【企画参加】#教科書で出会った物語 「星々の悲しみ」宮本輝
メディアパルさんの企画に参加します。
物語を知ったのは、高校の「現代国語」の教科書だった。
拙い文章で冒頭部を要約してみたのだが、改めてこの作品に惹き寄せられた。
予備校での授業や試験に身が入らず、ひたすら本の世界に逃げこうもうとする志水。
「星々の悲しみ」というタイトルとは全く違う構図の絵。
初夏の昼下がり、木蔭で昼寝をしているかのような少年の絵。
100号もの大きさの油絵(130×160㎝くらいだと思う)を、営業中の喫茶店から盗んでしまう大胆さ。
(絵はこのあと、草間と有吉の手を借りて志水の家に運ばれることになる。)
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19歳という志水、草間、有吉の年齢が、当時高校生であった私には随分と「お兄さん」であり、「享年二十歳」の重みが今ほど響かずにいた。
その頃16、17歳の自分と彼らと、数字で見れば大して違わないのであるが、この頃の一年は今の一年とは感覚が違う。
読み返して感じたのは、彼らの苦悩だけではなく、若さがもつ乱暴さと瑞々しさ。
それはかつての自分も、持っていたものだったと思う。
自分と同じ歳の近しい人の死が、まだ随分と遠いところにあった頃だ。
登場人物たちと近い十代後半、教科書で出会ったこの物語を、俯瞰するような気持ちで読み進めた。
有吉は魅力的だし(男前で秀才)
草間の軽快さと、いっぽん芯の通ったところがいい。
志水の妹、加奈子の洞察力のするどさ。
私が今回心に残ったのは、主人公・志水が、近所の友人・勇と望遠鏡で夜空を眺めるシーン。
レンズ越しに見える無数の星々。
望遠鏡ではとらえることが出来ないほど、遥か遠くに瞬く無限の星。
知らないところで起きていくこと。
知っているところで起きていくこと。
生と死が、誰にも対等に流れていく。
それは悲しみなのだろうか。
悲しみしかないのだろうか。
有吉の「またな」に対して、志水が「あの瞬間に、かすかに垣間見た」(「 」は、作品より引用)ように感じたもの。
けして悲しみだけではないのだと、自分は信じている。
※引用文献:『星々の悲しみ』宮本輝 文春文庫
(見出し画像の写真が、この文庫本です)
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お読みいただき、ありがとうございました。
このような企画があり、手元にある「星々の悲しみ」文庫本をもう一度読むことが出来たことを、心から嬉しく感じています。
メディアパルさん、素敵な企画をありがとうございました。
そしてフォローしているnoteの方々がこの企画に参加されているのも、私も書いてみたいという背中を押してくださいました。ありがとうございました。