サフィール踊り子の旅(前編)
約三年ぶりの家族電車旅だった。
「何線に乗りたい?」
私の問いかけにも、子ども達の反応は薄く、長男の電車熱はまだあれど、次男に至ってはもはや電車への興味を失っている。時の流れ。
「個室がいい」
夫のひと言から「特急 個室」で検索をかける。
遠過ぎず、近過ぎず、現地で車移動しなくても、徒歩やバス等を使い、のんびりまったりと出来る場所で一泊、これが我が家の旅の掟。
サフィール踊り子
存在は知っていた。
個室、果たして予約が取れるのだろうか。
かなり人気がありそうな気がする……。
「いやー、お母さん、個室は無理でしょ、倍率高いよーー。せめて普通の席じゃない?普通席でもサフィールは全席グリーンだよ」
長男よ、やる前からあきらめてはいけない。
君らのリクエストに応え、今まで全ての切符を準備してきた母をなめるな。
「サフィール踊り子 個室」で検索し、個室予約に成功した方のブログを読む。
特急券、乗車券が発行されるのは
乗車日の一ヶ月前
10時から購入が出来るので、9時台から「みどりの窓口」の列に並んでスタンバイしておくべし、とブログには書いてあった。
(どうやらネットや指定席券売機でも買えるようです)
列が進み、私の番になった時は10時7分。
第一希望だった「サフィール1号」の券は売り切れてしまっていたが、「サフィール3号」の個室の券が買えた。
カウンターの向こう側アクリル板を挟んで、職員さんに、ありがとうございます、ありがとうございますとぺこぺこ頭を下げる。
「サフィールは人気ですからね。よかったですね」
職員さんも笑顔。ありがとうございます。
みどりの窓口を出てすぐ、長男に個室の券が買えたことをメール。
「マジで!!!!!すげー」
いつもは読みもしない母メールに即座に返信が来た。
久しぶりの家族電車旅に、夫も次男も喜ぶ。
一ヶ月後、家族みんなで元気で行けますように、体調に気をつけて過ごそうと誓いあう。
子ども達は夏休みの宿題を頑張って、早めに終わらせた。
8月も終わりに近づいて来た頃、待ちに待ったサフィール踊り子乗車日がやってきた。(中編に続く)
お読みいただきありがとうございました。
このシリーズは次回の「中編」と、その次の「後編」に続きます。