが、この項では最も重要かつ多数の種族を取り扱う。
修羅の森のエルフ
共通の知識:修羅の森のエルフは、略奪と殺人の文化を有するブラウンエルフの氏族であり、《炎月》により焼き払われたリストの大森林より駆逐されたエルフの子孫である。彼らの人間に対する苦い憎しみは、尽きることはない。彼らは自分達の領域に入った人間を全て拷問して殺害する。自分達の隣人に睨みを効かすために、彼らは毒茨のエルフ、ブルー、テルモリ、そしてドラストールの他の全ての種族を襲撃し、広範囲を破壊し、警告として自分たちの境界線に沿って拷問された捕虜の哀れな死体を吊るす。我々が彼らについて僅かにも知ることは、ラルツァカークが彼の同盟者、復讐と自衛のために修羅の森のエルフを襲撃する毒茨のエルフ、から入手したものである。隠された知識:修羅の森のエルフの一般的な戦士は、普通のブラウンエルフと変わりなく見えるし、外見からアルドリアミの崇拝と伝統が見て取れる。他方、修羅の森のエルフの戦士のうち、支配階級に属するものは、混沌の神カージョルクの入信者である。彼らは普通のアルドリアミに見えるが、自らに特殊ルーン呪文をかけると、その呪文の効果が続く間は、恐ろしい混沌の性質を顕わにする。カージョルキと呼ばれる、彼らは、崇拝の儀式や競技として血生臭い生贄を捧げたり拷問を行ったりする肉食動物である。カージョルキは、普通のブラウンエルフのように冬季の休眠期間に入ることはないように見える。そして、グリーンエルフではなく彼らが森を守護している。
修羅の森のエルフの最大の居留地である七つが丘は、ロックウッド山脈の麓にある二重柵の大規模な砦である。その敷地は、上空からは密集した植生によって隠蔽されており、知覚を持つ古代の樹木からなる小さな木立によって内部が区切られている。修羅の森の全周は、このような知覚を持つ木々によって護られており、その枝の下を抜けて通過する侵入者の存在は、漏れなく通報されている。
毒茨のエルフ
共通の知識:毒茨のエルフは、ブラウンエルフであり、文化的に部外者に極度の恐怖を持っている。彼らのドラストールにおける根城は、時の始まる前から途切れることなく拡大を続けている。彼らは、部外者との接触を許さない。背教者は投獄されるか、自害を強要される。エルフの友ではない者や「根なし」のエルフから我々が、毒茨のエルフについて僅かに知り得る情報は、憶測や推論、古代の伝説などである。彼らは、ナイサロールを最初に崇拝した者達の中にに含まれており、また、グバージ戦争の最初の犠牲者にも含まれている。かつて、テルモリと誼を結んでいたが、今は違う。毒茨のエルフは、ラルツァカークとの間に彼の侵略に対する援助を約束する見返りに、毒茨の森の安全について保証するという協定を結んでいる。この協定の中で、ルナーの交易探検隊が、年に2回、オールドウルフ砦から憤怒の城砦の間については毒茨の森を通過することを許可している。交易探検隊は、エルフの保護の下、定められた経路に沿って旅し、途中で宿営することもできるが、経路から外れたり、エルフと会話したり取引をしたりすることは許されない。この取決めに違反した場合の罰は、その旅人とエルフ、双方の死である。
ラルツァカークとの協定は、テルモリや修羅の森のエルフの侵入から毒茨の森を守るものではなく、また、ラルツァカークの統制に入っていない野生のブルー達が森を荒らすのを止めるものでもない。交易キャラバンに従事する旅人達からは、交易路に沿った毒茨の森の南部において、ブルー及び修羅の森のエルフの仕業によると思われる、広範囲の焼け跡があることを報告している。
隠された知識:第一期において、ドワーフが、森の北西の隅にある頂上が平らで全周を切り立った崖に囲まれた孤立した台地に、毒茨のエルフの城砦を建造した。第一期の伝承では、この城塞、ブラッドストーン砦は、台地の裾から掘削された頂上へと続く一本の峠道によってのみ近づくことが可能である。台地を囲む崖は、登攀などとても無理で、空中からの接近については、エルフと盟を結んだ飛行能力を持つ怪物によって阻まれるとある。
毒茨のエルフは、彼らの作成する毒茨の矢がよく知られている。毒の効き目の強さは様々だが、大抵、極めて強力で致命的である。その作成法の秘密は、外部には知られていない。
毒茨の矢
毒茨の矢は、毒塗りの矢の形状のままで育つ、特殊な魔力を付与した毒茨の灌木より作られる。毒の効力は、魔力を付与してから、季節毎に1POTづつ増強されていく。毒茨の生態や、矢の毒の効き目が、どこまで強くなるのかについては固く秘されているが、毒の強さが10POT以上の矢は別に珍しくない。
毒茨の矢は、鏃や矢柄などが、光沢のある深紅色の樹皮で覆われているので、普通の矢と見分けることができる。邪悪なまでに鋭く尖った鏃の油を塗ったように濡れている表面の部分に毒性がある。
ブルー
共通の知識:ブルーは邪悪であり、グローランサ中で恐れられ憎まれている混沌の生物である。ブルーは、あらゆる種類の動物を(時としては植物も鉱物も)孕ませることで繁殖する。彼らは疫病を媒介し、下劣な混沌の神々を崇拝し、最も残酷、強大で恐ろしい主人にのみ服従する。彼らには、固有の文化というものは欠落しており、多くは魔法を習得していて、ほとんどは死体等から剥ぎ取った武器や鎧を装備している。
隠された知識:ドラストールのブルーの集団については、大きく4つに区分できる。野生のブルー、独立した部族のブルー、ラルツァカークの部族のブルー、ラルツァカークの私兵や側近として仕えているブルーである。
野生のブルー
ドラストールの野生のブルーは、この環境の中で大いに栄えているということを除いては、数えきれない程いて、多産であるという点ではグローランサの他の地域の野生のブルーと変わりない。獲物(すなわち、歩いたり、這ったり、飛び跳ねたりするもの)は豊富にいる。彼らの宿主となり得る野生動物の種類が豊富なことから、他では見られないような特異な形態を生みだしている。
野生のブルーは、狼よりも狡猾であり、はるかに狂暴である。飢えと獣欲が彼らを駆り立てている。大抵、小さく弱く、そして、しばしばグロテスクで無様だが、それは見境のない繁殖の結果を示している。動物の群れと同じように、最も強く、最も狡猾な個体がリーダーとなる。
野生のブルーは、普通は魔法を習得していないが、それは誰も彼らに魔法を教えようとはしないからである。彼らが生きていく上で望むことは、生き続けるために必要な食い物となる生き物を見つけること、自分が繁殖するのに必要な強さを獲得することだけであり、あわよくば、住み潜むのに適当な穴蔵を見つけたり、どこかの独立部族の一員になったり、ラルツァカークに召し抱えられたりしないかと考えている。
独立部族のブルー
多くの部族、その中でも幾つかの悪名高い部族は、主に東部ドラストールで勢力を伸ばしている。彼らは、他の野生のブルーのほとんどより組織的であり、指揮系統を作って、初歩的な軍事戦術を採用し、自分達より危険とみた敵からは速やかに撤退する。名のしれられている部族の指導者は以下のような者達がいる。
・ハック:ハックは、以前は、見張り、剣闘士、傭兵であったりしたことがあり、ブラス山の生まれである。一度、ラルツァカークの軍勢に所属したこともある。彼は、不服従と叛逆の罪状により処刑されそうになったことから、逃亡者となった。彼が率いるブルーの群れによる襲撃の数々が、ビリニによる混沌掃討の軍事行動の引き金となった。
・二つ頭:噂によると、全員の血が繋がっており、皆、似通っていて協力し合うという。双頭の両方が鹿の変種だが、手足や胴体は別の動物の場合もある。彼らには、戦利品を共有する大勢の劣等なブルーの配下がいる。
・“複製者”ヴォスタサドール:この恐ろしいものは、殺すことがかなわず、手足を切断して無力化するぐらいしか術がない。バラバラにされた肉体が再び結合したなら、この生物は甦り、襲撃の再開のために自らに忠実なブルーを再度、招集する。
ラルツァカークの部族のブルー
ラルツァカークの部族のブルーは、文明化されたブルーの標準とでもいうべきものである。彼らは、粗末ながらも自らの住居を建築し、狩猟や襲撃はラルツァカークにより指定された地域に限っている。部族間の内紛(例えば、限定的な襲撃など)を禁止されている。ラルツァカークは、自分が率いる部族の族長について、豊富な贈物と彼らの地位を簒奪者から守ってやることにより、その忠誠心を繋ぎとめている。年に一回、部族の主は、ラルツァカークにより憤怒の城砦に招集される。その場で、ラルツァカークは部族評議会を開き、また併せて大規模な狩猟や戦争ながらの模擬演習を行う。この時期に、ラルツァカークの軍は、部族に対して組織的な戦争のやり方や攻囲戦術の訓練を行う。また、この機会を活かして、砦の建設、限定的な軍事作戦、偵察などを行うこともある。
ラルツァカークの私兵や側近として仕えているブルー
ラルツァカークの私兵や側近として仕えているブルーは、グローランサにおいて最も進んだ軍事化を成し遂げた蛮族文化と同等程度に洗練されている。多くのブルーが狩人か、先進的な軍事訓練を受けた牧童である。大半は戦士だが、専門の職人や司祭も一部いる。
後編は、蜘蛛の民及びテルモリです。
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