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すまいるスパイスに呼んでいただいたお話と『レモン』にまつわるエトセトラ

音声配信「すまいるスパイス」に呼んでいただいた。そのお知らせと、収録では話さなかったことを書こうと思う。

よろしくお願いします。
ヨロシクオネガイシマス


6月のピリカ文庫に書いた『レモン』には、多くのスピンオフ作品を寄せていただいた。
予想だにしなかった出来事だった。

「すまスパで『レモン』のことを話しませんか?」

10月某日、コッシーさんから連絡をいただいた時、正直なところ、嬉しさよりも不安が大きかった。

レモン、レモン……もう嫌、やめてと思っている方もいるだろう。

あれのどこがいいの?とずっと思われているだろう。

コンテストやグランプリで入賞もない、何もない。ないない尽くしの私が書いたものを、人気コンテンツで取り上げてもらう意味はあるのだろうか。

一部の熱に煽られ、いい気になっていると思われてはいないだろうか。

そもそも私は、面倒な人間だ。
人から褒められるのが苦手だし、前に出るのは好きではない。
誰かのサポートをするのが好きだし、なるべくなら裏に居たい。

と思いつつも、実際には褒められると嬉しい。
いや、「嬉しい」よりは安堵感が強い。
役割を無事に果たせたとホッとする。

複数人の集まる場で「やってくれる人いますか?」と聞かれ、皆が下を向く沈黙の時間に耐えきれず、手を挙げてしまう。

性根は、出たがりなのかもしれない。


収録メンバーは、コッシーさん納豆ご飯さん椎名ピザさん
5月の文学フリマ東京で、お会いしたことがある方々だった。
そして三人は、『レモン』のスピンオフを書いてくださった方々でもある。

「スピンオフの振り返りをしながら、お話したいです」と伝えて、3人に了承していただいた。

書いてくれた方々に、思いや感謝をきちんと伝えたかった。

スピンオフ拝読後、それぞれの方のコメント欄に感想を書いた。

書いたのだけれど………。
もともと乏しい文章力と、作品が投稿され、なるべく早くにコメントをと私が勝手に焦っていたので、伝えきれていない気がしていた。

個人的な私信ならすまスパでやるなよ、と思われるかもしれない……すまスパのリスナーで、「レモンなんか知るかよ、調子こいてんじゃねぇぞ」な方々にはどうしたら楽しんでもらえるか。

悶々と考えた。

それはもう、お手上げだ。
#あきらめが早い

「聴きたくない人は聴かないのだから」の結論に達して、コッシーさんや納豆ご飯さん、椎名ピザさんがいるのだからいいのだ。

三人の存在が、アンチレモン派や、あやしもコンニャロ派の怒りを鎮めてくれるに違いない。

素人が下手に余計なこと考えるなと己れを戒めた。

収録前にはスピンオフを読み返し、各作品に思うことを文章にした。
お休み日の最中だというのに、三人にも事前に読んでいただいた。

スピンオフ作者の方々やフォロワーさんからしたら、違う違うそうじゃないというご意見もあるかもしれない。
私が感じた事というところでご容赦ください。

収録では、三人の方々の意見や感想もふんだんに聞けて、私自身も言葉にしながら改めて気づくこともあった。
楽しくて、実りある時間を過ごさせてもらえた。

すまスパ、ぜひお聴きください。


◇◇◇

この先は、収録で話していないことを書いていく。
意識的に話さなかったのではなく、この事を話し出すと収録時間が長くなると思ったからである。
(編集するこーたさんの手を煩わせたくない)

「レモン」について。

This car is a lemon.

日本語にすると、
「この車は欠陥車だ。」


lemonには、不完全なもの、欠陥品、役立たずという意味もある。

『レモン』で、「章」と「彼女」の関係は、読んでいてモヤモヤするであろうし、腑に落ちない気持ちが生じるだろうし、ふたりのうすら寒い会話に怒りすら感じるかもしれない。

章が悪い。
こんな女は嫌いだ。
元恋人同士、夜中に、元カレの家に転がり込む女も狂っているし、(ましてや彼女は既婚者)それを受け入れる男もかなりおかしい。
匂わせておいてセックス無しなのはどうなのか。
別れてから7年も未練がましくレモンを買い続ける男は、不気味でしかない。

出てくる人たちに何かが欠けている、不完全なところがあって、よく分からないまま終わる物語。

私が書きたかったのは、こういう話だ。

書いている私、自分はlemonだと思っている。 いろいろ欠けている。
卑下してはいない。これが私だ。

よく分からない人たちの物語。
それは、私が好きな村上春樹作品※に流れる、"weird"(「奇妙な」「変な」)な感じである。

※"weird"は、村上春樹の小説『スプートニクの恋人』の本の帯に、「a weird love story(奇妙な、ミステリアスな恋物語)」とある。

春樹ファンの方には、あなたの書いたものは"weird"ではないと言われると思う。
分かっている。ここで春樹さんの名前を出すことも恥ずかしいくらい。
でも書いてみたかったのだ。


レモン、夜、村上春樹、脚本家の坂元裕二、パスタ、珈琲、元カレと元カノ、男女の友情。

欠けている私が書いた欠けている人達の物語。

タイトルが『レモン』だし、と思っている。

欠けているからこその魅力もあると、骨董やアンティーク好きな私は開きなおる。

ひびや欠けの部分を愛しむ。

いつかは壊れて、消えてしまうかもしれない。
でもその瞬間まで私は一緒にいたい。


◇◇◇


『レモン』を書き終えた後に、繰り返し聴いてきた曲がある。

エッセイでも日記でも創作でも、何かを書いて投稿した後は、気持ちが昂って落ち着かない。
そんな時には音楽を聴く。

この曲はさらりと聴いたことがあったのだが、改めてしっかり聴いて、『レモン』はこんなイメージと思った。

曲を聴くと、村上春樹作品『ダンス・ダンス・ダンス』の羊男の言葉が浮かぶ。


「踊るんだよ」羊男は言った。「音楽の鳴っている間はとにかく踊り続けるんだ。おいらの言ってることはわかるかい? 踊るんだ。踊り続けるんだ。何故踊るかなんて考えちゃいけない。意味なんてことは考えちゃいけない。意味なんてもともとないんだ。そんなことを考えたら足が止まる」

『ダンス・ダンス・ダンス』村上春樹 講談社より引用


◇◇◇


最後に。
実は、『レモン』のスピンオフを私も書いていて、コッシーさん noteのコメント欄に埋めておいた。

一貫して「章が悪い」と言い続け、『レモン』を愛してくれたコッシーさんへ捧ぐ物語。



お読みいただきありがとうございました。

ピリカ文庫、すまいるスパイス、ピリカグランプリに感謝を込めて。

「レモン、要る?かけようか?」

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