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掛け合い:ヤブの往診

太郎「せんせぇさまぁ!おえれぇせんせぇさまかヤブのせんせぇさまかしらんけど、じいさんが死にかけじゃぁ!山の向こうじゃけん、一緒に来てくんな!」
先生「へぇへぇ…今日は忙しいこって、患者かぁ?歳はいくつだ?」
太郎「俺か!俺はこの前18になったばかりよ!」
先生「おめぇさんでねぇあほたれ!死にそうなやつの歳を聞いておる!」
太郎「あー、そんなら早く言ってくれよぉ、こっちは急いでんだよぉせんせぇさまぁ!歳はー、あれ、佐吉のじっちゃんいくつだ?男だぜ、じじいだ!」
先生「へぇへぇ、そんなことも知らずに走って来たのかい、おまえさんのおつむがちぃと心配だがね。よっしゃ、いこうか!支度するからの、ちっとまっとくれや」
太郎「あーせんせぇさまぁ。支度なんて贅沢なもんいらねーですぜ、へぇ。なにしろ佐吉っつぁんときたら年の暮れ辺りからよう腰もあがらんし、よぼよぼしてまってな!こりゃ近うちには天国さ行くんだろうなと素人目にもわがったでよ。それがようやく目を閉じて静かに逝きなさるところじゃけ、先生は静かに『御臨終です』と言ってくれればそれでいいんですよヤブのせんせぇさまぁ!なにも起こすことねぇって、へぇ」
先生「ヤブヤブ言うでねぇ!患者はまだ死んでないんだろうが!たわけが!」
太郎「いえ、もう今時分は成仏してるんじゃねーかと思いますだ。あとは御臨終の合図でシャンシャンとなる寸法で!」
先生「何がシャンシャンじゃたわけが!しかもわしは精神科医じゃぞ、そういうのは内科あたりに任せるもんじゃろが!おまえさんたちの近くに内科はないのか!」
太郎「あやっ、なんと!精神科医ってのは御臨終できねえ医者の事を言いまっか!?」
先生「死亡宣告ならばできるがな」
太郎「じゃあなにができんのじゃ?」
先生「心臓病とか、肺の病気とか、そういったものは治せん」
太郎「じゃあ何が治せるのじゃ?」
先生「決まっておろう。精神じゃよ。」
太郎「それなら大丈夫だぁ!佐吉のじっちゃんここんとこ精神的におかしくてよ、いつも独り言言いながら歩いてたから気味が悪かったんでさぁ!じゃあ精神の病で御臨終ってことで、ちょいと来てくんな!」
先生「じゃから待ちなさい!このせっかちめ。準備が必要じゃがな」
太郎「せんせぇさまぁ!この会話しとる間に準備しとらんかったんかぁ!?」
先生「待ちなさい、白衣と…これは喪服と…」
太郎「せんせぇさまぁ!?なぜに喪服がいるんですかぃ?」
先生「決まっておろう、わしが死亡宣告した患者の葬式に呼ばれて、メシでも食ってくるんじゃよ。」

2024/12/23 みゆき・シェヘラザード・本城

あとがき

脳で勝手にキャラが動き出したシリーズです
まずヤブ医者っぽいおじいちゃん精神科がいて、そこに問題児の患者が駆け込む、あたりからはじまったのですが
気がついたら太郎という人格がわんわん言っている所になんかおかしな先生が応対するといったストーリーができあがりました。
スピード感をもって掛け合いを演じて頂ければな、と思います。

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