クトゥルフ神話TRPGシナリオ「カタシロ」リプレイ(ネタバレ有)

 これは、クトゥルフ神話RPG(以下、CoC)のシナリオ「カタシロ」(作:ディズム氏)のリプレイ(実際のセッションのやり取りを文字で起こしたもの)です。今回、オンラインのテキストセッションで遊んだもののログを利用しています。
 舞台化等、色々、話題の多い作品であり興味がありましたが、実際に遊べる機会に接したので、自分なりにどう参加するを考えてみました。継続探索者がお勧めとあったので、CoCのキャンペーン「ウィンチェスター黙示録」に参加したPCを使用することにしました。参加前の予想としては、おそらく、PCの人格や価値観、考え方を問うような展開があるのだろうと考え、その辺が確立しているPCで参加するのが最も楽しめるだろうというところからの選択です。

PC:ミットフォード・四方田(以下、ヨモダ)

ミットフォード・四方田

(Picrew:麗しい男を作るVOL2(作:asaki氏)使用)

 T都の探偵。大手の探偵事務所、ピンカートン探偵社に所属している。柔和な外見と物静かな口調だが、その裏で相手の心理を読み隠された情報を獲得する術に長ける。また、目端も利くので彼に隠し事をするのは極めて困難である。強面感は全くないが、実は古柔術四方田流の使い手(組み付き80%)であり、1対1なら相手を組み伏せて武器を取り上げたり、絞めて気絶させるということができる。
 同性愛者であり、Y々木のマンションで恋人(黒人の青年:ダミアン・クレイ)と同棲している。

【台詞】:
「ミットフォード・四方田、ヨモダで結構です。ファーストネームで呼んでいただいてもいいですが、セカンドネームとファーストネームを続けて呼ぶのは止めていただきたい。」
「いえ、他愛もない質問ですよ。……おや、顔色が悪いですね。」
「おっと、下手に動かないでください。この態勢で無理をすると上腕骨が折れますよ……。」

KP:神話生物火源(莎紅邏) @Cthulhusakura
PL:葦ノ葉 @AshinohaTW

以下、ネタバレなので注意

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※元々は7版用のシナリオですが6版に対応できるようにしています。また、いくつかのギミックについてRebuildに基づくKPの改変が入っています。

※ ( )内は、セッション中のKP及びPLの心中になります。

これは貴方の物語だ

さぁ、話をしよう。

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Call of Cthulhu

シナリオ名:「カタシロ」

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カタシロ_Day1

医者  : 「気が付いたかね」

KP   : そんな声で貴方は目を覚ます

ヨモダ : 「……ふむ」

ヨモダ : 寝ていますか?

KP   : そうですね、寝ています。

KP   : 貴方が戸惑いながらあたりを見渡せば、そこは病室のベッドの上のようだった。

ヨモダ : (ここら辺は導入の通りか)なぜ、ここで寝ているのか考えます。

KP   : はい。

KP   : では、アイデアをどうぞ

ヨモダ : CC<=(80) アイデア (1D100<=80) > 67 > 成功

ヨモダ : 成功ですね。

KP   : 偉いですね!

KP   : 強い光を浴びた記憶がある。だがそれ以前の記憶は無い。

KP   : 常識などの、社会的に生きるための記憶以外、全て忘れていることに気が付く。貴方自身に関する記憶が抜け落ちているようだ。

ヨモダ : では、今が何年何月とかは分かる?

KP  : そうですね、分かると思います。今日は2021年05月30日です。

医者  : 「ここがどこだか、わかるかな?」

ヨモダ : 分かりますか?>ここの具体的な場所

KP  : 病院であることはわかりますが、どこの病院かまではわかりません。

ヨモダ : 「……病院……ですか?」

医者  : 「そう、病院。もう少し正確に言うと手術室だ」

ヨモダ : 辺りに目を走らせますが、何か奇異なものは目に付きますか?

KP  : そうですね、では、ワゴンの上に置かれているものなら見えますね。

ヨモダ : 「手術室? ……私は大怪我でもしたのですか?」

KP  : 【ワゴン】ベッドのそばにある台の上には、器具が並べられている。刃物の類は無い。

KP  : 知識、医学、またはふさわしい技能を振ることができます

ヨモダ : では、知識で。

KP  : どうぞ

ヨモダ : CC<=(85) 知識 (1D100<=85) > 62 > 成功

KP  : 【ワゴン 知識】器具はどれも手術で使うようなものではなく工具だということがわかる。

ヨモダ : こ、工具!?(これはちょっと予想外、どういうことだ?)

医者  : 「君は雷に打たれてここに来た」

医者  : 「覚えはあるかな?」

ヨモダ : 思い出そうとしますが、思い出せますか?

KP  : 強い光を浴びた記憶はあるのでそれかもしれない、とは思いますね。

ヨモダ : 「何か、強い光を見たような気はしますね。それですか?」

医者  : 「あぁ、そうかもしれないね」

ヨモダ : (これは突っ込んでいいところかしら?)ちなみに、医者はそんな仮面を実際に付けているという認識で良いですか(笑)?

KP    : はい、仮面はつけてます。

ヨモダ : 医者の仮面は中世のペスト医師の鳥マスクという認識であってますか?

KP  : そうですね、ペストマスク、と、言うよりは、何か動物を模した骨の仮面のようですね。

ヨモダ : なんとなく、器具と合わせてもまともな医師に思えないのだが、何か他に変わったところ、気付いた点はありますか?

KP  : そこまで話していて貴方は気が付きます。体が重く思うように動きません。記憶を掘り起こそうとしたときにも頭痛がします。

ヨモダ : 自分の身体を確認してみますが、火傷とかを負っていますか?

KP  : そうですね、特に怪我はないです。

医者  : 「随分と自分の体が気になるようだね?調子がまだ悪いかな?」

ヨモダ : 「ええ。特に目立った外傷はないようなのですが、思ったように動きませんね。あと、ひどく頭が痛い……」

医者  : 「ふむ、体自体に異常は見られなかった。悪いところは全て治したつもりだ。雷に打たれたことで、記憶障害を起こしているのかもしれないね。自分の名前は憶えているかな?」

ヨモダ : 覚えていますか?>自分の名前

KP  : いえ、現在の状態では、その他のことで不審に思うようなことはないです。
自分の名前は覚えてるかもしれませんね。

ヨモダ : 「四方田……そう、ヨモダ、ですね」

医者  : 「四方田くん。ふむ、その他で覚えていることはあるかな?」

ヨモダ : 何か、ありますか?>名前以外で覚えていること

KP  : 何か一つ、覚えていることが、あります。それは自由に決めていただいて構いません。

ヨモダ : なるほど。では、誰か大事な人がいたことは覚えていることにします。

KP  : はい

ヨモダ : 「……多分、親しい誰かがいたと思うのですがね。貴方が、私の個人情報についてご存知なら教えて欲しい」

医者  : 「ふむ、親しい人がいた。いや、すまないね、君に関するものは全て燃えてしまっていて私もあまり詳しくはないんだ。」

ヨモダ : 「燃えた? どういうことです?」 ぎょっとして尋ねます。

医者  : 「先ほども言ったろう?雷に打たれた、と。その際に引火したみたいでね。君の命は助かったし、治療も施したが、君の荷物に関しては燃えてしまったんだ」

ヨモダ : 「じゃあ、私は名無しの権兵衛で、この病院に担ぎ込まれた、というわけですか?」

医者  : 「そうなるな」

ヨモダ : 「……分かりました。じゃあ、この病院、そして貴方の名前を教えてもらいたい」

ヨモダ : 「自分の身元が分からんのでは、医療費も払えませんよ(苦笑)」

KP  : (病院名、どうしようかな…普通の名前にしておこう)

医者  : 「私は相田ユウリだ。ここは相田病院。」

ヨモダ : 「相田病院……」 (意外と普通)何か思い出しますか?

KP  : いえ、特には思い出しませんね。

医者  : 「身元は、そうだね、記憶が戻れば自分が何者かも思い出せるだろう。」

ヨモダ : じゃあ、身体の力を抜いて天井を見上げます。

ヨモダ : 「ところで、病室に移したりはしないんですか?」

医者  : 「体も本調子ではなさそうだし、そうだな、三日。三日間ここで入院してもらう。三日後には体調も万全に、記憶も思い出すだろう。」

医者  : 「そのことなんだが、すまないが、今病室に空きがないんだ。」

医者  : 「だから、この手術室で三日間過ごしてもらいたい」

ヨモダ : 困ったことになったという表情を浮かべて、かぶりを振ります。

ヨモダ : 「……それは仕方ありませんね」

医者  : 「すまないね。では、早速だが、記憶を取り戻すのに、話をしようじゃないか」

ヨモダ : 「話、ですか?」 (な、何だ?)怪訝そうな顔をします。

医者  : 「そう、怪訝な顔をしないでくれ。会話をすることで、何か思い出すことがあるかもしれない。思い出さなくても、君がどういう人間なのかがわかる。自分を知るというのも記憶を取り戻すきっかけになるかもしれないだろう?」

ヨモダ : 職業癖で彼の口調や仕草を伺いますが、不審な点はありますか?

KP  : (疑いかけるのいいなぁ)いえ、特に不審な点はないですね

ヨモダ : 「……わかりました。確かに僅かでも記憶を取り戻すきっかけになるならお願いします」

医者  : 「あぁ、ありがとう。」

医者  : 「話題についてだが、」

医者  : 「君は、『囚人のジレンマ』というゲーム理論を知っているかな、つまり、覚えているだろうか?」

ヨモダ : 「ああ。ゲーム理論の有名な論理モデルですね」

KP  : (ですよね!流石だ......)

医者  : 「おや、知っている。説明はできるかな?」

ヨモダ : 「『各人の合理的な選択が、必ずしも全体を幸福にするわけではない』ということを分かりやすい寓話にしたものですね」

ヨモダ : 「両方とも黙秘を貫くのが全体としては最善なのですが、個人としては相手を裏切り自白するのが最善になるという相手を信じられない囚人のジレンマ」

医者  : 「そう、その通り。では、実際に今ここにいる、私と君でこの理論に乗っ取って、私たちの答えを出してみよう。
 君と私で、何か共犯を企てたとしよう。勿論仮だが。お互い別の部屋で取り調べを受け、話し合うこともできない状態で、君と私は黙秘を選ぶのか、それとも自白をするのか。」

ヨモダ : 「自白ですよ。私は、貴方がどのような人間なのか、何も知らない」

ヨモダ : 「黙秘を選ぶのは、相手に対して信頼があるときだけです」

KP  : (即答、そりゃそう。しかも仮面付けてて怪しいのに信用しろって方が無理だ。さて、どう続けようかな)

医者  : 「なるほど、信頼関係があれば黙秘を選ぶ。まぁ、確かに私と君は初対面だ。信頼関係など皆無だろう。しかし、では、仮に信頼していた相手でも黙秘ではなく自白を選ぶ可能性もある。人間腹の底では何を考えているのかまではわからないからね。それでも君は、黙秘を選ぶのかな?」

ヨモダ : 「信頼のおける相手なら、黙秘を選ぶのが全体最適、ですからね」

ヨモダ : 「裏切られたのなら、私の見る目がなかった、ということなのでしょう」

KP  : (いいなぁ、はっきりと答えるのすごいぽいなぁ)

医者  : 「なるほど、なるほど、君は自分の損得をはっきりと知覚した上で物事の判断ができるようだね」

ヨモダ : 「どうでしょうね。囚人のジレンマは、そのような結論がでるように仕組まれたモデルですよ。ただ、まあ判断ができるという評価はありがたくいただいておきます」

医者  : 「あぁ、さて、そろそろ私は他の外来の患者も診なくてはならない」

ヨモダ : 「ああ。時間をとっていただきありがとうございます」

KP  : では、医者は「構わないさ」と言葉を残し、手術室から去っていく。

KP  : 貴方は今、手術室のベッドの上にいる。体が重い。手の届く範囲であれば、気になったものを調べることができそうだ。

探索可能箇所
・ベッドサイドモニター

ヨモダ : 立ち上がったりするのは無理そう、という認識でよいですか?

KP  : ですね。体が重くて立ち上がれそうにないです。

ヨモダ : 了解です。では、ベッドサイドモニターを調べましょう。

KP  : はい

KP  : 【ベッドサイドモニター】
 ベッドのそばには、患者の心拍数や血圧などの異常を教えてくれる装置がある。このような機器が出されているということは、非常に危ない状況だったのだろうか。97と98という数字が画面に表示されている。その数字が何を意味するのかはわからない。

ヨモダ : (血圧? 脈拍? でも、あんまりこんな数字はないなあ。)

KP  : 目星や医学、その他ふさわしいと思う技能が振れます。

ヨモダ : では目星を。

KP  : どうぞ

ヨモダ : CC<=(80) 目星 (1D100<=80) > 63 > 成功

KP  : 【ベッドサイドモニター 目星】この装置は現状、自分自身に繋がっていないということがわかる。

ヨモダ : お?(何じゃそりゃ?)

ヨモダ: 何に繋がっているのか確認します。

KP  : どこにも繋がっていないですね。

ヨモダ : 「伊達モニターかよ……」

KP  : そうしてあたりを見ていると、

??  : 「…誰かいるの?」

ヨモダ :

KP  : と、隣の部屋から声が聞こえてきます

ヨモダ : 「ああ、失礼。驚かせてしまいましたか」(これが囚人、か……?)

KP  : 声は幼い男の子のようです。

??  : 「ううん! 驚いてないよ! なんだか、お話してるなぁって思って、声をかけてみたんだ!」

ヨモダ : 「君は? 入院患者なのかい?」

??  : 「うん、事故に遭ってね、それ以来ここでずっと入院してるんだ」

ヨモダ : 「そうか。怪我がひどいのかい?」

??  : 「うん、ちょっとね」

??  : 「ねぇねぇ、ずっと病室にいてつまらないんだ、何か面白い話してほしいな! 外の話とか!」

ヨモダ : 何か話せそうな話題を覚えていますか?

KP  : そうですね、知識的に知っていることは話せると思います。思い出話、とかはできなさそうですね。

ヨモダ : なるほど。では、最近のドラマや映画の話でもしておきます。ストーリーぐらいは覚えているでしょう。

KP  : はい、

??  : 「へぇ、今ってそんな映画とかやってるんだ!見てみたいなぁ」

??  : 「お父さんに言えば聞かせてくれるくらいはしてくれるかなぁ」

ヨモダ : 「ああ。元気になったら一緒に見に行くといいでしょう」

KP  : (どう話を持っていこうかな…)

??  : 「うん!きっとお父さんが元気にしてくれるからそうなったら見に行くよ!」

ヨモダ : 「? お父さんが元気にしてくれる、というのは、もしかして君は相田先生の息子なのかな?」 

??  : 「おとうさんを知ってるの?あ、でもそっか、ここにいるってことはお父さんの患者さんだよね、、」

??  : 「そういえば、お兄さんはどうしてここにいるの?」

ヨモダ : 「雷に打たれたらしくてね」

??  : 「雷!?大丈夫なの??」

ヨモダ : 「とりあえず生きてますよ。君のお父さんは腕は確かなようです」

??  : 「そっかぁ、よかったね!やっぱりお父さんはすごいんだなぁ!」

ヨモダ : 「そういえば、名乗っていませんでしたね。私は、ヨモダ、といいます」

??  : 「ヨモダさん!僕はねアユムって言うんだ!」

ヨモダ : 「アユムくん、か。いい名前だね」

アユム : 「えへへ、ありがとう!」

KP  : (職について聞いて記憶がないRPを引き出そうかな)

アユム : 「お兄さんってなんのお仕事してるの?」

ヨモダ : 「……思い出せないんだ。自分の名前ぐらいでね、分かるのは」

アユム : 「え、お兄さん、ヨモダさんも記憶がないの?」

ヨモダ : 「? アユムくんも記憶が無いのかい?」

アユム : 「あ、ううん、僕じゃないんだ。その病室に運ばれてくる人は皆記憶がないって言うの」

ヨモダ : (それは中々に怪しい)「私の前にも、同じような患者がいたのか……」

ヨモダ : 「その彼、もしかしたら彼女かもしれないが、もう退院したのかい?」

アユム : 「うん!皆運び込まれてから三日、くらいかな?で退院していったよ!」

アユム : 「だからヨモダさんもきっとよくなるよ!」

ヨモダ : 「そうかい。ありがとう」

ヨモダ : と言いつつも、三日間という奇妙な暗合にどきっとします。

KP  : はい。

KP  : では、ドキッとした後、

KP  : 隣の病室のアユムは事故に遭ってこの病院に入院していること、そしてこの病室に運ばれてくる人が複数人おり、そのすべての人が記憶をなくしているということを聞いた貴方は強烈な眠気に襲われる。

KP  : まだ体力が戻りきっていないようでそのまま目を瞑り、泥のように眠りに落ちる直前、

「おやすみ」

KP  : と、隣の部屋から声が聞こえたような気がした。




カタシロ_Day2

KP  : __Day2

医者  : 「おはよう」

KP  : その声で貴方は目を覚ます。

KP  : 貴方が目を開くとどうにも様子がおかしい。
視界がノイズが混じっていたり、チラついたり、正常では無い。

KP  : 医者の顔を見るとうまく医者の顔を認識できない。

KP  : 声は確かに医者のものだが、見た目では判断ができなくなっている。

医者 : 「気分はどうかな?」

ヨモダ : (が、画面が凄い)「最悪ですね。この視界は手術の影響ですか?」

医者  : 「おや、視覚に問題があるのかい?」

ヨモダ : 「壊れたブラウン管のような状態ですよ」

医者  : 「ふむ、何か目に異常があるかもしれないね、あとで検査しておこう」

ヨモダ : 「お願いします」(何だろう、狂気?)

医者  : 「あぁ。さて、今日も話をしようじゃないか」

ヨモダ : 「そうですね」

医者  : 「では、君は『テセウスの船』というパラドックスを知っているかな? つまり、覚えているだろうか?」

ヨモダ : (お、『10万年後の君達へ』だ)「すべての部品が入れ替わった船は同じ船か、ですね」

医者  : 「そう、その通り、君はそれをどう思う?」

ヨモダ : 「同じ船でしょう。我々人間だって構成する細胞は半年程度で全て置き換わるそうです。でも、それを別人とはいわない」

KP  : (ここも即答。はきはきした回答ができるのいいな。人間だったら、の話も出たな、どう質問したものか)

医者  : 「確かにその通りだ。では、構成する物質が同じなら、同じものと言える。ということかな?」

ヨモダ : 「いえ。どちらかというと、その船を他者が同じ船と認識するか、どうかと思います」

ヨモダ : 「例えば、置き換えたパーツとは別に元のパーツで組まれた別のテセウスの船があれば揉めるでしょうね」

KP  : (お、意外な回答)

医者  : 「なるほど、それは確かに、周りから見ればどちらもテセウスの船だ」

ヨモダ : 「その船が唯一無二だからこそ同一のテセウスの船と認識されるのではないでしょうか」

ヨモダ : 「人間の喩えでいけば、廃棄された細胞がもう一つの自分を作ってしまったら……」

ヨモダ : 「そのとき、その人間はどこにもいないとされてしまうのかもしれませんね」

KP  : (クローンとか類似物が同時に存在することもあまりよく思わなそうだな。となると、最後の選択どうするかな)

医者  : 「その場合、どちらも本物であり、どちらも偽物であるから、周りから見れば唯一無二の存在として、見られない。つまり、その場に存在するが、認識がぶれるため、どこにもいない。ということかな」

ヨモダ : 「仰る通りです」

医者  : 「ふむふむ、いや、実に面白い話が聞けた。他者こそが、それを一つの個体として認識させるもの。つまり、例えば私が今、君を四方田くんだと思っているからこそ、君は確かに四方田くんとして存在できているんだろうね」

ヨモダ : 「ぞっとしませんが、現段階ではそう言えるかもしれませんね」

医者  : 「ふむふむ、いやぁ、実にいい話が聞けた。おっと、そろそろ別の患者さんを 見なければ」

ヨモダ : 「お忙しそうですね」

ヨモダ : 「息子さんにはもう少し構ってあげた方がいい」

KP  : (お、息子の話持ちかけてきた)

医者  : 「このご時世で患者が多くてね。おや、息子と話したのか?」

ヨモダ : 「ええ、少し。事故で入院とはお気の毒ですね」

KP  : (ちょっと匂わせるか)

医者  : 「…あぁ、だが、息子の怪我も治してやりたいと思っている。………そのために長い時間もかけてきたからね。」

ヨモダ : 「そうですか。一日も早いアユム君の快癒を祈っていますよ」

医者  : 「あぁ、ありがとう。では、失礼するよ」

KP  : そう言うと医者は部屋を後にする。


KP  : 貴方は今ベッドの上にいる。相変わらず体は重いが昨日よりはいくらかマシに感じるだろう。視界の様子は先ほどと変わらないが動き回れないほどではなさそうだ。

KP  : 少し歩いて、気になったものを調べることができるだろう。

KP  : 探索可能箇所

・キャビネット、資料棚、加温装置

ヨモダ : では、キャビネットから。

KP  : はい

KP  : 【キャビネット】バースデー、とペンで書かれている。鍵がかかっているようで開かない。四桁の数字を合わせて開けるもののようだ。

ヨモダ : なるほど。では、資料棚を。

KP  : はい

KP  : 少し歩いた先にある棚には、医療道具や資料がしまわれている。それの他に患者の名簿と思わしき資料が納められている。

KP  : 【資料棚】
〈名前〉 〈適性率①〉 〈適性率②〉
朝倉 隆司  13%    05%
飯島 海翔  15%    96%
卯月 鎖那  33%    24%
大空 美玖  67%    38%
片喰 希   12%    03%
西条 遥香  69%    97%
西条 貴司  09%    11%
田中 優也  31%    42%

ヨモダ : ふむ。(適性率……ね。だが、何故、2つ在る?)

ヨモダ : 特に技能を振って何か追加の情報、ということはないですか?

KP  : 目星や、アイデアなどふさわしい技能が振れますね

ヨモダ : じゃあ、目星で。

ヨモダ : CC<=(80) 目星 (1D100<=80) > 17 > 成功

KP  : 【資料棚 目星】
「見つからない」と走り書きが残されている。

ヨモダ : (?)アイデアだと別の情報が出ますか?

KP  : いえ、同じ情報ですね。

ヨモダ : 了解です。では加温装置を。

KP  : はい

KP  : 【加温装置】
ベッドから少し離れた位置に、温風で体温を適温に維持するための装置がある。

KP  : 聞き耳、医学、アイデア、機械修理などのふさわしい技能を振ることができます。

ヨモダ : では、アイデアで。

KP  : どうぞ

ヨモダ : CC<=(80) アイデア (1D100<=80) > 89 > 失敗

ヨモダ : あいたー

KP  : 惜しい

KP  : では、失敗でも、冷たい風が吹いていることはわかるでしょう。

ヨモダ : 加温記なのに?

KP  : はい

ヨモダ : それは、加温記の設定にかかわらず冷風なのですか、それとも冷風がでる設定になっているのですか?

KP  : 設定に関わらず、ですね

KP  : そう言った風に探索をしていれば

アユム : 「おーい、ヨモダさ~ん」

ヨモダ : 「おや、アユム君かい」

アユム : 「うん!調子はどう?」

ヨモダ : 「あまり、良くないね。少し、頭痛がするよ」

アユム : 「そっかぁ、でもちゃんと話せるみたいでよかったぁ!」

ヨモダ : 「そうだね。そう言えばアユム君は何歳なのかな?」

KP  : (お、うまいな話の持っていき方)

アユム : 「僕? 僕はね9歳!」

ヨモダ : 「ほう。誕生日はいつかな?」

アユム : 「誕生日?誕生日はね、7月9日だよ?どうして?」

ヨモダ : 「ああ。ちょっと星座占いがしてみたくてね」

KP  : (うまいなぁ!)

アユム : 「星座占い? ヨモダさん星座占いができるの??」

ヨモダ : 「蟹座……今日はラッキーデーだね。何かいいことあったかい?」

ヨモダ : と話しながらキャビネットの番号を0709に合わせます。

アユム : 「いいこと...今のところまだ何もないなぁ、これから何かあるかな?」

KP  : はい

ヨモダ : 「ふふふ、楽しみにするといいさ」

KP  : では、キャビネットの扉を開けようとしてみれば開くことに気が付きますね。

アユム : 「えへへ~楽しみ~!」

ヨモダ : 「僕は牡羊座だがグッドデイのようだね」

ヨモダ : と話しながらキャビネットを開けます。

アユム : 「そうなの?何かいいことあった?」

KP  : はい。では、何やら異様な銃のようなものが出てきます。

ヨモダ : 「ああ……ちょっとね」 その銃のようなものを取り出してみます。

KP  : はい

KP  : 【キャビネット 中】異様な銃だ。トリガーを引いても動かない。

ヨモダ : 弾倉を確認します。

KP  : 弾倉のようなものはありますが、どうやら弾をいれるわけではなさそうです。

ヨモダ : 一般的な銃とは構造が違う?

KP  : はい。SFに出てきそうな銃だな、と思いますね。

ヨモダ : (ミ=ゴの電気銃か?)なるほど。セーフティとか見当つきませんか?

KP  : ですね、つきません。

ヨモダ : キャビネット内には何かてがかりはないでしょうか?

KP  : なさそうですね

ヨモダ : 銃は一丁だけ?

KP  : はい。一丁だけですね

アユム : 「ヨモダさん?何かしてるの?」

ヨモダ : 「あ、いや。ちょっと部屋が寒くてね…」

ヨモダ : 実際、寒さを感じますか?

アユム : 「寒いの?」

KP  : 涼しいなってくらいですね。ものすごい寒いわけではないです

ヨモダ : 「加温装置があるんだが、風が冷たくてね」

アユム : 「かおんそうち?暖房みたいなもの?」

ヨモダ : 「ああ、そうだ」

アユム : 「暖房なのに、冷たい風が吹いてるの?壊れてるのかな…?」

ヨモダ : 「かもね……」 キャビネットには特に他に気になるものはありませんか?

KP  : なさそうですね

ヨモダ : 他に調べられそうなところはない?

KP  : (アユムとの会話の情報が出し切れてないな、どう持っていこう)ですね。他を見てみても普通の病院にあってもおかしくないものばかりです

ヨモダ : 了解です。じゃあ、アユム君に星座占いの蘊蓄でも話しておこうかな。

KP  : (お、星の話ラッキー)はい

ヨモダ : あ、銃は手元に隠しておきます。

KP  : はい

アユム : 「ヨモダさんいろんなこと知っててすごいなぁ、今の星座も見たことあるの?」

ヨモダ : 「ああ。たまに星を見に郊外に行くこともありますよ」

アユム : 「へぇ!いいなぁ、すごく綺麗だった?」

ヨモダ : 「そうですね。そのときは夏の大三角が見えましたよ」

アユム : 「夏の大三角!僕見たことない!どのあたりまで行ったら見れるの?」

ヨモダ : 「そうですね。日本なら、季節が合えばどこでも見れますが、都会の明かりが届かないところがいい」

アユム : 「明かりが届かないところかぁ、」

KP  : (頃合いかな、見たいな、教えてもらいたいなって感情から)

アユム : 「あのね、僕ね、事故に遭った、って言ったでしょ?」

ヨモダ : 「ええ」

アユム : 「その事故でね、僕目が見えないんだ。体も動かなくてね」

ヨモダ : 「そ、それは……」

ヨモダ : 「なんか、すいませんね。映画だとか星だとか……」

アユム : 「どうして? 聞いたのは僕だからヨモダさんは悪くないよ?」

アユム : 「それにね、お父さんが治してくれるって約束してくれたんだ!」

アユム : 「だから、もし治ったらさ、ヨモダさんにお星さまを見に行ってお星さまのこと教えてほしいな!」

ヨモダ : 「そうなんですか。お父さんならきっと治してくれますよ。そしたら一緒に星を見に行きましょう」

アユム : 「うん! 約束だよ!」

KP  : そうして、星を一緒に見にいくと約束した貴方はまた強烈な眠気に襲われる。

KP  : 眠気に耐えられずにそのままベッドに戻り目を瞑ればまた泥のようにねむりにつくことでしょう。眠りに落ちる直前

「もう寝ちゃうの…?…おやすみなさい」


KP  : と、隣の部屋から声が聞こえた気がした。




カタシロ_Day3

KP  : __Day3

医者  : 「おはよう」


KP  : その声に貴方は目を覚ます

ヨモダ : 「おはようございます」

KP  : 視界はクリアになっている。体の調子も、昨日より良くなっているようだ。

医者  : 「調子はどうかな?」

ヨモダ : 「そうですね。昨日よりは大分良い」

医者  : 「それはよかった。昨日検査をしたところ目の調子が良くなかったみたいでね。治しておいたよ。」

ヨモダ : 「ありがとうございます」

医者  : 「あぁ、さて、あとは記憶だけだね」

ヨモダ : 「そうですね」

ヨモダ : いまだに何も思い出せない、でいいんですよね?

KP  : はい。まだ思い出せないですね。

ヨモダ : 了解です。

医者  : 「さて、今日も話をしよう」

ヨモダ : 「その前にひとつ聞いてもいいですか?」

医者  : 「なんだね?」

ヨモダ : 「ベッドサイドモニター、どこにも繋がっていないようですが、何のために置いているんです?」

医者  : 「あぁ、君がここに運ばれてきた時に使っていたんだが、必要がなくなったから外したんだ。体調もいいだろう?」

ヨモダ : 「ええ。しかし、97、98という数字が出ていますがこれは何です? 心拍数や脈拍ではありえないし」

医者  : 「……これは、適性率だ。高ければ高い方がいい。」

ヨモダ : 「適性率……何のです?」

医者  : 「治療時に使った医療道具とのだ」

ヨモダ : 「ほう」 顔色を伺いますが、どうですか?

KP  : 仮面をつけているのでよくわからないですね

ヨモダ : 声は平静?

KP  : 声は平静です。

ヨモダ : ふむ。

ヨモダ : 「そういえば、今日で退院でしたっけ?」

医者  : 「あぁ、そうだね。午後には、記憶も戻って退院できるだろう」

ヨモダ : 「! そんな確信があるのですか?」

医者  : 「あぁ、きっと戻るだろうさ。あとはそのきっかけだけだ。そのためにも今日もまた話をしよう。」

ヨモダ : 「分かりました」

医者  : 「では、君は、『臓器くじ』という思考実験を知っているかな?つまり、覚えているだろうか?」

ヨモダ : (あ、これは知らない。Wiki、Wiki……と)「いっとき流行ったトロッコ問題に似た倫理問題ですね」

ヨモダ : 「くじにあたった健康な人間の臓器で移植が必要な人たちを救う。一人の犠牲で仮に5人救えるとすれば……ですね」

医者  : 「そう、そのとおり。君は随分博識だね」

ヨモダ : 「ただの生兵法ですよ」

医者  : 「知識は知らないよりはいいからね。それにこういった倫理問題はあれば考えが潤沢になる。知っていて損のない話だからね。そう謙遜することでもないさ。」

医者  : 「さて、君はこの臓器くじについて、どう思うかな?」

ヨモダ : (こんなところでサンデル先生が役に立つとは)「考えるまでもありません。これは、いわば功利主義のグロテスクな適用ですよ。これがありなら侵略戦争でも殺人でもなんでもありでしょう」

医者  : 「では、君はこの方法には反対だ、ということかな」

ヨモダ : 「ええ」

ヨモダ : 「人の命は量換算できるものじゃない……」

医者  : 「ふむ。人が多く死ぬからと言って個人を尊重しないのもどうなんだ、といった感じかな」

ヨモダ : 「1人の命と5人の命に軽重はない、という話ですね。この引き換えが許されるのは、その一人が完全に自発的に臓器を差し出した場合だけでしょう」

医者  : 「ふむ、なるほど。」

医者  : 「では、例えば5人の中に大切な人がいたとしたら、その時はどう考えるかな?」

ヨモダ : 「大事な人ですか……それは、もはや倫理の問題ではなく、個人の願望の話になってしまいますね。愛する人のために罪を犯す、その行為自体を倫理で裁く意味はないでしょう」

ヨモダ : 「その5人の中に大事な人がいるなら、くじなど待ちません。私が自らの手を汚しますよ、相田先生」

医者  : 「ふむ、大事な人の為なら、どんなことでも、と。」

ヨモダ : 「貴方は違うんですか?」

ヨモダ : すっと目を細めて相田を見ます。(ちと、反応を見るか)

KP  : (試されてるねぇ…まぁ答えは一つどころか今やってるから正直に答えようか)

医者  : 「…いいや、私も同じような状況になればきっと君と同じように私の手を汚すだろう。」

ヨモダ : 「この話題は、これで終わりですか?」

医者  : 「あぁ。そうだね」

ヨモダ : 「特に記憶がよみがえるような気配はありませんが……」

医者  : 「何、最後の検査が残っているんだ。それが終わればきっと記憶も戻るだろう。その準備と、他の患者も見なければいけない。少し待っていてもらえるだろうか」

ヨモダ : 「分かりました」

医者  : 「では、」

KP  : 医者はそう言うと手術室を後にする。

KP  : 体は完全に調子がいい。今の貴方なら隣の部屋まで行くことも可能だろう。

ヨモダ : まあ、行きますね(笑)

KP  : はい!

KP  : では、貴方は、隣の部屋へ続く扉を開けますか?

ヨモダ : ただ、ある種の予感がするので、足音を忍ばせていきます。

KP  : はい

ヨモダ : 扉には聞き耳するかな。

KP  : (流石生粋の探索者...)聞き耳どうぞ

ヨモダ : CC<=(60) 聞き耳 (1D100<=60) > 84 > 失敗

ヨモダ : ダメか……

KP  : 中からは特に音は聞こえてきません。

ヨモダ : そっと扉を細く開けて中を伺います。

KP  : はい。中は薄暗く、よく見えません。

ヨモダ : では、足音を立てないようにして室内に滑り込みます。

KP  : はい

KP  : では、貴方はその扉を開ける。

ヨモダ : やはり…

カタシロ_隣の部屋

KP  : 部屋は薄暗い。しかし、ほんのりとした緑の明かりが真ん中にぼんやりと浮かんでいる。
近づけばそこには脳みその入った脳缶が置かれていた。
その隣にはベッドがあり、誰かが横たわっている。

ヨモダ : 見ます。

KP  : そのベッドに横たわっていたのは、貴方自身だった。もちろん、貴方はベッドのそばに立っている。立って、横たわる自分を眺めている。では、ベッドで寝ている自分は誰なんだろうか。どうして、自分が二人いるんだろうか。異様な光景に、SANc<1/1d10>

ヨモダ : CC<=40 SANチェック (1D100<=40) > 51 > 失敗

ヨモダ : ぐはっ(や、やばい!)

ヨモダ : 1D10 (1D10) > 1

ヨモダ : まだまだ!

system : ヨモダ SAN : 40 → 39

KP  : つよい!

アユム : 「あれ~?ヨモダさん?」

ヨモダ : では、顔面蒼白になりつつ耐えます。

ヨモダ : 声はどこから聞こえますか?

KP  : 声は、脳缶から聞こえてきます。

ヨモダ : その受話器からですかね?

KP  : (記載はないが、前まで受話器使って会話してたし、そうかな?)そうですね。受話器からのようです。

ヨモダ : とりあえず、アユム君の呼びかけには答えず、自分の寝ている身体に向かいます。

KP  : はい

アユム : 「? いないのかな? 三日目だからもう退院しちゃったのかな……」

ヨモダ : 『ごめんよ……』

ヨモダ : 自分の身体を改めますが、どういう状態ですか?

KP  : 元の身体は特に異常はなさそうです。怪我もしていなさそうで、脈も動いていることから、"死んではいない"ということはわかります。

KP  : そうしていれば

医者  : 「やはり、ここに入ったんだね。」

KP  : と、扉の方から声がします。

ヨモダ : 「説明が欲しいですね。相田先生」

ヨモダ : 鋭い一瞥を入り口に向けます。(ヤバい、彼が子供を思う父親なのか、狂信者なのか、まだ情報が足りない……!)

アユム : 「あれ、お父さん?あ!ヨモダさんもいる!」

医者  : 「あぁ。そうだね。」

アユム : 「? 二人とも難しいお話?」

医者  : 「あぁ、そうだ。すまないねアユム。すこし、彼と話があるんだ。」

アユム : 「えー!お父さんばっかりずるいよ~!僕もヨモダさんといっぱいお話したい~!」

医者  : 「…すまないね。アユム。少しの間、おやすみ」

アユム : 「あ、お父さッ...............」

KP  : 医者が何かのスイッチを切ると脳缶は静かに明かりを灯すだけとなった。

ヨモダ : 「どうやら息子さんには聞かせられないような話のようですね」

医者  : 「あぁ。息子には何も話していないんだ。あの子はまだ9歳だからね。あまり難しい話をしても理解できないだろうから。」

医者  : 「息子からは、どこまで聞いたのかね」

ヨモダ : 「事故で目も見えず、身体も動かなくなった、と聞きましたがね。これは貴方がやったのか」

医者  : 「いいや。事故は本当だ。その事故には私も巻き込まれてね。見ての通り、こうして顔を隠す羽目になってしまった。妻も、その時に亡くなってね。」

医者  : 「息子もまた、その事故の影響で体の原型がとどめられないほどの重傷を負った。」

ヨモダ : 「だから、脳を摘出したのか」

医者  : 「あぁ。そうだ。脳だけでも保存しようと試みた。」

医者  : 「幸い、私は交流があったんだ。そういうことができる種族との交流が」

ヨモダ : (やはりミ=ゴか……)「しかし、いつまでも息子さんを脳のままではおけないでしょう。」

医者  : 「あぁ、そうだ。だから最初は機械の体を試した。」

医者  : 「だが、ダメだった。時間がたち過ぎていたのか機械の体とは適合しなかった。」

ヨモダ : 「だから、こんどは人間で、ですね」

医者  : 「その通り。」

医者  : 「何人も、何人も探したんだ」

ヨモダ : 「あそこの資料棚に合った患者のリスト、息子さんの身体の候補ですね」

医者  : 「見たのか。そうだ。」

ヨモダ : 「全員、脳を抜いて殺したのか?」

医者  : 「いいや。どの患者も生きている。」

ヨモダ : 「? どういう意味です?」

医者  : 「私も医者だ。自分のエゴで人を殺したくなかった。」

ヨモダ : 「! クローンか?」

KP  : (そうなるか!いやそりゃその線も考えられる!が、適性率が二つの意味を理解しきれていないかもしれない!)

医者  : 「いいや、違う。」

医者  : 「私は、機械の体ともあう人間を探した。」

医者  : 「合わなければ皆元の身体に戻した。」

ヨモダ : (そういうことか!)「ああ。今の私の身体は機械、というわけだ」

医者  : 「あぁ。察しが良くて助かるよ」

ヨモダ : 「ひとつ確認させてほしい。貴方は、あそこで寝ている私の身体にアユム君の脳を移そうとしているのだな。では、もし、脳が適合した場合、あの身体はアユム君のものになるのか?」

医者  : 「脳が適合するのは確定している。君も気にしていただろう? モニターの数値を。あれは、アユムの脳が君の身体とそして、君の脳が機械の体と、適合するのかを表している。そして、入れ替えれば体は君の年齢、体調そのままだが、アユムは自由に動き回り、物を見ることができる。」

ヨモダ : 「私はどうなるんです?」

医者  : 「君にはその機械の体をあげよう。この先、数年は少なくとも健康でいられるはずだ。だが、不調が起きる可能性もある。初めてのことだからね。保証はできない。」


ヨモダ : 「アユム君は9歳で成人の身体を与えられるのですか。酷すぎませんかね?」

医者  : 「だが、こんな暗い部屋で一人、話し相手も私しかいない状態の方が、酷い話だと思わないか?」

ヨモダ : 「最悪よりはまし、ですか」

医者  : 「あぁ。そうだ。」

ヨモダ : 「私の記憶が無いのも、貴方の処置のせいですね。あそこで寝ている私には脳がないのですか?」

医者  : 「脳を入れ替えたときの障害だろう。じきに戻る。あぁ。そちらの身体にはもう脳は入っていない。」

ヨモダ : 「なるほど。では、私の脳だけが、この機械の身体に入っているわけですね」

医者  : 「あぁ。」

ヨモダ : 「では、貴方は、私に生身の身体を息子に譲渡してくれ、というわけですね。私に拒否権はあるのですか?」

医者  : 「あぁ。そうだ。確かに君はくじに選ばれた。だが、臓器くじとは違い、拒否権がないわけではない。君も言っていただろう。引き換えが許されるのは、自発的に差し出した場合だけだと。私もあの意見には賛成なんだ。」

ヨモダ : 「じゃあ、私がここで拒否すればあきらめると?」

医者  : 「少なくとも君の体は諦めよう。」

ヨモダ : 「ふむ。やっかいな倫理問題を私に突きつけますね、貴方は」(狂信者ではないか……)

ヨモダ : 「しかし、この脳の処置ができるのなら、息子さんの身体を再生することもできそうですがね。試してみたのですか?」

医者  : 「それもできないほど酷かったんだ。完全に治せるほどではなかった。」

ヨモダ : 「そうですか」

医者  : 「君は言ったね。大事な人が臓器くじの5人の中にいたなら、自分の手を汚すと。そして、私もまた、君と同じで大事な人の為なら自分の手を汚すと。これがそうさ。息子の為に私は本来してはいけないことをしている。自覚はある。だが、諦めきれないんだ。」

ヨモダ : 肩をすくめて、かぶりを振ります。

ヨモダ : 「仕方ないですね。いくつか条件がありますがいいですか?」

医者  : 「何かな」

ヨモダ : 「この機械の身体については定期的にメンテナンスを行い、徐々に老化していくようにしてください」

ヨモダ : 「そして、アユム君には、早く年齢相応の肉体をクローンでもなんでも使って用意してください。その時には、私の身体を返して欲しいですね」

ヨモダ : 「最後に、これが一番大事な条件です」

ヨモダ : 「私とアユム君は、二度と会わない事」

ヨモダ : 「テセウスの船で言った通りですよ。自分の存在が唯一無二でなくなったとき、二人とも存在を見失うことになります」

ヨモダ : 「以上の条件を飲むなら身体をお譲りしましょう」

医者  : 「あぁ。その全ての条件、約束しよう。」

医者  : 「改めて、聞こう。」

医者  : 「息子のために、君の体が欲しい。お願いだ。君の体を、譲ってくれないか。」

ヨモダ : 「仕方ありませんね」

ヨモダ : 「フェアな取引だ……」

医者  : 「ありがとう...ありがとう......」

医者  : 「……おやすみ、四方田」

KP  : 医者がそういうと貴方は急激な眠気に襲われる。




KP  : 目が覚めたとき、貴方は自室のベッドの上にいた。

KP  : 失われた記憶も戻っている。病院であったことも覚えている。あれは夢だったのか現実だったのか。

KP  : ふと、体のある一部分が、よく見るとわかることだが、他の部分とは違う色になっていることに気が付く。
はたしてその体は、本物なのか、偽物なのか。
それがはっきりするのは、もう少し後のことだろう。

KP  : 最後に、日常に戻ってきた四方田の一言でこの物語を締めようと思います。

KP  : 日常に戻ってきた貴方は最後に何と言いますか?

ヨモダ : 「ダミアン、コーヒーを淹れてください。あと、梁から仕事の連絡は入ってますか。彼はすぐにすっぽかしますからね」

____________________________________________

【END】

「カタシロ」

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KP  : これにて、クトゥルフ神話TRPG「カタシロ」
シナリオ終了となります!

KP  : お疲れさまでした!

PL  : お疲れ様でした。

【後書き】:本セッションは、すべてテキストで進行して約3時間強、ボイスセッションだと1時間と聞いていたので、そんな短時間でセッションが成立するのかと思いましたが、非常に上手く構成されています。記憶喪失という導入でPCの背景を白紙にして、物語の構造を探らせつつ、医師との対話によってPCの価値観の方向性をPLに意識させる。最後のシーンに物語の構造の見極めと価値観の方向付けを一致させるように作為されているのでPLの盛り上がりを自然に誘導する。PLを一人に限定しているのは、誰がこのシナリオを回しても、この進行が予期の通りに進むようにするためだろう。正直、私がプレイヤーとしてもGMとしても馴染んでいるセッションとは、かなり毛色は異なり、むしろ小劇場でやる即興演劇に近い気がする。このシナリオの舞台化を図ったところからも、多分、ディズム氏はその方面の造詣が深いのではなかろうか。また、意識したものかは分からないが、ナラティブ系TRPGシステムのプレイ感に似たものを感じた。
 正直、カタシロを自分がオフラインのセッションで回したいと思うかといわれると、ちと厳しい。このシナリオは、オンラインセッションの距離感、仕掛けに最適化されたシナリオだと思う。ネット時代の新しいシナリオ様式と言えるだろう。

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