祝日のカフェ
次男(小5)が「友達と"あのお店"に行ってもいい?」
と聞いてきた。
"あのお店"というのは、うちのすぐ近くにあるカフェのこと。
数年前、住宅街の中にそっと出来て、地元の人たちや地元ではないのかもしれない人たちから愛されているお店。
ペット入店可なので、ワンちゃんを連れてきているお客さんたちを見かける。
大きな子がテラス席で飼い主さんの近くに横たわっていたり、小さな子がバギーの中から半身を乗り出しているのが店外からも見えるのだ。
お店の前は、毎日のように通る。
でも、入ったことが無かった。
あまりにご近所なので、ここでお茶を飲んでくつろぐなんて私には贅沢、それなら家でお茶飲めばいいよね、な気がしていたから。
次男のお友達は、このカフェをご家族でよく利用していると聞いた。
お店の人たちに顔をおぼえてもらっているくらい。
なのでお友達が「一緒に行こうよ」と誘ってくれたのが、次男には嬉しかったようだ。
「お母さん、行ってもいい?」
お友達のお母さんにメールをしてみた。
「お店の人たちがすごく良い方で、うちの子のことも知っているから大丈夫よ。たぶん子どもだけでも平気」
心強いお返事をもらい、次男に「行ってもいいよ」と返事。
カフェのメニューをネットで調べて、だいたいこのくらいあれば、飲み物と食べ物のお金だとふたりで確認。
お財布にお金を入れて持たせる。
お釣りとレシートを、後からお母さんに渡すこと。
祝日の昨日、次男はすごく楽しそうに出かけて行った。
よく晴れた暖かな日。
私も行ってみようと思い立ち、初めて、カフェの扉を開けた。
「いらっしゃい」
優しそうなご主人が声をかけてくれ、カウンターの中には奥さまらしき方。
お店の中は半分以上お客さん。
目をこらすと、次男とお友達も居た。
次男はすぐ私に気づき「アッ」という顔をしたけれど、お友達は全く気づいていない。
私はクロワッサンサンドとハートランドというビールを注文し、注文したものや店内の写真を撮ってもいいですか?とご主人に聞いてみる。
「どうぞ、どうぞ、どこでも」
次男達から離れた窓際の席に座り、店内にある本棚を眺めた。
店の中央には、なかよしグループのような中年の男女のお客さんがいて、楽しそうに話している。
音楽の話題かな。
次男達の様子は遠くからしか見えないが、それぞれタブレットを出し(おそらくオンラインゲームをしているのだろう)テーブルにはカップとお皿が見える。
何を注文したのかしら。
私の元にオーダーしたものが届き、窓の外を眺めながらゆっくりいただく。
早食いなのだが、今日くらいゆっくりと意識。
窓から見えるご近所の景色が、やけに新鮮に感じる。
ワン!ワン!
突然、犬の声。
飼い主さんがすみませんとまわりに謝っているが、誰一人動揺せず、むしろにこにこしてる。
店は何事もなかったように、穏やか。
この雰囲気が微笑ましくて、ほおが緩む。
次男がカウンターで何か追加注文しているのが見えた。
大きくなったのだなぁと、しみじみ。
ビールも飲み終えたのでそろそろ……と席をたち、
カウンターに向かって「ごちそうさまでした」を伝え、注文中の次男の背中をちょこんと触り、店を出た。
◇◇◇◇◇◇
「お母さんが来て、びっくりした」
ごめんね、驚かせて。
お友達は気づかなかったでしょう?
「うん、気づいてない。お母さんが背中触ったときお店の人が" 『知ってる人?』って聞いてきたから、『お母さんです』って言っといた」
お店の人よ、あやしい行動してすみません。
「ぼくが抹茶を注文したら、『抹茶なんて飲めるの?苦いよ』と言われたけど、抹茶、美味しかった。お店の人に『抹茶飲めるのすごいね』って言われた」
楽しいカフェ時間を過ごせてよかった。
素敵なお店だね。
今度はお母さんと行こうか。
お父さんも( 長男 )も誘ってみようね。