母の目、うさぎの目
今朝、母の目がうさぎの目になっていた。
二世帯同居している母がいる。
先月76歳になった。
我が家は、母と弟、私の家族と二世帯が階に分かれて住んでいる。
私は毎日、階下に居る母と会う。
今日の体調はどうかなとか、何か私が出来ることはあるかなとか。
母は家事も出来るし、パートにも行くほど元気。
今朝、右の目が真っ赤だったので、それを伝えた。
白目部分が赤い。
本人は慌てて洗面所の鏡で確認。
「あら、いやだわ」と驚く母。
痛みはまったくないと言う。
今日の午前中に眼科に行ってみない?私も一緒に行けるよと話してみると、そうねぇ……という浮かない返事が返ってくる。
おそらく大したことはないと思うが、受診した方がいいだろう。
「ちょっと待っててね」
上の階に上がり、PCで、母が検診で行ったことがある眼科のサイトを開く。
受付時間を確認し、問診票をダウンロード。
母のところに戻り、問診票を渡す。
「これに記入して持っていくといいよ。8時半くらいに家を出て、一緒に行こう」
眼科は、大きな商業ビルの7階にあった。
9時からの診察開始に、既に何人も待っている患者さん達がいた。
受付を済ませ、院内に置かれたパンフレットに目がいくと、白うさぎのイラストが描かれたものがあった。
「このうさぎ、私みたい」
白うさぎの目は赤くて、母の右目と同じだった。
「結膜下出血」とあるパンフレットで、母は「何か怖い病気なのかしら……」と言うので、読み込んで「違うみたいよ」と伝える。
まもなく母の名前が呼ばれ、耳が遠いので付き添いです、一緒に入室してもいいですか?と看護師さんに確認、どうぞどうぞと通される。
丸いお顔のやさしそうなお医者さんが、母の目を診てくれて、
「結膜の出血ですね。大丈夫ですよ、心配ないです。はい、これですね」
先ほど受付で見たうさぎのパンフレットを手渡してくれた。
「やっぱり、うさぎだったわ」
母が言う。
お医者さんから説明がある。
「血は自然に吸収されますから。疲れたりするとなるのです。特にこのまま何もしなくていいですよ。熱いタオルをあてると、吸収が早くなるかもしれません」
「熱いタオルのところ」が聴き取れなかったような母に、
「あったかいタオルを目にあててあげるといいんだって。血が、早く吸収されるそうよ」
と隣から伝える。
自動精算機で支払いながら、
「怖い病気だったらどうしようと怖かったけど、来てよかった、ありがとう。安心した」
と母に言われる。
怖くなるよね、赤い目だもの。
夕方に再び母の様子を見に行く。
赤みは、朝よりもひいているようだ。
「熱々のタオルをあてたの」
この調子で白くなあれ。
目が赤いのは、白いうさぎだけ。
アルビノでメラニン色素がないから、体毛が白い。
虹彩(眼球の色がついている部分)にもメラニン色素がないため、眼底の血管が透けて赤く見えるのだそう。
という先ほど検索して知ったことを、さも前から知っていたかのようにしれっと書く私。
うさぎさん、ごめん。
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