スペーシアの旅
電車が好きな兄弟なので、家族旅行の計画をする時には「何処に行くか」ではなく「何の電車に乗るか」から考える始めることが多かった。
小さな子連れでまわりに過剰に気を遣わなくてもよくて、乗車時間が短すぎも長すぎもしないもの。大人もリラックス出来るもの。
リピートして数回乗ったのが『特急スペーシア』だった。
『特急スペーシア』のコンパートメントルーム(個室)
浅草駅の駅ビルで好きなごはんを選んで、この個室でいただくおいしいランチタイム。自分たちだけなので、気兼ねなくくつろげる空間。子どもが昼寝したり、大人もだらだらしたり、足を伸ばしたり。隣の個室からは赤ちゃんの泣き声が聞こえてきたりもして、それもまた心地よかった。
個室を出てすぐの通路には大きな窓があり、行きかう電車をゆっくり眺めることも出来た。兄は、自分のデジカメで電車や通過駅を飽きることなく撮影していた。
特急スペーシアに乗っていたころはまだ兄弟の身体サイズも小さく、この個室をのびのび使えていたように思う。今ならだいぶ狭く感じるはずだ。
兄の小学1年生の夏休みの自由研究は『とっきゅうスペーシア』だった。車両の4色(青、紫、オレンジ、金)の意味を調べたり、写真を撮ったり、路線図を描いたりしたことをふと思い出した。
コロナの影響で、小学校の修学旅行で行くはずの日光移動教室が中止になってしまった。
「おれはいいや。スペーシアで行ったことあるからさ、日光は」
よかった、行ったことを憶えていてくれた。(2回目のスペーシアの旅の目的地は日光だった)小さかった弟は記憶があやふや…仕方ない。
〝家族旅行なんて嫌だ、恥ずかしい”という年頃に突入しそうな兄ではあるが、いつかまた特急スペーシアにみんなで乗れたらと思っている。