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ドラストールにおける特殊な遭遇(2)

邪鬼
遭遇場所:穢れの谷

 邪鬼は、悪鬼が悪魔の台地に顕現している間、従者として現れる。そして、しばしば、悪鬼が姿を消した後もこの世に留まり続ける。この実体を持つ精霊は、通常、殺すことはできないが、その肉体を破壊し、ゴープや他の混沌の群体から肉体を再構成するまで、一週間ほど、その精霊を駆逐することができる。このため、悪魔の台地は、時として、邪鬼の群れに悩まされることがある。
 この怪物は、その強い混沌の特性のため、諸相は様々である。同じ邪鬼であっても、召喚の間に破壊されて強制的に再生させられた場合は、異なる混沌の諸相を持つかもしれない。

吠えるもの(Howler)
遭遇場所:地獄森

 吠えるものは、大抵の人間が思い描く「ドラストールの典型的な怪物」のいい例である。何物にも分類できず、数多くの混沌の諸相を持ち、あらゆる者を攻撃する。最悪なことは、吠えるものは、普通にブルーや他の知性を持つ混沌の怪物と手を組むことである。ブルーの他に、スコーピオンマン、地獄森のエルフ、オーガ、更にはヒドラ、グール、吸血鬼等と行動していることもある。
 吠える者は、4本の脚の他に触手が生えており、胸部には、頭部とは別に顔が付いている。どちらの口からも酸を吐くこともでき、1日の内、何回かは火を吐くことができる。吠える者の頭部を切断したとしても、胸部の顔があるので死なない。また、その皮膚は、揺らめくような光を放ち、見る者の攻撃を惑わせる。また、元々、強力な魔法への耐性を持っている。また、その叫び声は、聞く者を恐慌の淵に叩き込む。

吠えるもの

飢え貪るもの(Hungry Eater)
遭遇場所:地獄森

 飢え貪るものは、直径約10mの巨大で中がくり抜かれたカボチャによく似た、巨大かつ不動の存在であり、片側に、恐ろしい顔が刻まれていることから、ジャック・オー・ランタンとも呼ばれる。見かけが似ているという以上に、学者達は、ジャカベアと飢え貪るものとの間に説明がつくような関連性を示唆することはできていない。
 飢え貪るものは、ある程度の知性があり、餌や防備の見返りに、他の存在と共に行動することがある。その恐ろし気な見かけにも関わらず、飢え貪るものの能力は、自らの安全を確保するには十分ではない。しかし、飢え貪るものの代わりに動き回ったり、魔術を行使したりする存在と手を組んだとき、飢え貪るものの力は真に恐ろしいものとなる。
 冒険者がドラストールを旅するとき、飢え貪るものとの遭遇がしばしば起き、それは飢え貪るものの誘引の能力によって不意を突かれる形になる。その後、彼らは飢え貪るものに向かって、否応なしに、障害を横断し、途中で敵を撃退して遠い道のりを踏破しなくてはならない。彼らがそこまで到着したとき、その報酬は、飢え貪るものとそれに協力する怪物の一団となる。
 飢え貪るものは、半径3Kmほどの範囲を感知する精神能力を有しており、屋外に居る知的生物を見つけることができる。飢え貪るものは、見つけた獲物の精神に働き掛け、自分の方に引き寄せる誘引の能力を使うことができる。誘引の能力に引き寄せられた者は、誰でも、可能な限りの速度で歩いて貪るものの方に向かおうとする。水場や山岳、その他、何らかの自然の障害物に行き当たった場合、可能な限りその障害を乗り越えて、飢え貪るものの元にたどり着こうとするが、障害を乗り越えるために自殺的行為をするわけではない。
 引き寄せられた獲物が、飢え貪るものの視界に入ったなら、何者であっても、貪るものに全力で向かおうとする。しかし、引き寄せられている者は、踏みとどまろうと抵抗したり、飢え貪る者に対して、発射武器や呪文を投射したり、近接武器を振り回したりすることはできる。獲物となった者が、飢え貪るもののすぐ側まで達すると、その大きく開いた口に自ら飛び込み、飢え貪るものに消化されることになる。

狂気の太守(Mad Sultan)
遭遇場所:死霊ヶ原

 狂気の太守は灰色肌達の指導者である。彼は、自らがドラストールの王であると主張しており、間違いなく、自分の王国は繁栄を極めた理想郷だと信じている。彼が狂っているのは明らかであり、周囲で起きる状況に対して当てずっぽうなやり方で対処する。彼は、鉄製の板金鎧を身にまとっており、同じく鉄製のコピス、シックル、グレートアックスを武器として使用する。
 狂気の太守とその臣下たちが腐敗の地に住み着いた時、幸運なことに、ドラストールは、彼ら以外の他のどんな生物にとってもあまりも穢れ過ぎていた。住民となった灰色肌達は、ウサギのように増え、彼らを捕食するブルーから逃げ延びる能力を発達させた。
 太守自身は、首の短いブロントザウルスの背に載せられた、今にも崩れそうな小屋を住居にしている。太守の護衛は、常に彼と同室しているか、ブロントザウルスの側面に設けられた桟敷に控えている。数多くの灰色肌が、その前後をぞろぞろと群れ歩き、時折、ブロントザウルスの餌食になる。武装した者達は、常に陰険で権高だが、恐竜の周囲で守りを固めており、奴隷化したブルーを数頭、革紐につないで引きずっている。太守は、何者であれ、自分の愛する臣民である灰色肌を傷つけているとみなしたら攻撃し、しばしば、この惨めな生物(灰色肌)の群衆を伴っている。
 太守の魔力は、彼が引き連れる灰色肌の数によって変化する。2回目の荒の日に引き連れている灰色肌の数が多ければ多いほど、太守の魔力は強化される。

蛮人リョー(Madman-Lyo)
遭遇場所:ドラスタの社

 この野生の人類と思われる存在は、ドラスタの社の守護者であり、女神ドラスタの入信者である。
 彼を殺めた者は、裁きの雷に打たれるという。そして、罪人達が罰された後、雷が落ちた場所の中心で、彼は再び甦る。

最後の女王(女王種トロウル)(Mistress the Last)
遭遇場所:蜘蛛の森

 彼女は、カイガ―・リートールの女祭にしてゾラーク・ゾラーンの死の王、そして多くのトロウル精霊カルトの入信者でもある。この女王種トロウルは、ドラストールを転々としながら、彼女が出会う混沌を一掃すべく最善を尽くしている。彼女にとっての最大の障害は、何年も前に彼女の身体に潜り込んだグバージの欠片がもたらす混沌の呪いである。子の呪いは、混沌がわずかでも混じったものを食べると、女王を肉体的に無力な存在にしてしまう。彼女は、混沌の生物の肉を口に入れ噛み砕くことはできるが、飲み込むことはできない。これは、裏を返せば一つの利点でもある―彼女は、風変りではあるが、何者であれ、それが混沌かどうかを見分ける確実な手段を持っているのだ。
 彼女は、ヒーロークエストを通じて、カイガー・リートールより、もう一つ別の制約を受けている。彼女は、今、住んでいる地より混沌の度合が少ない土地に行くことは決して許されない。このため、彼女は、ドラストールの混沌が清浄化されるか、ドラストール以外の地に混沌が蔓延らない限り、ドラストールから去ることはできない。この制約の見返りに、彼女は寺院の支援が無くてもルーン呪文を再使用できる。彼女がこの制約を受けて数年ほどだが、このような取引をカイガー・リートールと交わしたことを後悔している。制約の見返りに与えられた能力は、彼女がドラストールで生き残るのを可能にする一方、この制約が無ければ、そもそもこの地にいる必要もなかったのだ。
 この呪いがあるため、混沌ではない集団に対する彼女の対応は比較的穏やかである。彼女は、ドラストールにおいて混沌と対峙する存在について歓迎しており、そのような者たちが混沌を駆逐してくれることを願っている。その一方……彼女は生きていくために食わねばならず、彼女が食せるような非混沌の存在は、ドラストールではごく僅かである。彼女が冒険者の一団を見つけられないときは、彼女はルナーの隊商を待ち伏せして、ロバや馬を貪り食うか、樹木やエルフを喰らうために毒茨の森に侵入しなくてはならない(それは危険で最高の娯楽でもある)。もし、冒険者が彼女に分け与えられるほどの食料を保持しているなら、彼女は、自分が類まれな同盟者になれることを証明できる。食料が尽きるまでではあるが。

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